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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第27時限目 友情のお時間 その28

随分ずいぶん、眠そうですね」


 朝、席に着いたところで大きな欠伸をしたところを正木まさきさんに見られてしまい、


「あ、あはは……」


 と笑って誤魔化ごまかす私。


「昨日、何か面白い番組やってたっけ?」


「でも、じゅんにゃんの部屋にはテレビなかったよねー?」


「あ、そっか。そもそも、準はあんまりテレビ見ないから、そっちじゃないか。んじゃ……もしかして、テスト勉強してたとか?」


 真帆まほ都紀子ときこも集まってきて、いつものHR前の会話が始まった感じ。


「ま、まあ、そんな感じかな」


 ……うん、嘘は言ってない。


 勉強はやってたし。


「相変わらず熱心だよねー」


「ねー」


「はい」


 ……といった感じで3人共笑ってはくれていたけれど、それでも表情からして心底納得してくれたわけではない、と思う。


 なんというか、マリアさんのことを隠していたときと同じで、事情は分からないけれど、話してくれるまでは待つよ、という表情の方が正しい。


 これが、単純に私が隠すのが下手なのか、それとも3人の察する能力が高いのかは分からないけれど、それ以上突っ込まないようにしてくれるのは非常に助かっているし、同時に心苦しさも感じる。


 とはいえ、今回も事情が事情だから私が勝手に言うわけにも――


「こ、小山こやまさん!」


 席に私を見つけた元橋もとはしさんが、車椅子くるまいすをドリフトでもさせそうな勢いで私の席に近づいてきた。


「ち、智穂ちほさんのこと、聞いてます!? 昨日から寮生りょうせいになったって教えてもらったのが今日の朝、登校中で! どういうことか聞こうと思ったら智穂さん、先生たちに連れて行かれてしまって!」


「あ、えーっと……」


 ちょっと興奮気味の元橋さんがそう言う。


 私のすぐ近く……いつもの3人は聞いてしまったけれど、幸い他の子たちは何だか元橋さんが興奮しているなということくらいしか気づいていない様子。


 でも、このままの様子だと、他の子たちにもバレてしまうのは時間の問題。


「……少しだけ、休憩きゅうけいスペースに行きましょうか」


 私は他の3人にごめんなさいのポーズを取ってから、元橋さんの車椅子のハンドルを持って、教室の外に連れ出した。


 ……出ていくときの3人の表情からして、隠していた事情はみ取ってくれたとは思う。


 閑話休題かんわきゅうだい


 教室棟きょうしつとうの2階と3階にはカフェテリア以外にも、お弁当を食べたり、休み時間に談笑だんしょうするための休憩きゅうけいスペースが設けてある。


 1階にも長椅子ながいすいくつもあるけれど、こっちはどちらかというとだれかとの待ち合わせとかに使われることが多いし、人通りが多いのも難点。


 特に、違うクラスの子と話をするときには使われることが多いみたいで存外ぞんがい利用頻度りようひんどは高いみたい。


 ただ、流石さすがにそろそろHRホームルームが始まろうという時間に、腰をえておしゃべりにきょうじる生徒は居ないみたいで、廊下ろうかで立ち話をしている子たちが何人か居るだけだった。


 当然、私たちも教室にもどらなければならないから、私は手短に事情を説明した。


 具体的に言うと、先生が家庭訪問、何かやらかした、それがきっかけで椎田さんが寮生になった、と大体3行くらいで終わるくらいの説明。


 何かやらかした、というところは実際元橋さんには事情を説明せず、誤魔化したということ。


 いくら元橋さんと椎田さんの関係とはいえ、家庭の事情について、本人が言っていないのであればそこまで踏み込んだ説明をすべきではないと思ったから。


 ……だったのだけれど。


「……そういうことですか。お母様とあまり関係が良くないのは知っていましたが、まさか……」


 少し気落ちした声で元橋さんがつぶやいた。


 ……元橋さんは元々、椎田さんの親のことを知っていたということ?


 でも、それなら何故、焼き芋パーティーのとき、元橋さんはあんなに無茶な要求をしたんだろう。


 まさか、この状況を見越して……ってそんななわけないよね。


 もし、想定していたらこんなに取り乱さないし。


 なんてことを思っていたら、チャイムが鳴りだした。


 まだ、HR前の予鈴だから少しだけ時間があるけれど、わずかに残っていた廊下の生徒たちも教室に吸い込まれていく。


 ちらりとそれを見て、元橋さんが言った。


「とりあえず、事情は分かりました。状況は良くないようですが……寮で、智穂さんが一緒いっしょというのは心強いですし、うれしくもあります。細かい話は……きっと、寮でも出来るでしょう」


 元橋さんはそれから、笑った。


「どうやら、今日は放課後に、お話をする時間がたっぷりあるようですから」


「……そうですね」


 元橋さんの、悲しみをにじませた笑顔に、私も同じような色の表情を返すしか出来なかった。

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