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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第27時限目 友情のお時間 その17

 元橋もとはしさんは既にまゆちゃんや花乃亜かのあちゃんと、いつ泊まるのか、泊まったら何の動画を見ようとかそういう話で盛り上がっているようだったけれど、椎田しいださんは少し離れて本を開いていた。


 今日の椎田さんは元橋さん以外だと、たまに寄っていく花乃亜ちゃんと話をする姿があったくらいで、それ以外はずっと持ってきている本を開いていたから、多分かなり居心地が悪かっただろう。


 元橋さんが最初、この焼き芋パーティーを開催かいさいするかどうか、回答を保留した理由の大部分だろうと思っている。


 そんな状況で、無理して来たのにも関わらず、私がりょうの話をしてしまったから、椎田さんにとってはもう踏んだりったりという状況だろう。


 何度も説明しているけれど、私はこの2人の仲を引ききたいわけではないし、むしろ私の方がフェードアウトすべきだと思っていたのに、何故か全てが悪い方向に転がっていく。


じゅん、大丈夫?」


「え? ああ、うん」


 相変わらずのくせのあるウェーブヘアーで、いつもの無表情顔の華夜かよだけれど、若干じゃっかん私を気遣う色を乗せた声で聞かれたから、私は大丈夫と答える。


 ……うん、今はもう過去のことを振り返っても仕方がない。


 この状況で椎田さんに話しけるのはむしろ状況が悪化するだろうし、元橋さんに近づいてもまた色々とこじれそうだから、もう今日はとにかく出来るだけ彼女たちに関わらないよう、ひたすら気をつけた。


 翌日、学校に来ると椎田さんがまた休んでいた。


 ちなみに、昨日の内に元橋さんの宿泊日は明日と決まっている。


 ……まさかとは思うけれど。


「いやー……まあ、どうだろうねー……」


 教室では話さない方がいいだろうと思って、椎田さんのことを話したいと咲野さきの先生に声を掛けて、中庭まで来てもらった後の回答がこれ。


 ただ、今までは体調不良だって素直に教えてくれていたりもしたのに、今回だけこんな濁し方をされたら答えを言っているようなものだよね。


「しっかし、椎田ちゃん。このままだと出席日数とかも心配になってきちゃうんだよねえ」


 咲野さきの先生は苦虫にがむしつぶしたような表情で、ショートの黒髪くろかみらしながら頭をく。


 確かに、私が把握はあくしている最近の休みだけでも、今日を入れて3日になるはずだし、もし身体的な問題ではない方が原因なのであれば、長引くおそれもある。


「……あの、先生」


「ん? どったの?」


「お願いがあるんですが」


 私が“お願い”の内容を説明すると、


「あー……」


 とちょっとしぶい反応を見せ、


「まあ、小山こやまさんなら……いや、でもなあ、今の状況だと悪化しかねないし……」


 と何だか視線も表情も体もれ動いている。


 そして。


「……うーん、ごめん。明日まで待って」


「いえ、でも明日だと……」


 元橋さんが寮に来る日だからこそ、その前に解決しなければならない話なのだけれど。


 そう思って、更に言葉を重ねようとしたところで、咲野先生が人差し指を私のくちびるの前に出して、言葉を制止した。


「……分かってる。むしろ、分かってるから“小山さんは”明日なの」


 柔らかく笑った咲野先生は続けた。


「椎田ちゃんの家、アタシが今日行ってくる。いつも小山さんに頼っちゃってるというのとは別に、やっぱり生徒のことは出来るだけ自分でどうにかしたいし。これでも担任の先生じゃん? そんで、駄目だめそうならー……ま、そんときはちょっと相談に乗ってもらえると助かるかな」


「……分かりました」


 多分、咲野先生としても担任としてゆずれないところがあるのだろう。


 だから、私は素直に引くことにした。


 その日の夜、突然携帯電話が鳴った。


『あー、えっと、咲野でーす。まあ、何ていうか……ちょっと、寮長室来てもらえる?』


 軽い感じの言葉とは裏腹に、かなり決まりが悪そうな声色こわいろをしていた。


「分かりました」


 咲野先生は椎田さんの家に行って、話をしたのだろう。


 で、私が呼ばれたということは……まあ、おそらくあまりかんばしい結果にはならなかったということは推測出来る。


 テオにもふりを献上けんじょうする作業を切り上げ、私は肌寒はだざむくなった外に出るため、白のカーディガンを羽織はおってから部屋を出た。


 多分、帰ってきたら不満たらたらなテオの鳴きまくり攻撃を受けるだろうけれど、今は許して。


「どこに行くの?」


 階段を足早に下りてくると、もえが部屋から出てきてそう聞く。


「ごめん……階段、うるさかった?」


「まあ、足音が響いてたのは事実だけれど、別に嫌味を言いに出てきたわけではないわ。勉強の休憩中きゅうけいちゅう。で、こんな時間にどこへ?」


「あー、えっと……」


 誤魔化ごまかすべきか、どうしようかと悩んだ私が煮えきらない感じの態度をとっていると、萌が溜息ためいきいた。


貴女あなたのことだから、いかがわしいことをしているとは思わないけれど、こんな時間に外に出るのは同じ寮生として見過ごせないでしょう?」


 いつもの萌からして、心配してくれているのだろうと思ったから、私は素直に答えることにした。


「寮長室に行くだけだよ。ちょっと、先生と話があって」

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