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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第18時限目 夜闇(やあん)のお時間 その19

「確かにあの辺って、全然明かりとか無いけど、そんなに真っ暗? ってか、何でじゅん紀子のりこも知ってるワケ?」


 怪訝けげんな表情の真帆まほに、ちょっとだけ珍しい気がするけれど、正木まさきさんがあきれた顔で答えた。


「もう、真帆が言ったんでしょ。クラス分けの表が夜には張り出されてるから、先に見てきてって」


 正木さんの言葉にしばらく首をひねってから、ぽん! と手をたたいた。


「あー! なるほど、そっか。そういやそんなこと頼んだっけ」


「真帆、忘れてたの?」


「あっはは……いや、まあ確かに頼んだ頼んだ。なるほど、あのときに知ったワケね。てか、そういや準と紀子はそのときに初めて会ったんだっけ?」


「うん」


 私もうなずいて返す。


「ってか紀子は分かるけど、準は何でそんな時間に、学校に忍び込んでたワケ? まだ転校初日どころか転校前夜でしょ? 準もクラス割りが気になったとか?」


「あー、えっと……」


 私はあのときの事情をかいつまんで説明した。


 出会って数分の咲野さきの先生になかば強制的に連れて行かれたことや正木さんを泥棒か何かと勘違かんちがいして捕まえようと飛び出したこととか色々。


 ……まだ3ヶ月とかくらい前のはずなのに、やけに懐かしく感じるなあ。


「はー、なるほどね。しっかし、ホント準って色々巻き込まれやすいタイプだよね。良く今まで無事に生きてこられたね」


「いや、こんなことになったのは、ここに転校してきてからだから……」


 むしろ、今までは人との関わりがほぼゼロ……いや、ある意味でマイナスと言った方が良いレベルだったし。


「どちらかというと、多分周りにパワフルな人が多いんじゃないかな」


「なにおー? あたしがそうだって言いたいワケ?」


「自覚はあるんじゃない」


 私が笑って言うと、真帆も「まーね」と笑って返した。


「でも、そこまで真っ暗なら流星群もはっきり見れそうじゃん。だったら望遠鏡とか……あ、ってか今思い出した。そういやうちって天文部てんもんぶとか無かったっけ? 天体望遠鏡とか借りたり出来ないんかな」


「去年まではあったけど、もう廃部なんじゃなかったかなー」


 私の後ろから突然声が飛んできたと思ったら、ぱしゃぱしゃとお湯を足でき分ける音と共に、都紀子が入ってきた。


 ……だから、何故皆して私の近くを陣取ったり通ったりするのか、教えて欲しい。


 いや、都紀子の場合は分かってやってるような気がするけれど。


「おー、あのベンチっぽいのどうだった? 満足した?」


 真っ先に真帆が反応した。


「したしたー。っていうか満足しすぎて、あのままだったらそのまま寝そうだったから切り上げてきたさー」


「なるほど、そのレベルか。だったら、後で行かねばなるまい」


 真帆の言葉に笑ってから、都紀子が話を戻した。


「うちのクラスに元天文部だった子が居るけど、新しい子が入ってこなかったから廃部になったって聞いたねー。もう3年生だからその2人もやめちゃったしさー」


「はー、なるほどねえ」


 天文部……星とか月とかは確かに綺麗きれいだと思うけれど、頻繁ひんぱんに見たいと思うかといえば、別にそうでもないかなあと思ってしまうし、他の子たちも同じ考えだったから増えなかったのかもしれない。


「そういえば、天文部ってどんなことするんでしょうね?」


 正木さんの言葉に、真帆まほがうーんと首をかしげてから言った。


「やっぱり、どの星が好きとか話したりするんじゃない? 後は……なんだろ、星の名前が付いた由来ゆらいを調べるとか……駄目だめだ、あたしの頭じゃそれくらいしか思いつかない」


 首をぶんぶんと横に振った真帆に、都紀子が笑って言った。


「アタシも似たようなことくらいしか思いつかないねー。でも、部活になってたってことは、何かしらもうちょっとあったんじゃないかなー」


「うーん、分からん。さっぱり分からんから、天文部の内容はとりあえず置いといて、去年無くなったばかりなら、まだ天体望遠鏡とか残ってそうじゃない?」


「あー、じゃあこの旅行終わったら、連絡取ってみるさー。前、連絡先を教えてもらったしねー」


「オッケー。んじゃ天体望遠鏡は確認してもらうとして……他に何か無い?」


「他って、流星群観察に必要なもののこと?」


 真帆の雑な振りに、私が尋ねると、


「違う違う。夏休みのイベント! プール……は海行ったし別に良いかなって感じだし、他には……美術館行くとか」


「真帆、美術とか分かるの?」


「いや、分かんないけどさ」


 正木さんの容赦ようしゃない突っ込みに、真帆も真帆でさらりと答えたけれど。


「ほら、美術館とか博物館とかってクーラー結構効いてるじゃん? だから、ゆっくり出来るじゃん」


「それだったら図書館でも良いような。夏休みの宿題もまだ終わってないでしょ?」


「うげっ……あー、えーっと他にはー」


 話をらそうとする真帆に、再び答えたのは都紀子。


「あー、すずむという意味なら、学校の池で泳ぐとかは出来ないんかねー」


「学校の池……って中央にあるあのでっかい池のこと? いや、あそこの水、あんまり綺麗じゃなくない?」


 私も同じ気持ちだと真帆の言葉に頷く。


 学校とりょうの間にある池は結構大きくて、確かに泳げればプールよりもよっぽど遊びがいはありそうなのだけれど、ただのめ池のようで、あまり水は綺麗には見えない。


「うーん、そっかー。確かにねー」


「あー、でもちょい待ち。あそこって魚は居るっぽくない? そうすると、釣りとかは出来そうじゃん。食べるのはちょっとアレだけどさ」


「真帆ちんは結構そういうアウトドア系好きそうだねー」


 都紀子の言葉に、はっはっはと真帆が笑う。


「まあね。昔はたまに家族であっちこっち行ってたからね。で、海だの川だのでお父さんと一緒に弟たちが釣りとかしてたのを手伝ってたら、むしろあたしの方が上手くなってたって感じ」


「なるほどねー」


「私、あのミミズみたいなの苦手……」


 正木さんがそう言いつつ、記憶に身を震わせると、


「あー、まあ最初はそうだろうけど、慣れれば大したことないって。お父さんたち、魚釣ってきてもさばけないからって任されたりしたし、結構慣れれば何でも出来るもんよ」


 と大笑いする真帆。


「へー、じゃあ勉強も慣れれば出来るんじゃないかな」


 そう私がちくっとした言葉を刺すと、


「んげっ! ……ま、まあ、人には得意不得意があるからさー、あはは……」


 とほおきながら、笑って誤魔化ごまかした。


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