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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第5時限目 合宿のお時間 その1

「テスト合宿しよう!」


「……えっと、はい?」


 放課後、突然岩崎さんが宣言して、私と正木さんは顔を見合わせてから、お互い目を瞬かせた。片淵さんは頭を手の上で組んでにははと笑っているだけ。つまり、いつものアレです。


 いつもの、とか言いつつまだ1ヶ月も経っていないのだけど、既に1年間くらい居るような気分。それだけ凝縮された生活を送っているんだなあ、なんて思う。


「テストもうすぐじゃん?」


「ああ……そういえばそうでしたね」


「そう言えばって結構余裕だね、小山さん」


「いえ、そういうわけでは……」


 単純に吸血鬼の一件で完全に意識からすっぽり抜けてしまっただけで、余裕があるわけではない。


 いや、前にも言った通り、前の学校でやった範囲が大半だから基本は見直しだけで良いから、比較すれば確かに余裕が無いわけではないのだけど、ここのところ遊び疲れたり、吸血鬼問題を解決? したりで帰ってきたらご飯食べて寝る、みたいな生活が最近多くなっている。お陰で昔みたいに帰ってきたら宿題予習復習、なんて生活をしていないから、少しだけ心配。


 さて、それはそれとして、精神的に瀕死状態の岩崎さんは、


「私は全然分からなくてヤバイんだよ……」


 などと言いつつ私の机に突っ伏して死んだ魚の目をしている。


「そんなになんですか」


「そんなになんです」


 即答した岩崎さんがぎりり、と拳を握って宣言する。


「だから、小山さんの部屋で、というか寮で合宿やろうよ!」


「寮で、ですか」


「ほら、寮長さん? だっけ? あの人も寮生減ったから部屋使っていいって言ってたじゃん」


 使っていいと言っていたのは娯楽室とかじゃなかったかな? 寮の他の部屋とかも借りて良いのかはちょっと覚えていないけれど、確かに借りられる本当に合宿みたいなことは出来そう。


「でも、寮を借りるなら、借りる部屋のベッドとかも綺麗にしなければならないと思うし、寮長さんも大変なんじゃないかな……」


 正木さんが少しバツの悪そうな顔で言うと、


「んじゃあほら、借りる部屋をそれぞれで片付けるので貸してください、って話だったらどーだろ?」


 即座に片淵さんが提案する。


「確かに、それなら寮長さんの負担も掛からないですね」


「まあ、ゴールデンウィークだから、寮長さんも自由に使っていいよって言うかもしれないけどねー」


「……えっ!?」


 何気ない片淵さんの言葉に大仰に驚く岩崎さん。


「どうしたの? 真帆」


「ゴールデンウィーク……そういえばそうだった」


「え? むしろ、真帆もゴールデンウィークを覚えていたから合宿なんて言ってたのかなと思ったのに」


「いや、単純に土日でパジャマパーティー的なことしながら勉強会しよう! って意味だったんだけど、そういやそっか」


 あはは、と岩崎さんが笑う。


 ……実は私もゴールデンウィークを完全に忘れてた側の人間だったりする。そういえば、1学期の中間テストってGW明けだったっけ。テストのことと同時にすぽっと綺麗に跡形もなく抜けていたなあ。


「んじゃあ、ゴールデンウィークの最後の方にテスト勉強合宿かねー?」


 片淵さんの声に頷いた岩崎さんは、


「うん。でも! その前にどっか遊びに行こうよ。折角の休みなんだしさ。あ、小山さんは実家に帰るの? 遠いんだっけ?」


「あ、ええと、そうですね……実家は近いですが……」


 言いながら考える私の脳裏には確かに実家に帰るという選択肢もあった。もちろん、現状の話をするために。


 ……ただ、やっぱりまだ踏ん切りがつかない。逆に旅行に行くから帰れない、とか何かしら理由を付けて帰らないというのもありかなと思ったり。


 かと言って、現状を説明するのを先延ばしにしたところで今更結果が変わるわけでもないし、今度は転校直後に入試とかいう話にもなりかねない。だから早く決めないといけない。


 ……いけないのは分かっているけれど、私の口から出たのはこんな言葉だった。


「夏まで帰らないつもりなので、ゴールデンウィークは大丈夫ですよ」


 そう、夏にしよう。夏は大胆になれる季節って言うし。私が大胆になれるかどうかは分からないけれど、夏の暑さに任せて言ってしまえるかもしれない。言えたら良いなあ。言えるかなあ……。


「とりあえず何処に――」


「おっしゃー、皆揃ってるかー? 席につけー」


「うわ、咲野先生もう来た。んじゃ次の休み時間にね!」


 HRを告げるいつもの咲野先生の声に、岩崎さんと片淵さんが慌てて机に戻っていく。


「んじゃあ、出席取るよー」


 生徒の名字を呼んでいくのを聞いていると、


「そういえば、小山さん」


 横から正木さんが小声で私の名前を呼んだので、意識をそちらに移す。


「何でしょう?」


「そういえば、えっと、あの地下室の女の子からは誘われなくなったんですか?」


「地下室? ……ああ、そう、ですね」


 確かに吸血鬼の一件が終わってから、みゃーちゃんから呼ばれることはさっぱり無くなった。


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