表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

822/960

第26時限目 競争のお時間 その55

 もえ頑張がんばっていたけれど、残念ながら4位でゴール。


 まあ、萌はどっちかというと体育系というよりは文化系のイメージだし、十分な結果だと思う……と勝手に思っていたけれど、遠くに見える萌の表情はくやしそうだった。


 本人としてはもっと上の順位をねらいたかったのかもしれない。


 続いて、400mリレーは桝井ますいさん、星野さん、千早ちはやさん、晴海の4人で100mずつ走ったのだけれど、第1走者の桝井さんが体格を活かしてリードをかなり作り、その後で追いつかれつつも最終的にギリギリ2位でゴール。


 こちらもかなり頑張がんばった方だと思うけれど、特に星野さんが想像以上に足が早かったのはびっくりした。


 もしかすると、写真をるためにあっちこっち行ってて、自然と体力がついていったとかそういう理由なのかもしれない。


 その次が玉入れ。


 車椅子くるまいす元橋もとはしさんはどうするんだろう、と思ったらそういえばこの競技があった。


 もちろんというべきか、椎田しいださんが玉を拾って元橋さんに渡し、2人で楽しそうに投げるというのを繰り返している横で、まゆちゃんも一生懸命いっしょうけんめい玉を投げているけれど、上のかごまでほとんどの玉が届かない。


 何だかほんわかしてるなーと思っていたら、更にその隣……渡部わたべさんが速度こそ遅いものの、正確無比せいかくむひに玉を投げ込んでいる。


 みゃーちゃん製のロボットなんだから、それはそうだよね……と思うのだけれど、この4人だからこそ玉の入り具合は他のクラスと丁度バランスになっているようだった。


 ちなみに、渡部さんが走っているのは見たことがない気がするけれど、100m走とかも出来るのかな。


 はてさて、玉入れ終了後には障害物走。


 うちのクラスからは桜乃さくのさんが出るみたいだから、何番目に出るかなと気にしていたら。


『次の借り物競争に出場する生徒は入場門に集まってください』


 そんな放送が流れ始めた。


「あ、私ですね……行ってきます」


 そう言って、足をくずして座っていた正木まさきさんが立ち上がった。


紀子のりこ、ガンバ!」


頑張がんばれー」


応援おうえんしてます」


 私たちの声に、笑顔で手を振って返した正木さん。


 正木さんを見送った後、障害物走の方に注目していると、桜乃さんが砂だらけになりつつ、比較的ひかくてき小柄な体で障害を乗り越え、1位でゴールしていた。


「桜乃やるじゃん」


 そう言って拍手する真帆の隣で、1位の旗の前に立っている桜乃さんをこっそり撮影。


 後で、美歌みかさんに送ろうと思って。


 障害物走で使った障害物が取り除かれた後、入場した正木さんたちはスタートの合図と同時に走り出して、机の上にある紙を取って開く。


「借り物競争って、結構わくわくしない?」


「確かにねー。昔、借り物競争やったけど楽しかったなー」


 真帆の言葉に、同意する都紀子ときこ


「ってか、うちの学校って借り“物”競走っていうか借り“人”競争になってるから、実は足が速い人を選んだ方がいいとかあるよね」


「借り“人”?」


 私が疑問符ぎもんふけて真帆に聞くと、


「昔、借り物競争でサングラス借りて、走っててコケて壊したとかがあったらしくてさ。で、それから物を借りるんじゃなくて本人を連れてきて、見せてもらうってことになったんだけど、いちいち人を連れてくるなら“物”である必要なくない? ってことで“眼鏡を掛けた人”とか“自分よりも背の高い人”とか結構あやふやな借り物? 競争になってたりする」


「そんな経緯が……」


 私が少し感心に近い感情をいだいていると、


「あれー? 紀子のりこちん、こっちに来てないかねー?」


 という都紀子の言葉で、私もトラックの方を向いた。


 見ると、確かに正木さんがこちらに向かって走ってきている気がする。


「もしかして、あたしたちから借りれるものがあったとか?」


「クラスメイトーとか、親友ーとか、そういうのもありそうじゃないかねー?」


「あー、それか!」


 真帆と都紀子がそんなやり取りをしていたら、


「こ、小山こやまさん! あのっ、来て、くださいっ!」


 と息を切らせながら正木さんが言い放った。


「え? 私ですか?」


 きっと、足の速さとかその他諸々(もろもろ)の理由で真帆が連れて行かれるのだろうと思っていたし、他の2人も目をぱちくりさせていた。


「そ、そうです。あの、借り物が、何だったかは、ゴールまで、な、内緒ないしょみたいなので、と、とりあえず、お願いします!」


「わ、分かりました」


 良く分からないけれど、とにかく正木さんの言葉にしたがって、私は正木さんと並んで1位でゴール。


「借り物のチェックをします。えーっと……『お姫様抱っこが出来る人』ですね」


「…………な、なるほど……?」


 パワーが必要ということなら、私を呼んだのは確かに正解だと思う。


 今回は“力”を借りるということ……かな?


「では、実際にやってみてください」


「……え?」


 本当に、今、ここで? やるの?


「よ、よろしくお願いします……」


 準備万端じゅんびばんたんの正木さんのほおが赤いのは、今まで走ってたからという理由だけだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ