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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第5時限目 合宿のお時間 その12

 益田さんと私でテーブルを部屋に運び出し、洗面所の前に差し掛かったところで、


「少し机が埃っぽいから、1度雑巾で拭いた方が良いな」


 と益田さんが洗面所から新しい雑巾を持ってきて、机を拭いてくれたお陰で結構ピカピカになった机を、3人で再度抱えて運ぶ。


「おかえりー」


 扉が開けっ放しに鳴っていた部屋に戻ると、残っていた岩崎さんが笑顔で答える。ん、本当だ。機嫌は良くなったのか、さっきまでの落ち込んだ感じは払拭されていた。これも片淵さん効果のお陰かな?


 その岩崎さんは片淵さんと2人、私のベッドの上をダブルねそべりで占拠し、テオとじゃれあっていた。いや、猫じゃらしを面倒くさそうにちょいちょいと手を出しているテオを見ると、どっちが遊んでもらっているのかな、という話はさておき。


「置く場所は中央で良いだろうか?」


 益田さんの言葉に私は頷いて、机を部屋の中央に置く。結構見た目以上に重かったから、益田さんが手伝ってくれて助かった。


「さて、じゃあ私は寮長室に戻るよ」


「ありがとうございました」


「さっきの件は明日の朝くらいには連絡出来ると思う。早ければ、今日中に話を付けておくが」


「はい、お願いします」


 部屋を出ていく益田さんに頭を下げて、


「さあ、じゃあ勉強会しましょうか」


 と振り向きざまに言うと、


「うえーい……」


 速攻で嫌そうな顔をする岩崎さん。片淵さんは嫌そうとまでは言わずとも、あー始まっちゃうかー、みたいな諦観混じりの苦笑い。正木さんは既に鞄を開いて勉強準備フェイズに移行中。


 私も教科書とノートを鞄から取り出して勉強を始めると、渋々ながら岩崎さんと片淵さんがベッドからずりずりと下りてくる。


 そして、各々教科書とかノートを開いていくのだけど。


「公式覚えられないー」


 頭を抱えた岩崎さんが項垂うなだれて、机にぐでんと伸びて言葉を続ける。


「うう……数字なんか生活に算数だけあれば良いじゃん!」


「だよねー」


 岩崎さんと同じように、片淵さんもとろけてスライム上になりそうなくらいに机に突っ伏していた。まだ、始まって十分くらいなんですが。


「せめて30分くらいは頑張りましょう」


「30分……キツイ……」


 岩崎さんが恨めしそうに時計を見上げ溜息を吐いてから、私のノートに視線を落としてから、声を上げる。


「……って、それって明日の宿題? 見せて見せて」


「自分で解かないと身につかないですよ」


 私の答えを写そうとする岩崎さんに私はジト目で返す。


「えー、いいじゃん。どうせやっても分からないから、身につかない」


 ビッ、と親指立てて答える岩崎さん。駄目だこの。合宿が今から不安になってきた。


「とゆーか、小山さんとかどうやって勉強してるの?」


 器用にシャーペンを手の上で回しながら、片淵さんが私に聞く。


「基本はひたすら反復です。特に中間とか期末みたいな範囲が決まってる場合は教科書とノートを読み返すことが多いですね」


「それだけで!?」


「いえ、流石に読み返すだけじゃないです。毎日帰ってきたら、ノートを先生の板書だと思って、それを見ながら授業を思い出しつつ、別のノートに板書し直したりします。そうすると、授業中に言っていた解き方のヒントを思い出したり、授業の前半と後半で話をしていた内容が繋がったりしますね」


「はーい、先生。あたし、授業聞いてないから何も思い出せません!」


 岩崎さんが茶目っ気を増量して言う。


「……まず、ちゃんと授業を聞くところからですね。というか、基本的にはこの学校の授業は進むスピードが遅いとは思いますが、非常に分かりやすく説明してくれていると思いますよ」


 前の学校では予習復習はやってて当たり前だったし、宿題の量ももっと多かった。授業の進むスピードも多分1.5倍くらいだった気がするし、板書を必死で取るのが精一杯で、帰ってからまとめ直さないととてもじゃないけれど覚えきれなかった。


 それに対して、この西条学園は良くあるテレビ番組のCM明けみたく最初の5分くらいは前回の復習を皆で行ってから、その日の授業を始める先生が多い。もちろん、授業中に質問などが出たら時間を掛けて説明してくれるし、先生によっては小テストを繰り返し行って覚えられるようにしてくれているから、ちゃんと授業出ていれば身には付くんじゃないかなと思う。


「でも、高校になってから覚える内容多すぎじゃない?」


「だよねー」


「まあ、それは分からないでも無いですが……ほら、正木さんはちゃんと頑張ってますよ」


 と言いながら黙って黙々とやっている正木さんの方を向くと、うつらうつらと船を漕いでいる少女の姿。静かだったのは寝てたからですか!


「…………はっ。わ、私寝てました?」


「……はい」


「で、小山さん。誰が頑張ってるって?」


 ニヤリ、と岩崎さんが私に笑みを見せる。前言撤回。正木さんも同じタイプでしたか。いや、授業中には寝ているのを見たことがないから、単純に宿題まで集中力が続かないタイプなのかも。


 私たちのやりとりを見ながら、片淵さんがとろけ状態のままで答える。


「まあ、何はともあれ、とりあえず宿題だけでもやるかー。アタシは後1時間くらいしか無いし」


「1時間? ……あー、ホントだ。もうそんな時間かぁ」


「本当、そうですね」


 片淵さんの言葉に、正木さんと岩崎さんが反応して部屋の時間を見る。


「てか、合宿は大丈夫?」


「あー、うん。一応今のところはねー」


「なら良いんだけどさ」


「あの1時間、というのは?」


 正木さん、岩崎さんと片淵さんが話を進めていくので、取り残された私は悪いと思いながらも話に割り込むと、片淵さんが頬杖を突きながら言った。


「あー、うちって門限早くてねー。日にも依るんだけど、今日は特に早く帰んないといけない日だから」


「そうなんですか」


 確かに塾があるとか、習い事があるからって結構門限が早い子とか居た覚えは確かにある。


「そうなんです。っつーわけで、宿題頑張ろー」


 片淵さんの声で正木さんと岩崎さんも勉強に戻ったから、私も宿題を進めてはいたけれど、どちらかというと今度予定している合宿のことで頭がいっぱいだった。


 ううむ、飽きっぽい岩崎さんにのんびり片淵さん、宿題中たまにうつらうつらする正木さん。これは中々手強いことになりそうだなあ、なんて思ったりして。


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