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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第26時限目 競争のお時間 その53

 とりあえず、何やかんやあったけれど、これで谷倉たにくらさんも合流し、体育祭まで一致団結でリレーの練習を――


「あの、私はやっぱり、1人で練習します」


 ――とはならなかった。


「え、でも既に皆、普段の谷倉さんを知って……いや、真帆まほは知らないかもしれないけど、星歌ほしか羽海うみはもう見てるよね?」


「確かに見てます……が、その、やっぱり、今まで迷惑めいわくけたので……」


 放課後、さっさと教室を出ていく谷倉さんを昇降口しょうこうぐちでなんとか捕まえて、一緒いっしょにリレーの練習をしようと声をけた私だったのだけれど、肝心かんじんの谷倉さんは視線をらしてけ出し、林の奥に消えていった。


「……だって。別に迷惑とかないよねえ」


 私はいつものメンバーと合流してからさっきの話を振ったのだけれど、真帆含む3人から返ってきた答えは思ったよりも微妙で、私は「あれ?」と目をしばたたかせていた。


「まあ、うん……」


「ギターはすげえとは思うがなあ」


「……」


 特段、仲が良いわけでもないはずの真帆と星歌が苦笑しながら顔を見合わせるし、羽海は沈黙。


 うーん、それほどまでに谷倉さんって問題児だったのかな。


 正直な話、不良の代表格とも言える星歌に言われたくないのでは? という気もするけれど、真帆の歯切れの悪い言葉を考慮すると、絡まれたことがある人にとっては、単純に教室に居ない星歌よりも谷倉さんの方がちょっと……と思ってしまうのかもしれない。


 あ、真帆で思い出した。


 スタピのライブに行ってきたことを正木まさきさんたち、いつもの3人に報告したら非難囂々(ひなんごうごう)で「なんで誘ってくれなかったの!?」とか「一緒に行くって約束したよね!?」ととても怒られた。


 sound(サウンド) ofオブ the seaシーのミチルさん……つまり、谷倉さんのお姉さんの話もうらやましいとは言われたけれど、それ以上に“一緒に行く”という約束を反故ほごにされた! というショックの方が大きかったらしい。


 今回は美歌みかさんからのお誘いだったから仕方がない……という気持ちはあるけれど、何にせよ私は平謝りしつつ、今度はチケットを皆で買って行こうと約束してとりあえずその場は収まった。


 閑話休題かんわきゅうだい


「でも、ホントはあの子も参加した方がいいんでしょ? バトンパスの練習も多分してないしさ」


「確かに……」


 羽海が言う通り、谷倉さんはずっと1人で練習しているから、体力増強とかペース配分とかはある程度調整は出来ていると思うけれど、バトンパスだけは全然出来ていないはず。


 ちょっと心配だな、と思いつつ谷倉さんが消えた方へ視線を向けていると、


「そういえば、走る順番はどうするんだ?」


 とバトンをけんみたいにぶんぶん振っていた星歌が言って、私は視線と意識を真帆の方に向けた。


「ん? あー、そういや決めてなかったっけ。どうしよっか……とりあえず、じゅんは最終走者確定だけど」


「えっ、何で? 最終走者は陸上部の真帆じゃないの?」


 何となく、1番早い子が最後に帳尻ちょうじりを合わせる……みたいな感じにするのかなと思ったのだけれど。


 私が尋ねると、


「多分、他の陸上部はある程度負けてても、最後にまくれればオッケーっていう理由で最終走者に持ってくると思うんだけどさ。スタートの『よーいどん』で走り出すの慣れてるあたしが1番手の方が都合がいいっしょ。足の速さなら準も全然負けてない、っていうかむしろ準の方が早いかも」


 と真帆が返す。


「とか言って1番目の走者、全員陸上部だったりしてな」


「そのときはそのときだけどさ。あまり陸上部を1番手にするのってあんまり聞かないんだよね。スタートだと走りながらバトンを受け取るっていうのがないわけじゃん? 本来ならこのバトンパスが1番時間短縮出来るのに、そこに陸上部を使わないのは勿体もったいないといえば勿体ないんだよね。でも、足が速いっていう話なら準が居るし、だったらスタートもちょっとこだわった方が良いかなって」


「意義なーし」


「ま、別に構わねーよ」


 羽海と星歌がOKしたことで、多数決により私が拒否しても通らなくなってしまった。


 ここに谷倉さんを連れてきて……も変わらなかったかなあ。


「ってことは岩崎いわさきが最初で……2番目はどうすんだ?」


「じゃんけんで良くない?」


 羽海の言葉に真帆は、


「2人に任せるけど、選べるのは2番と3番だからね」


 と説明を付け加えた。


「ってことはあいつが4番ってことか? 何でだ?」


「あの子そこそこ足速いから、最悪自分が受け取るときは足止めててもいいかもしんないけど、走りながらの受け渡しは技術力と信頼関係。そうなったら、どう考えても準の前でしょ」


 真帆の言葉に「なるほどなあ」と星歌。


「そんなら異論はねえ」


「右に同じくー……ってか、そんならさ」


「ん?」


 羽海の言葉に星歌が疑問符ぎもんふを打つ。


大隅おおすみがガチで走ってきたら谷倉ビビって逃げそうだし、アタシ3番の方が良くない?」


「あー……」


「今の“あー”は何の“あー”だよ!」


 私の「あー」に星歌が目をり上げたのだけれど。


「あー……」


「おまっ、岩崎、おめーもかよ!」


 真帆まで乗ってくるから星歌が大変ご立腹りっぷくの様子だった。


 まあ、もちろん本気で怒っているわけではないようだけれど。


「じゃ、とりあえずー、岩崎、大隅、アタシ、あの子で最後に準、って感じでおけ?」


「良いんじゃない?」


「……別に構わねーよ」


「うん」


 若干1名、この場に居ないけれど、おそらく異論はなかろうということで、リレーの順番は無事決定した。


「後は本番まで練習、頑張がんばるぞ!」


「おー!」

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