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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第5時限目 合宿のお時間 その14

 はてさて、その日の放課後。


「んじゃ、ホント何かあったらすぐに言いなよ?」


 正木さんたちは別途遊びに行くとのことで、私は教室で手を振って3人の背を見送る。


 ……何だかんだでやっぱり大隅さんの話を気にしていたんだなあ。気にしなくてもいいのに、って思っていたらくだんのギャルが現れる。


「よし、小山行くぞ」


「こやまん行くよー」


 ギャル2人でめでたく絡まれたので、私は鞄を持って、


「そうしましょう」


 と立ち上がった。


 教室を出るとき、ちらりと流し目でクラスの中を見ると、明らかに正木さんたちと一緒に行動しているときとは異質の視線がちらほらこちらに向いていて、私と視線があった何人かがバツが悪そうに視線をすすすっと逸らした。やっぱりこの2人、クラスの中でもちょっと異質なのかな。そしてそんな2人と付き合っているのを物珍しく見ているのかもしれない。


「んで、その寮長ってのは何処に居るんだ?」


 昇降口で靴に履き替えながら、大隅さんが尋ねる。


「寮長室に多分居ると思いますが……あれ?」


 やはりこの2人と一緒に居ると、クラスメイトのみならず、他のクラスからも一部ちらりちらりと視線を送られる。うう、自分で踏み抜いた地雷とはいえ、やっぱりこの2人に関わったのは失敗したかなと思いながら、靴箱前が混雑していたから視線を辺りに巡らせて待っていると、理事長室の方から益田さんが出て来るのが見えた。


 ……何故に?


「どうしたの、こやまん」


「その、今から探しに行こうとした寮長さんが何故かすぐそこに居ました」


「マジで? 今捕まえとかなきゃヤバくない?」


 中居さんの言葉に頷く私。


「ちょっと声掛けてきます」


 小走りに益田さんに近づいて声を掛ける。


「益田さん」


「ん? ……ああ、小山さんか。どうした?」


 私の声に視線を向けた益田さんが目をぱちくりさせた。


「えっと、昨日の今日で申し訳ないのですが、もう今日寮に泊まりたいという人が2人ほど居まして……」


「ああ、そうか。丁度今、理事長ともその話をしていてな。昨日来ていたあの子か?」


「いえ、別の子です。話をしていたら、他の子に聞かれてしまいまして……」


「なるほど。別に構わないのだが、あまり話が広まりすぎて、本来の寮生に迷惑が掛かってもいけないな。今後は気をつけてもらいたい」


「はい、申し訳ないです」


 特にあの眼鏡を掛けた厳しいクラスメイトの顔を思い浮かべると、尚の事不安。とにかく私との接触を避けるようにしているようだけれど、様子を見ている限り、最近は他のクラスメイトにも出会った頃以上にトゲトゲしく当たるようになっているし、やっぱりあの日の私のせいかなあ、と深く反省。


「とにかく、一度部屋に戻ってパソコンで宿泊届けを印刷しないといけない」


「宿泊届け?」


 私の疑問符付きの文にうむ、と答える益田さん。


「そうだ。理事長とさっき話して、宿泊自体は構わないが、やはり学校としては誰がいつ泊まったか、という管理は必要だろうということで、簡単ではあるが書類を準備するようにした。寮長室で印刷出来るから、付いてきてほしいんだが……」


「大丈夫ですよ。昇降口に2人とも居ますので連れて行きます」


「そうか。私も昇降口に靴を置いているから、行こうか」


 益田さんに伴われるような形で昇降口に戻ると、


「あんたが寮長さん?」


「ちょー怖そうなんですけどー」


 予想通りというか、大人相手でもブレない2人の反応を意に介さず、


「ああ、寮長の益田だ。キミたちか? 寮に泊まりたいというのは」


 といつも通りの感じで尋ねる益田さん。


「そうでーす」


 中居さんの底抜けにまったりなボイスに、


「それじゃあ付いてきてくれ」


 と底抜けの笑顔で笑い掛けてから、益田さんが来賓者用スリッパから靴に履き替えて歩き出す。


 私だけまだ靴を履き替えていなかったから、慌てて履き替えて私たち3人は益田さんの後を追う。


「本当に、あの人が寮長さんってやつか?」


 益田さんの後を歩きながら、大隅さんが隣を歩いていた私に小声で再確認してくる。


「はい、そうですよ」


「ふぅん?」


 何故か不思議モードの大隅さんに、私の方が疑問符を打つ。


「どうかしましたか?」


「いや、あたしたち見て、何も言わなかったなと」


「ああ、まあそうですね。なんですか、何か言ってほしかったんですか」


 いたずらっぽく私が言うと、


「別にそういうわけじゃねえよ!」


 ふてくされたように答えて、中居さんの隣に並ぶ大隅さん。何だかんだ言いながら、自分の外見を気にしてはいるんだなあ。全然気にしないタイプだと思っていたけれど。


 終始無言の益田さんと私たち3人。何だろう、この居心地の悪さ。結局寮長室までは昇降口のやりとり以降、誰も一言も発しなかった。


「入ってくれ」


 そう言って、寮長室に入っていく益田さんに続いて私たちは寮長室へ。連日寮長室に居るなあ、私。


 でも、連日居たのはどうやら私だけではなかったみたい。


「あら? 小山さんと……えっと、大隅さんと中居さんね」


 何やら専門書を読んでいたらしい坂本先生が、本を机に置いて言う。


 ……何故に? パート2。


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