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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第27時限目 友情のお時間 その4

「今日、椎田しいだちゃんと元橋もとはしちゃん、どっちも休みでさ。2人に今日配布したプリントを持っていって欲しいんだよね」


「あれ? ……あ、そういえば今日見てないですね」


 既に帰ってしまった生徒も居るけれど、そもそも今日2人を見た記憶きおくがない。


 流石さすがに、元橋さんが休みだから椎田さんも……というわけではないよね?


「分かりま――」


「私が届けますので」


 私がプリントを受け取ろうとした直後、すっと隣に立って、代わりにプリントをかっさらったのはもえだった。


「というか、そういうのはまずクラス委員にちゃんと相談してください、先生」


 じろり、と咲野さきの先生を睥睨へいげいする萌。


「あー、えっと、あはは……」


じゅんも準で、何でもほいほいと受けなくても良いのよ」


 もえが、続いて私をにらむ。


 で、その私はというと……ついつい咲野先生と同じような反応をしてしまう。


「あはは……」


「それに、準は2人の家は知らないでしょう?」


「まあ、うん」


 素直に私がうなずくと、


「2人共、休むことが多いから私は何度も行っているし、問題ないわ」


 と萌がトントンと机の上で、プリントの高さを整えながら言った。


「むしろ、そう毎回行くのは大変じゃ……」


「これはクラス委員の仕事。貴女あなたが気にすることではないわ」


 ふんっ、と鼻息荒く萌が言うけれど、本気で怒っているわけではなくて、むしろ私を気遣ってのことだろうな、とは思う。


 萌も萌であまり気負いすぎない方がいい気はするけれど、今回は彼女……少なくとも椎田さんに会うのはちょっと気まずいので、萌に任せておいた方がいいかなとは思う。


「……ということで、私が行きます」


 私が「やっぱり自分が」と割り込まなかったからか、改めてそう宣言してから、2人分のプリントをかばんに入れて、萌が教室を出ていった。


「あー、うん。よろしく」


 ずんずんと萌が歩いて離れていくのを見送りつつ、咲野先生が何とも言えない笑顔で見送ってから、私に向き直ってほおきつつ言った。


「なんかごめんね、小山さん」


「いえ……」


「あー、巻き込みついでで申し訳ないんだけど、ちょろーっと話に付き合わない?」


 咲野先生の言葉に同意して、私たちは中庭まで移動した。


「あまり他の子に聞かれない方がいいかなーって思って。わざわざ来てもらってごめんね。はい、どうぞ」


「ありがとうございます」


 話に付き合ってもらうから、ということで紅茶のペットボトルを差し出した咲野先生は自分のコーヒーの缶を開けて一口飲んでから溜息ためいきいた。


「萌がいつも行ってくれるのは助かるんだけどさ。クラス委員だからってあの子ばっかり頑張がんばらせるのもねって思って……」


「まあ、気持ちは分かります」


 首肯しゅこうする私。


「で、小山さんならもうあの2人共仲良くなってるかなーって思って……いや、前にも片淵かたぶちちゃんのとか、色々小山さんに頼んで、萌に怒られてたりはしたんだけど。申し訳ないと思いつつも、やっぱ小山さんには色々頼みやすくてねー」


「別に私はそういうの気にしないので、頼んでもらって構わないですよ。ただ、元橋さんとはたまに連絡する程度ではあるんですけど、椎田さんはまだあまり……」


 そんな私の反応を見て「あー、椎田ちゃんかあ……」と言葉をらす咲野先生。


「あの子、昔から体が強くないみたいで、私のクラスになってからも風邪かぜとかで休むこともたまにあって。で、ほら……いつも元橋ちゃんといつも一緒いっしょでしょ? だから、他の子とあまり仲良くしているところ見たことなかったんだけど、小山さんでもそうかー」


 うーん、と腕を組んでうなる咲野先生だったのだけれど、先生から見てもやっぱりあの2人はコンビとして認識されてるんだなあ。


 ただ、体があまり強くないというのは知らなかった。


 そういえば、前に天体観測した後にも風邪を引いていたような……?


「あの子、いい子だと思うんだけど……元橋ちゃんに過度なシンパシー感じちゃってるんじゃないかな」


「シンパシー? 何故です?」


 私が首をかしげると、咲野先生が説明してくれた。


「ん? あー、さっき言ったみたいに、椎田ちゃんって休みがちでね。長期休みになるような病気とかではないんだけど、季節の変わり目とかだと休んじゃってさ」


 あごに手をやる咲野先生。


「で、休むとクラスメイトと話をする機会も減るじゃん? そうなると、なかなか友だちが……ね」


 そこで1度区切って、またコーヒーでのどうるおしてから続けた。


「元橋ちゃんの方は知っての通り、車椅子くるまいすなんだけど、最初は先生たちでカバーしてたの。入学時の条件で、学校内の移動は全部手伝いますってのを付けてたからね。だから、何かあれば都度呼んでもらってたんだけど……あの子も結構気を遣うタイプみたいでさ。前に1度、無理に1人でスロープ降りようとしてコケそうになったりもしたことがあってねえ」


 私は何も言わず、ただ頷く。


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