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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第18時限目 夜闇(やあん)のお時間 その12

「あ、あれ……皆、どうしたんですか?」


 頭をきながら体を起こすと、正木まさきさんがぎゅっと抱きついてきて、私は予想外の衝撃しょうげきにまたひっくり返った。


「え、ええ?」


「良かった……本当に……良かったです……」


 正木さん、泣いてる……?


 え、何故?


 まだ理解が追いつかない。


「ホント、心配させるんだから……。最初見つけたときは、死んだんじゃないかって思ったんだからね」


 真帆まほの声もひどく心が沈んだような声色こわいろだった。


「死んだ……?」


 聞き流すにはあまりにも強い言葉過ぎて、私はまた思考が停止した。


 今の私に見えているのは満天の星空。


 あれ、そういえばここは何処……?


「いつまで経ってもじゅんが来ないから、あたしたちで探しに来たら、こんなところでひっくり返ってるし……死んだって勘違いしても当然でしょ」


 そう言って、星空に割って入るように、真帆の顔が見えた。


 言われてみれば、さっきから背中がゴツゴツとした岩とか石みたいな感触がある。


 もしかして、私……階段で足を滑らせたりして気絶してたのかな。


 いや、でも私はさっきまでくだんの神社で、何か超常的な能力を持っている金髪お姉さんのマリアさんと、意外と低身長だった黒髪のサバサバ系お姉さんに会っていたはず。


 そして、どちらも実はかなり高齢だけれど、あの世界では何故か若返って――


 ――あー、なるほど。


 あっはっは、そっか、そうだよね。


 夢だったのかー、なんだ、心配して損した。


 周りの深刻そうな様子とは裏腹に、私の心の中は晴れ渡るような気持ちだったのだけれど、それを見透かされたみたいで、


「まー、当事者は別に大したことないような顔してるねー」


 と都紀子ときこ茶化ちゃかすように言った。


「あはは……ごめん。私自身、あまり倒れる前後の記憶が無くて」


「やっぱり、海のときのアレがまだ響いてるんじゃない? やっぱり病院に――」


 真帆の言葉に、私はあわてて首を振った。


「いやいや、大丈夫」


 そう言った私自身「この言葉、絶対に信用ならないな」と思ったし、周りの視線もそのたぐいのものだった。


 まあ確かに、車との大事故、プールでの転倒、海での溺死できし寸前という状況があった上、夜道の階段でコケて記憶がないなんてことになったら、そりゃあ見てる側からしたら不安要素しかないっていうか、もう何かに取りかれていて、そろそろあの世からお迎えが来るんじゃないかと心配するレベルだよね。


 けれど、折角せっかくの夏休みを台無しにしたくない。


 私は元気を見せるよう、私を抱きしめて離さない正木さんの体と共に、自分の体を起こした。


「ホントに大丈夫なのか? 今日はまだ酒飲んでないし、いざとなったら車で近くの病院まで――」


「いえ、ホントに大丈夫です。多分あれです、皆でこんな風にお泊り会するなんて初めてで、全然寝れなかったので、それが原因でコケて気を失ってたんじゃないかなって思います」


 体はどこも痛くないから、本当に私自身が転倒したのかはさだかではないし、少なくとも「眠れなかった」というのは誤った情報で、実際は朝までぐっすりだったのだけれど、こうでも言わないと安心してもらえないだろうから。


 ……いや、今でもまだ半分以上疑いが占拠せんきょしている視線ばかりだけれど。


 とりあえず、連休明けに1度行った方が良いかな。


 病院ではなくて、おはらいの方。


「はあ、まあ本人が良いなら良いけど、あんまり無茶はするんじゃないよ。ってか、次何かあったら本当に、強制的に連れて行くから」


「は、はい」


 都紀子の叔母おばさんがそう言うから、私は素直にうなずいた。


 ……き、気をつけよう。


 気をつけてどうにかなるものなのかは分からないけれど。


「ま、とりあえず山降りようか」


「……そうですね」


 私が立ち上がって、砂を払った直後、正木さんが私の右腕に自分の腕を絡ませてきた。


「あ、あの、正木さん」


駄目だめです」


 まだ何も言ってないんですが……いや、最後まで言わずとも言いたいことを察せる状況ではあったと思うけれど。


 何にせよ、今の私に信用というものはほぼゼロだと思っていいから、ここは仕方がなく――


『おお、イガイとオオきいですねー』


「ひゃい!?」


 私は脳内で聞こえた声に、大袈裟おおげさな反応をしてしまい、また皆の視線を集めてしまった。


「小山さん?」


「あ、いえ」


 ……さっきのは、夢じゃなかったのか……。


「準、やっぱり何かあったの?」


「あ、いや……下駄げたの中に小石を入ってたみたいで、あはは……」


「……」


 半分くらいだった、私に向けられる不信感ゲージが6割強くらいまで上がった気がする。


「だ、大丈夫だから……」


 もう、何を言っても空虚くうきょでしかないけれど、私は全力で笑顔を貼り付けた。


『あー、ごめんなさいね。オドろかせましたか?』


 そりゃまあ……と心の中で思うと、


『やっぱりそうですかー。ごめんなさい』


 と反応があった。


 ……え、あれ?


 もしかして、心の中で思うだけで話が出来てる?


『そうみたいですねー』


 わーお、ホント非常識な状況だなあ……。


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