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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第3時限目 日常のお時間 その17

「ま、とにかく頑張んないとね」


「は、はあ……そうですね」


「何、気の無い返事してるのさ。小山さんもなんだからね!」


「が、頑張ります、はい」


 いや、私はどう頑張っても膨らむことは……いや、女性ホルモンを注射したら膨らむのかもしれないけれど、私は女性になる気は無いから遠慮しておきたい、かな。


 岩崎さんと話をしながら、ようやく落ち着いたことにより思い出した未だかぱかぱと胸元で動くブラと再度格闘しながら、岩崎さんとの話にも注意しながら歩いていたのだけど。


 私の見た目は、下に無地のTシャツを着た水色ワンピース姿。ここ数日の他者からの評価としては、こういった女性モノの服装をしていた場合に「貴方、実は男でしょ! 私分かってるんだからね!」と名探偵に真実を暴かれた犯人よろしく指を突きつけられるケースは無かった。悲しむべきか、喜ぶべきかはさておき。


 さて、私のそんな格好は男であることがバレてはまずい相手には、性別を勘違いさせるという効果が期待できます。では、逆に既に男だと知っている人物に会うとどうなるでしょうか?


「でさ、今度――」


「……っ!?」


「……!」


 岩崎さんの言葉を聞きながら校門を越えてすぐ、1人の女の子とすれ違ったところで、お互いがお互いを二度見する。


 目の前には、疑念と嫌悪とをじっくりコトコト圧力鍋で煮込んだような視線。少し切れ長な睫毛の少し長い目が「寄るな触るな近寄るなヘンタイコノヤロー」と無言のプレッシャーを湛え、私に弁解の余地も隙も与える気は無いことを象徴していた。ああ無情。


「り、綸子……これには深い訳が……」


「…………」


「あのお店はねー……あれ、小山さん? どったの?」


 さっきまで横に居たのに、いつの間にか私が後ろの方に居たというのに気づいて、岩崎さんも足を止めたようだったけれど、私はそれよりも目の前に居る、私より拳半分くらい小さいだけの、割りと長身長の女子生徒に慌てて弁解する。


「あの……だから……」


 1歩私が近づくと、しゅたたっとほとんど音を立てずに忍者みたく3歩離れる。おそらくこのまま1歩ずつ進んでも永遠に彼女の元に辿り着けない無限ループになるだけだということは推測出来る。だからせめて、言葉で状況を解説をさせてほしいのだけど、一切目は逸らさず、でも、人はこんなにも口をへの字に曲げられるのね、と妙な関心をしてしまうくらいに唇を曲げて、一切の言葉も思いも受け入れない頑なな二枚貝のような態度。べ、別に、貴女のためにこんな格好をしているんじゃないんだから、勘違いしないでよねっ! と目の前の少女に乙女チックと言っていいのか良く分からない弁解文が頭の中を駆け巡っている時点で、私がどれほどテンパっているか想像つくかな。


 小山綸子りんず。私の妹。1つ下でややツリ目気味で、我が妹ながら怒ると怖い。短距離選手として県大会に出られるくらいに足が早いことと、何かあればすぐに蹴ってくるタイプだったこともあり、中学校くらいのときにはその細長い足で繰り出されたキックを何度か御見舞された。もちろん、結構痛い。ただ、今日は物理的にではなく、精神的に全力キックを仕掛けてきているような目をしているけれど。


「あ、あの……りん、」


「私には姉は居ません」


 周りに私、岩崎さん、綸子以外誰も居ないから、誰に言ったかなんてことは疑いようもないわけで、はっきりとした声でそういった我が妹君は黒のセミロングを風に靡かせながら、陸上部らしい超ダッシュ。一瞬で視線の先の丁字路に飛び込み、私の視界から消えていた。お、おおぅ……さすが陸上部ホープ。


 って、感心している暇は無いんだった! 早く誤解を解かないと。いや、ある意味誤解ではないのだけれど、誤解でもある。あれ? 誤解が誤解じゃないなら、誤解を解く必要はないのでは?


 だんだん自分でも何を言っているか分からなくなってきて、とにかくそんなことはどうでもいい、重要なことではないと慌てて綸子を追いかけて丁字路に入るけれど、路上駐車されていた車が2、3台見えるだけで、人の姿は見えない。あー……えっとこれは。


 そうだ、電話! と思って携帯電話を鳴らしても、お掛けになった電話番号は、から始まる非情な拒絶通知が流れてくるだけ。これは……駄目ですね。


「ど、どうしたの小山さん。姉って聞こえたけど、さっきの子ってもしかして妹さん?」


「え、ええ、まあ」


「なんか超拒絶されてなかった?」


「あ、あはは……」


 ただでさえ、中学くらいから拒絶されていたのに、こんな格好をしているのを見たら、心と心がマリアナ海溝を挟んだように、お心断絶フォーエバーされてしまっても仕方がない。でも、せめて説明くらいはさせて欲しかった。


 でも、私自身、彼女を納得させられる理由を持ち合わせてはいない。「女子校に間違えて入学しちゃったの、テヘペロ☆」って言ったら「そうなんだー、仕方がないね、キャピ☆」って返してくれるようなタイプの妹ではないから、何を言っても泥沼だったかも。


2016/10/17 文章見直し

一部、文章を見直しました。

変更内容の詳細に関しては2016/10/17の活動報告にも記載していますが、準くんの服装を変更しました。

理由は簡単で、最初はTシャツにジーパンだったので、準くんが女だと勘違いされないかもしれない、と思った次第です。

既にその9、10は1ヶ月前くらいにアップロードしているわけで、そこから遡っての修正でしたのでご迷惑をお掛けしました。

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