表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/954

第4時限目 変化のお時間 その7

 少し足取り軽く、みゃーちゃんのところに戻った私は、


「何、妹といちゃこらしてるにゃ」


 とジト目こじらせ系女子のみゃーちゃんに、更にジトらせた目で言われる。


「う、見てたの?」


「ロリコンの上にシスコンとか手に負えないにゃー」


 やれやれ、と大げさな動きをしてみるみゃーちゃんに少し腹が立ったので、いつも通りほっぺたをうにーっと両側から引っ張ってやろうと近づくと、


「来るんじゃないにゃ! シスコンが感染うつるにゃー!」


 などと言いながら部屋の端に逃げる。ただし、本気ではなく笑いながらだったけれど。


 数十秒くらい、足の踏み場が殆ど無い部屋の中で私とみゃーちゃんは追いかけっこをしていたけれど、唐突にぴたっと動きを止めたみゃーちゃんは、


「……と、それはさておき、結局どうだったにゃ?」


 と、定位置の椅子に座って尋ねてくる。もう追いかけっこは飽きたみたいね。


「全然。というか、そもそもどんな姿か分からないから、居たのかどうかすら分からないっていうのが本音かな」


「やっぱり、そうなるにゃぁ」


 へにょーん、とみゃーちゃんの尻尾と猫耳が垂れ下がる。可愛い。


 垂れ下がった猫耳をちょいちょいと私は触りながら、


「でもさ、何で突然被害者が増えたんだろうね」


 と尋ねると、ちょっかいを掛けられたのが嫌なのか、結果に不満なのか分からないけれど、口をへの字に曲げたままみゃーちゃんが呟くにゃ。


 ……あ、いや、ほら、やっぱり人の口癖って感染うつるよね?


「知らないにゃ。でも、推測は出来るにゃ」


「推測?」


「そうにゃ」


 へにゃった耳をまたピンと立ち上げ直して、みゃーちゃんが目の前のパソコン用キーボードを叩くと、監視カメラ画面の1つが変わった。そこには、私が「吸血鬼」と言われたら大体こう想像するなあ、というコウモリの羽みたいなのを広げたオジサマの絵と共に「十字架に弱い」「日の光に弱い」とかまるでRPGゲームの敵情報みたいなものが表示される。


「吸血鬼と言えば、その名の通り、血を吸う鬼にゃ。だから、血を吸われる相手が必要にゃ」


「そういえば、そうだね」


「でも、今まではあまり頻繁に生徒の血が吸われていないとすると、普通に考えて可能性はどんなのがあると思うにゃ?」


「んー……、吸血鬼がこの学校に最近転校してきたとか……はっ」


 まさか。


 思わず思いついた結論でみゃーちゃんを見ると、ぷるぷると顔を横に振った。


「流石にみゃーだって準を疑ったりはしてないにゃ。というか、もしそう思っていたらむしろここに呼ばないにゃ」


「そ、そうだよね」


 まさか、私が実は吸血鬼だと思っていて、この部屋に閉じ込めるために!? と思ってしまったけれど、良く考えればもし本気で私が吸血鬼だと思っていたなら、学校の周りを調査させになんか行かせず、最初から部屋に閉じ込めておくよね。


「それに準が来る前から件数は少なくても、吸血鬼騒ぎはあったにゃ」


「ああ、そうなんだ。じゃあ、他の可能性としては……」


「みゃーの考えでは、もしかすると今までは吸血鬼に定期的に血を分け与えていた人が居たのかもしれないにゃ」


「吸血鬼に? なるほど、確かにあり得るかも……って、吸血鬼って1度血を吸われたら、吸われた方も吸血鬼になるんじゃなかったっけ? 吸血鬼になった人にも吸血出来るの?」


 私の疑問に同調するように、みゃーちゃんが首を縦に振る。


「最大の疑問はそれにゃ。でも、もしかすると吸われても吸血鬼にならない人間が居るとか、何人も人を監禁して家に匿っているとか、可能性は色々考えられるにゃ」


「なるほどね……」


 確かにみゃーちゃんが言っていることが本当だとしたら、その吸血慣れ? した人が居なくなったり、体調不良で血を与えられなくなったり、大量に匿っていた人が何かの拍子で逃げ出して、吸う相手が居なくなったから手当たり次第に被害者が増えた、とも納得出来る。


「吸血鬼は昼間棺桶の中に居るとか、そういう情報が良く出てくるにゃ。とすると、朝に異常に弱い生徒が居たら、それが吸血鬼という可能性もあるにゃ。準のクラスや他のクラスで、明らかに朝が弱い生徒とか居ないにゃ?」


「朝が弱い……」


 ふと、脳裏に1人の姿が浮かんだけれど……まさかね。


 脳内に浮かんだ姿を振り切るためにもかぶりを振って答える。


「居ない、かな」


「そうかにゃ。何か分かったら言うにゃ。……ところで」


 みゃーちゃんが意識を監視カメラ画面の方に向けたので、私も釣られてそちらを見ると、監視カメラ画面の一角に桜乃さんの姿が映っていた。


「桜乃は何時まで探してるにゃ」


「ん? ……あ、ホントだ。もうそろそろ1時間になるのに」


 携帯を確認すると、アラームまでのカウントダウンは5分を切っているのに、まだ桜乃さんは絶賛調査中という様子で引き上げる様子は見受けられない。


「……まあいいにゃ。どうせ桜乃のことにゃ、きっと忘れてるから電話するにゃ」


 みゃーちゃんは机の端っこに置いてあったスマホを掴んで、電話を掛ける。


「桜乃にゃ? もう1時間にゃ」


 みゃーちゃんが電話したのと時を同じくして、画面内の桜乃さんが携帯を取り出して耳に当てている


「そうにゃ、準はもう帰ってきてるにゃ。粘ったところで大した収穫は無いからさっさと帰ってくるにゃ。…………いや、だからにゃ…………ああもう、準、さっさと帰ってくるように言うにゃ!」


 みゃーちゃんがギブアップ宣言して、携帯を私に差し出すから、私は素直に受け取る。


2017/10/25 誤字修正

「大量に匿っていた人が何かの表紙で逃げ出して」

「大量に匿っていた人が何かの拍子で逃げ出して」

初歩的な誤字です。

ご指摘いただきましたので、修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ