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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第27時限目 友情のお時間 その7

 放課後になってすぐ、私が元橋もとはしさんの方を向くと、車椅子くるまいすで器用に机の間を抜けて、教室を出ていく背中が見えた。


 スロープを上ってくるときと同じで、降りるときに1人だと困るだろうと思って、私は声をけようと立ち上がりかけたのだけれど。


「あ、元橋ちゃん。今日は椎田しいだちゃん居ないんだし、アタシが手伝うよ。嫌だとは言わせないからねー」


 咲野さきの先生が日誌やら何やらを教卓きょうたくに置いて、教室を出た元橋さんに寄っていくのが見えた。


 咲野先生も元橋さんの性格を良く分かっているから、この状況を予想していたのかも。


 ……今の状況で私が割り込むのは悪手あくしゅかな。


小山こやまさん、帰りましょう」


「あ、そうですね」


 2人をじっと見ていた私は、正木まさきさんを筆頭にいつもの3人が待っている輪に、うなずいてから混じった。


 後は先生に任せよう。


 くつき替え、校舎を出たところで前を歩いている真帆まほが、歩をゆるめつつ、くるりと顔をこちらに向けて口角を上げた。


「……で? 今のじゅんは元橋さんにお熱と」


「おね? ……いやいや、そういうのじゃないって!」


 一瞬、真帆の言葉の意味が分からず、首をひねった私だったのだけれど、脳内でようやく処理できた私はあわてて両手を横に振った。


「まー、確かに最近の準にゃん、つれないなーって感じだもんねー?」


都紀子ときこまで……だからそんなんじゃないって! ただ……」


「ただ?」


 正木さんが言葉をうながすように尋ねる。


「椎田さんのことが良く分からないなあって……」


「え、椎田ちゃん? 元橋さんじゃなくて?」


 そう言った真帆だけじゃなくて、他の2人も目をまん丸くさせたから、私は元橋さんと椎田さんと3人で遊びに行ったときの話をい摘んで話した。


 まあつまり……椎田さんとどうすれば仲良く出来るか、という問題を抱えているってこと。


「なるほどねー。元橋さんっていつも椎田さんと一緒いっしょに居るし、色々あるのかもねー」


 私の説明を聞き終わった都紀子が腕を組んで、うんうんと首を縦に振る。


「難しい話ですね……」


 正木さんも空に視線を向けたりしつつ、考え込む。


 一方で、真帆はやっぱりハテナ顔のまま。


「うーん、おっかしいなあ。確かに元橋さんとはあまり絡みないけど、車椅子を押してあげたときとかに、椎田ちゃんからそんな塩対応されたことないんだけど……あ」


 真帆はそう言った後、訂正ていせいというか、追加情報を含めて続けた。


「でもあれか。あたしの場合はほら、保健委員だから椎田ちゃんと関わることが多いからかも」


「保健委員? ……ああ、そういえば。椎田さん、体弱いから保健室に連れて行くことが多いとか?」


「そうそう」


 あまり保健委員としての仕事をしている姿を見ていないから、すっかり忘れていた。


 ノワールちゃんご懐妊かいにん事件? のときにたまたまコケた正木さんと保健委員の真帆を巻き込んだっけ……あのときは申し訳なかったけれど、助かった。


「そうそう。で、返却期限が近いからってことで、たまに読んでる本を代理で返したりしてたからね。それきっかけで、椎田ちゃんのオススメの本とか教えてもらったり」


「なるほど」


 花乃亜かのあちゃんも言っていたけれど、椎田さんってやっぱり本が好きみたい。


「まー、ただ椎田ちゃんが読んでる本は結構幅広いみたいでさ。天体関係の本読んでたと思ったら、前に返したのは有名なミステリーの……なんだっけ? 檜山降生ひやまこうせい? とかいう人の『13秒』って本だったし」


「私も読んだよ『13秒』。結構面白かったよね!」


 真帆が漫画以外の本の話題を出したから、私は思わず前のめりに聞いたのだけれど。


「うん、まあ……頑張がんばって読んだんだけど……なんていうか、途中から眠くなってしまったというか……」


 真帆の言葉がしりすぼみになったのを見て、私たちは苦笑した。


「確かに檜山降生の本は難しいよねー。あたしもお祖母ばあさ……おばあちゃんから借りたことあったけど、伏線ふくせんとか多いし、言葉が難しくて十分には理解できなかったなー」


「私もそうでした……」


 都紀子の言葉に同調する正木さん。


「仲間じゃん! ってか、それだけ本好きなら、椎田ちゃんとすぐ仲良くなれそうな気がするけど」


「うーん……」


 私が沈黙したのにつられて、皆も沈黙する。


 ……そんな中で状態を破ったのは正木さんだった。


あせらなくてもいいんじゃないですか?」


 笑った正木さんは続けた。


「小山さんが元橋さんと仲良くなって、ちょっとだけヤキモチを焼いているかもしれませんけど……でも、小山さんだって椎田さんから元橋さんをうばおうとかしてるわけではないですよね?」


「それはもちろん」


 一緒に遊ぶのであれば、楽しい方がいいっていうだけの、ただただ単純な話。


「まー、そだねー。急いでも仕方がないしねー」


 また頷く都紀子。


「でもあれじゃん? むしろ、椎田ちゃんと仲良くなりすぎて、今度は元橋ちゃんから嫉妬しっとされたりするかもよ?」


 ひじで私を突っつく真帆。


「あはは、それはないと思う……けど。でも、ありがとう」


 少し気が楽になった。


「しかし、うーん……そうだなあ。2週間かな」


「ん?」


 突然、真帆が何か悩んだと思ったらなぞの期間を発表したから、私たちは目をしばたたかせた。


「や、準が椎田ちゃんと仲良くなるまでに掛かる時間の予想」


「……ああ、そういう……じゃなくて!」


「それじゃー、アタシは1週間半かなー」


「意外と、3日間くらいとか?」


 都紀子と正木さんまで悪乗りする。


「だからー! そういうのじゃないってー!」


「どうだかなー」


 3人の笑い声に囲まれて、私も笑った。


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