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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第27時限目 友情のお時間 その16

椎田しいださんが、元橋もとはしさんのやりたいこと、否定したの、み、見たことない、です」


 まゆちゃんも椎田さんたちが秘密の話をしに行ってしまった方を向いて、意見に同意する。


 私だけではなく、こんなに沢山たくさんの同じ反応があるということは、単純に珍しいという話ではなく、余程椎田さんとしては反対したいということだろうか。


 りょうに来た方が、椎田さんは元橋さんと一緒いっしょに居られる時間が長くなると思うのだけれど……あの反応が別に片時かたときも離れたくないというわけではない、という微妙な乙女心によるものなのか、それとも寮生の負担のことを考えてなのかは分からない。


 でも、今の元橋さんの様子を見る限りでは、どういう回答になるかは想像がつく。


「……ということで、1泊だけ泊めてもらうことになりました」


 もどってきた元橋さん、椎田さんペアの回答として、代表の元橋さんがそう破顔はがんして発表した。


「……」


 対照的にうつむく椎田さん。


 つまり、円満えんまんに話が解決したわけではなく、椎田さんが押し切られたということだろう。


「えっと、それは良いのだけれど……」


 流石さすがに状況が状況だからか、思わずもえが口をはさんだのだけれど、その萌の視線は元橋さんと椎田さんの間を行ったり来たりする。


 萌の様子を見て「ああ!」と手を打った元橋さんは笑顔をくずさずに続けた。


智穂ちほさんは残念ながら、寮に一緒には泊まれないのですが、夕方くらいまでは一緒に居てくれます。それに、智穂さんが居ないときも時間をければ一通り、自分のことは自分で出来ますのでお気になさらず。ただ、寮に入るときはスロープがあるとのことなので、出入りだけはお手伝いをお願いします」


 ……え?


 椎田さんが泊まらない?


 もしかすると、椎田さんは元橋さんがどうというよりも、自分が泊まる許可を親からもらえないからしぶっていただけなのかも?


 もちろん、理由は他にもあるのかもしれないけれど、あまりに悪い方向に考えすぎていて、もっと常識的な理由なのかもしれないと、少し胸をで下ろした。


「えっと……それで、良いのね?」


 だれも口を開かないから、代表して萌が尋ねると「はい」と元橋さんがこくりとうなずき、椎田さんも少し遅れて、躊躇ためらいがちに首肯しゅこうした。


「…………分かったわ。それじゃあ――」


「決まりましたか」


 萌の、少しあきらめ混じりの言葉になかば被せるような形で声がして、私たちが全員そちらを向くと、理事長さんを筆頭ひっとうに先生たち3人が立っていた。


 そして、改めて元橋さんが宿泊したい意思を伝え、宿泊は自分だけだと説明したのを聞いて、理事長さんは視線をらす椎田さんと私たちの様子まで見て、少しだけの沈黙をしてから、静かに言った。


「そうですか、分かりました。では、寮長。先ほど話した通り、必要になったら簡易スロープを組み立てて設置してください。よろしくお願いします」


「承知した」


「では」


 業務連絡のみを済ませて、理事長さんは帰っていってしまった。


 で、付いていった咲野さきの先生はというと、何故かかごを抱えていた。


 そして、少し重くなった空気を蹴飛けとばすかのように大きな声で、その籠を高めにかかげた。


「まーまー、それはさておき。理事長からの差し入れだよ!」


「差し入れ?」


 咲野先生のお気楽ボイスで、少し心がゆるんだ私が尋ねた。


「そう。学校の敷地内で取れたくりだって」


 学校の敷地内……そういえば、確かに通学路に栗のいがいくつも落ちていた記憶きおくはある。


 お花見が出来るような桜の木もあるし、紅葉もみじのような紅葉こうようする木もあって、案外季節の移り変わりが分かりやすい学校なんだなあ、なんて考えていたのは現実逃避をしたかったからかもしれない。


「っていうか、公香きみかも来れば良かったのに。色々話があったんだからさー」


 そのまま火に入れると弾けるからということで、既に皮に穴を開けている栗を火の近くに置きつつ、咲野先生がそう言ったけれど。


き火の管理は先生がするっていう約束だったでしょう? 誰かが残って、この火の管理しないと駄目だめだから、私が残ったんです」


「…………あっ!」


 本当に思いつかなかった、という表情で咲野先生が言うから、苦笑しながら坂本先生が火ばさみで栗を並べる。


「もう、真弓ちゃんはそういうところ、気が回らないんですから」


「へへへ」


 咲野先生と坂本先生のやり取りでほんわかオーラを吸収しつつ、私はまたこの状況の中心の2人を見た。


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