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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第5時限目 合宿のお時間 その2

 園村さんに襲われたあの日、一旦園村さんたちと手芸部へ立ち寄った後、全てが済んだからさて帰ろうと時間を確認するためにスマホを見たら、知らない携帯番号から大量に不在電話が有ったのに気づいた。


 誰だろうと掛け直したら半泣きのみゃーちゃんの声がして、ああそうだ、みゃーちゃんと電話中に倒れたんだっけと思い出し、慌てて地下室まで宥めに行った。私、みゃーちゃんに電話番号は教えていなかったはずだけれど、みゃーちゃんのことだからあの地図のアプリを入れたときとかに私の電話番号を確認していたのかもしれない。


 それはともかくとして、あの日を境にみゃーちゃんから声が掛かることは無くなった。


 未だ、地下室の部屋には私1人で勝手に入ることは出来ないし、桜乃さんにも吸血鬼の話は伏せつつ、みゃーちゃんのことについて話をしたけれど「彼女は彼女の世界があるから、ボクが行っても何も話してくれないだろうね」とお手上げ状態で言われた。


 まだあれから2週間位しか経っていないのだけれど、全く音沙汰無いとちょっと不安になる。


「もしかするとゴールデンウィークにあの子に呼ばれてたりしないかなって少し心配になって。真帆はいつもあんな感じなので、小山さんが無理してこちらを優先してくれるんじゃないかなって」


「ああ、そういうことでしたか。いえ、大丈夫ですよ」


 私の言葉に正木さんが笑って「良かった」と答えたところで、


「宇羽ちゃん……おっけー、居るね。大隅ー? 大隅は?」


 と、順調にクラスメイトの名前を読み上げていた咲野先生の声が止まった。


「居ないですよ」


「てことは中居も?」


「居ないでーす」


 クラスメイトの誰かが答える。


 ……ごめんなさい、まだ名前覚えてない子でした。


「あいつら、2人とも出席数足りるんかな……後、他に居ないのは?」


「渡部さんが居ません」


 即座に答えたのは太田さん。


「渡部? またどっかで電池切れ?」


「分かりません」


「んー……仕方がないなあ」


 腕を組んで、咲野先生が唸ってから、1人で頷いた。


「よし太田ちゃんクラス委員長だし、ちょっと大隅と中居探してきて。後……小山さん、渡部さん探してきて」


「分かりました」


「…………ん? え? はい?」


 即答で頷いた太田さんと比べ、私は疑問符で返した。


「小山さん、渡部さん、探す、連れてくる、オッケー?」


 何故カタコト?


「え、ええ、まあ構わないですが……あの、何故?」


 まだあまり学校に慣れていない上、そんなに渡部さんと仲が良いわけでもないし、学級委員長的な立ち位置でもないただの転入生に何故? と思うところはあったけれど、次の言葉で状況が良く分かった。1点の疑問を除いて。


「いやね、小山さんに頼むのも悪いとは思うんだけど、美夜子はアタシにも懐いてないからねえ。唯一懐いてるのは公香か小山さんくらいだし」


「公香……?」


「坂本先生の下の名前ですよ」


「ああ、ありがとうございます」


 横からこっそり教えてくれる正木さんに謝辞を告げる。ああ、やっぱり咲野先生もそう思ってるんだなあ。


「渡部さんは美夜子が作ったって話だし、多分探し方も知ってるだろうから。だから……お願い」


 最後のお願い、はいつもの軽い調子ではなく、真面目にそう言われてしまったから、私も素直に頷くしか出来なかった。


 なるほど、みゃーちゃんを探せば、きっと渡部さんを探すことも出来る、という理論かな。


「あ、あの! 私も行きます! まだ小山さん、学校のこと良く知らないと思いますから」


 気を利かせてくれた正木さんが手を挙げて言うけれど、


「んー、駄目」


 少し考えてから咲野先生が答えた。


「行かせてあげたいのは山々なんだけど、小山さん1人じゃないと美夜子が会ってくれなくなっちゃうだろうしねえ」


「ああ、確かに……あれ?」


 だったら1番適任なのは、私が行ったときには良く居る桜乃さんの方が適任なんじゃ?


 そう思って、私は視線をそのまま右の方に移すと、机に突っ伏して私の方を一切見ない桜乃さん。ええとこれは……拒絶されてる?


「ただし、2人共探すのは校舎内だけでいいから。部室棟とかまでしっかり探すと1限どころか2限まで掛かりそうだし。1限はアタシの授業だから、1限中に帰ってきたらちゃんと授業出たことにするよ。あ、もちろん分からないところがあれば個別に授業もするし」


 なるほど、自分の授業中なら色々と何とかなる、ということね。


「正直、大隅さんと中居さんは放っておいても良いのでは?」


 ギラリ、と眼鏡を光らせてクラス委員らしからぬ言葉を発する太田さん。おおう、手厳しい。


「んにゃー、流石にちょっとそれはね。手を焼く子だから放っておこうってのはアタシの性には合わないんだよね。あ、別に太田ちゃんが渡部さん見つけたらそれはそれでもいいし、小山さんが大隅と中居見つけたらふん捕まえて連れてきても良いよ」


「いえ、あの……た、大変申し訳ないんですが、その大隅さんと中居さんが良く分からなくて……」


 未だ、クラスメイトは半分くらい顔と名前が一致しない。いや、3分の2くらいかも……?


 私が言うと、


「ああ、大丈夫大丈夫。どっちもうちの学校で唯一……いや唯二ゆいにの茶髪ギャルだから」


「茶髪……? あ、ああ、あの2人……」


 あの2人、名前知らなかったんだった。大隅さんと中居さんって言うんだ。


2017/1/1 文章修正

「よし太田ちゃん、ちょっと大隅と中居探してきて。後……小山さん、渡部さん探してきて」

「よし太田ちゃんクラス委員長だし、ちょっと大隅と中居探してきて。後……小山さん、渡部さん探してきて」


脳内で太田さんはクラス委員長として書いていたのですが、その記述は今まで無かった気がしましたので、修正しました。申し訳ないです。



それではまた。

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