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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第18時限目 夜闇(やあん)のお時間 その11

「……」


 しん、と静まり返る世界。


「多分、このままずっと未練を残したままであれば、今みたいに毎年こうやって会うことが出来るかもしれません。ただ――」


みなまで言うな」


 少し強い口調で、ただ厳しさとくやしさをたたえた声色こわいろだった。


「そもそも、この件はお前さんには関係ないことだ。だから、いらんことを考えんでも良い」


 ……言いたいことは分かるけれど、私も引けない。


「いえ、関係ないことはないです。どういう形であれ、こうして巻き込まれてるんですから」


「……」


 押し黙る黒髪女性。


「まあ、ちょっとぐいっとやってみるのだけいいんじゃないですか? もしアブないのであれば、すぐにモドればいいですし! デキるかシらないですけど!」


「……」


「……」


 私と黒髪女性は、金髪女性の軽いトーンの言葉に、思わず顔を見合わせた。


「……アンタ、本当にあんなのと一緒いっしょになってしまうかもしれないが、良いのかね」


「やっぱりちょっと検討させてください」


「そんな!」


 私と黒髪さんの反応に、金髪さんがまた半泣きになって、私と黒髪さんは笑ってしまって。


 すぐに表情をもどした黒髪女性は、


「……子供にそんな心配されてちゃ世話がないんだけどねえ。まあ、アンタが言う通り、このままで良いとは思ってない。本当はアタシが面倒見てやんなきゃいけないんだが、どうにも融通ゆうずうきかないみたいだからねえ。このアホンダラのために何かしてくれるんなら、甘えさせてもらおうか。もし何かあれば、アタシがアンタを面倒見てやるさね」


 と頭をきながら言った。


「ありがとうございます」


 お互い、こんなに簡単に決めて良いものかと問えば、そりゃあ良くはないのだろうし、そういえばまた後先考えずに行動してるなって思わなくもないのだけれど。


 自分に何か出来るものがあるのなら、やっぱり何かしたいと思う。


 多分、これはもう性格であって、どうしようもないのだろう。


「じゃあ、やりますね」


「ええ、お願いします」


 とは言ったものの、何をやるの? と思っていたら、金髪女性は私の目の前に立って、両手を突き出し「むむむんっ……」と何やら力を込め始めた。


 なんというか、まあ……うん、そういう雰囲気ふんいきだけは確かにあるけれど、これで本当に出来るの?


「……えっ」


 光った。


 この状況で「何が」と問う必要は無いと思うけれど、念の為。


 主語は「金髪の女性」。


 ……いや、問うか、うん、普通は問うね。


 前に戦隊モノの動画を見てたとき、一部のキャラクターは光っていたけれど、人間は光らないもんね。


 何だかだんだん変なことに慣れてきていて、何処がおかしくて何処がおかしくないのかの判断が曖昧あいまいになってきているような。


 それはさておき、金髪女性は一瞬で光の玉みたいなものになり、私に飛び込んできた。


「うわっ!」


 思わず回避しようとしたけれど、それを許さない速度で突っ込んできた光の玉は私に取り込まれ――


『あ、セイコウですねー』


 耳の奥で声が聞こえた。


 ……ううん、耳の奥というのもちょっと違うかな。


 どちらかというと、脳内のうないに直接響くというか、言葉が発されているということを直接理解できるというか……うーん、表現が難しい。


 何にせよ、さっき金色に光った金髪の女性の声が、姿は見えないのに間違いなく聞こえる。


 声はすれども姿は見えず、ほんにおまえは――


「……ほ、本当に入っちまったってのかい!? アタシのときは弾かれちまったが……おい、聞こえるか、マリア!」


 急に体ががっくんがっくんとらされて、私の脳内で続いていた言葉が止まってしまった。


 あ、あの金髪女性、マリアって名前なんだ、何となくそんな感じあるなあ、なんて何気なく思ったら、再び私の脳に言葉が聞こえた。


『アカリちゃん、オドロいてますねー』


「アカリちゃん?」


「マリアなのか!?」


 がっ、と肩をつかまれた私は、かろうじて言葉を吐き出した。


「あ、えっと、一応確認なんですが、そのマリア……さん、というのはさっきの金髪の女性のことですか?」


「そうだ。本当に……今のアンタはどっちだ?」


「私は私……いえ、マリアさんではないです」


「そ、そうか……」


 ちょっと残念そうな表情のあかりさん。


 だから、私はあわてて訂正ていせいした。


「えっと、確かに私はマリアさんではないですが、マリアさんは私の中に“居る”みたいです。先程から声は聞こえてるんですが、えっと……アカリさん? は聞こえてますか?」


「何も……いや待て。それより、何故アタシの名前を知っている?」


「いえ、その、さっきから耳元というか、脳に直接響くような声で、そのマリアさん? が言っていたので……」


『あ、そういえばジコショウカイしてなかったですね』


 マリアさんの言葉に、私は思わず、


「まあ、そうですね」


 と返したのだけれど、それを怪訝けげんな視線を私に向ける。


「何がそうなんだ?」


「え? ……あ」


 しまった。


 私には脳内と目の前から声が聞こえるから、何気なくどちらにも反応してしまうのだけれど、どうやらマリアさんの声はあかりさんには届いていないようで、あかりさんにとっては何を言っているのか分からない、という状況になってしまうらしい。


 これは気をつけないと……。


『ちゃんとトりツくことデキるんですねー。じゃあ、イチドモドりましょうかー』


「はい」


 私がうなずくと、


「なんだ、あいつは何て言ってる?」


 と再びあかりさんからの言葉が。


「あ、えっと、取り憑くことは出来たから1回戻りましょうかって」


「ああ、なるほど。そうだな」


 ……しかし、待てど暮らせど、光る玉が私から出ていく様子はない。


「あの、まだ……でしょうか」


『というより、ムリっぽいですぅ……』


 ひーん、と半泣きボイスが脳内で響く。


「無理、ですか……」


「だから言ったんだ。全く、これでお前とマリアは……っ!」


 あかりさんの声を遮るように、一陣いちじんの風が私たちの間を吹き抜けた。


「まずいな、もう戻されるのか」


「え? どういう――」


「また明日、このくらいの時間にここへ来い。必ずだ」


 私が言葉の真意を確認する前に、もう1度強い風が吹いて――


「小山さん!」


「……?」


 目を覚ますと、私は正木まさきさんに抱き上げられていた。


 周囲には、都紀子ときこや都紀子の叔母おばさんの姿もある。


「あ、あれ……皆さん、どうしたんですか?」


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