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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第4時限目 変化のお時間 その1

「小山様」


「あ、はい?」


 授業や生活にも慣れてきたなあ、なんて5月病をホップステップでかわせそうだと少し安堵の吐息を窓の外にある青空に向かって投げ捨てていたある日の放課後、私は唐突に声を掛けられて私は目を瞬かせた。声はみゃーちゃん謹製のロボット少女から発せられたものだった。


「美夜子様がお呼びです」


「みゃーちゃんが?」


「はい。これからお付き合いください」


 そう言ったかと思うと、くるりと踵を返し、ういんういんと歩き始めてしまった。拒否権とか交渉権とかいう言葉は端っから無いみたいね。


「ありゃ、小山さん、渡部さんに捕まったの?」


 鞄を持って歩いてきた岩崎さんが教室の扉の方、正確には渡部さんの背中を軽く見流してから言う。


「はい、残念ながら」


「んじゃあ仕方がないかー。そろそろ小山さんの部屋の改造計画を練ってたんだけどなー」


「あはは……」


 そういう意味では、みゃーちゃんグッジョブ! だったのかもしれない。


いや、別に部屋に物が増えるのは嫌ではないのだけど、岩崎さんと買い物に行くと強制的に下着購入ツアーに参加させられるおそれもあるからね。


 ……まあ、多分渋っていても間違いなく連れて行かれるのだけど。


「んじゃあ、1階までは皆で行こうかー」


岩崎さんに並んで追いついてきた片淵さんの意見に皆賛同し、いつもの4人で他の生徒たちに混じりながらスロープを降りる。


「にしても、渡部さんって見れば見るほど人間っぽいよね」


「ねー」


 岩崎さんと片淵さんがそんなことを言いながら、渡部さんの両脇に並んで動きを注視する。


「どうやって動いてるんだろ。電池とか?」


「かなー? 電池だけじゃすぐに動かなくなっちゃいそうだけどねー」


 興味津々の岩崎さんと片淵さんに、


「でっかい乾電池みたいなので動いてるみたいですよ」


 と伝えると2人が同時に、鋭いツッコミで有名な往年の漫才師並みの勢いで振り返った。


「何で知ってるの?」


「準にゃん、何で分かるの?」


「い、いえ、この前の始業式のとき、実際に交換したので……」


「交換? 何で?」


「始業式が終わったとき、渡部さんが電池切れで動かなくなっちゃったので、私が電池を交換したんです」


 私の言葉でポン! と手を叩く岩崎さん。


「あー、それで、あのときって教室に来るの遅かったんだ。そういえば、何で遅かったのか聞いてなかったっけ」


「乾電池かー。凄いなー」


「乾電池とは言っても結構大きいものですよ?」


「なるほど。でも、何となくロボットとかって、何ていうかパソコンとかみたいに直接コードが繋がって充電するタイメージじゃん? 何で電池なんだろ?」


「確かに……」


 岩崎さんの言葉に私も首を捻る。


「自分が持っていたおもちゃが電池で動いてたから真似して作った、とかじゃないかな?」


 正木さんが視線を少し上空で旋回させながら言う。


「んー、その線はあるかもだけど、あの地下室の子って天才なんでしょ? だったら、単純にそこらへんに売ってるようなもの真似して作るかなあ」


「確かに……そうだね」


 岩崎さんの反論に正木さんも首を傾げ、私と片淵さんも首を傾げる連鎖反応。


 まあ、結局本人しか結論は持っていないのだけれど、とにかくそんなみゃーちゃん製ロボットと共に1階まで降りて、私は正木さんパーティーから脱退する。


「さようなら、小山さん」


「んじゃあまた明日ねー」


「ばいばーい」


「はい、また」


 正木さんたちとの別れの挨拶中にも渡部さんとずんずんと先に進み、階段を降りて地下室に向かうから、私も慌ててその背中を追う。


 階下の部屋の前で、躊躇いもなく扉の脇に有った謎のボックスをバコッと音を立てつつ開け、渡部さんがその中のメカメカしい何かに手をかざすと、目の前の自動ドアが開いた。へえ、こんな仕組みになっていたんだ。


「それでな……ん?」


 電気くらい点ければ良いのに、何故か監視カメラの画面以外は光源がない部屋で、まるでエノキタケみたいなひょろひょろ娘2人は話を止めて私たちの方を向いた。


「ああ、またキミか。また会ったな」


「そうですね」


 振り返った白衣姿の女の子に見覚えがあると思ったら、前間違えて頭をノックしてしまった桜乃さんだった。


 えーっと、桜乃かな……かの……えっと、なんか“か”がたくさんあったことは覚えているけれど、下の名前は忘れました。


「ということは美夜子が呼んだのかい?」


「美夜子って呼ぶにゃ。……そうにゃ。まあ、準は身長大きいし、割と強い方だからにゃ」


「なるほど、それなら確かに適任かもしれないな」


「……?」


 目の前で謎の会話が進められていて、私の頭の中ではここのところのハードスケジュールによりストライキで生産工場が閉鎖の危機になっている疑問符製造工場に残る数少ない工員たちがにわかに騒ぎ始めていた。


 私の疑念に気づいてくれたのか、美夜子ちゃんがやれやれ、仕方がないにゃぁという顔で簡単に説明してくれた。


「今日から、準には吸血鬼から学校を守ってもらうにゃ」


「………………はい?」


 一生の中で、多分1番だと思うくらいに長い沈黙を超えて、私の口から出たのは当然の疑問符が付いた言葉。簡単に説明しすぎて、もっと分からなくなったよ!


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