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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第18時限目 夜闇(やあん)のお時間 その1

「これから肝試きもだめしを開催かいさいするよー」


「……」


 やる気な都紀子ときことは異なり、私を含めた他の3人は全く乗り気じゃなかった。


「ホントにやんの?」


 開口一番、真帆まほがそう尋ねるくらいに、テンションが上がっていない。


 うん、まあ私も大体同じ意見かな。


「怖くなってきちゃったかねー?」


 にしし、と笑う都紀子ときこ


「いやまあ、怖い怖くないとかじゃなくて、ほら……足元とか危ないっしょ」


 真帆が落ち着きなく辺りをキョロキョロ見回しているのは、楽しみだからという気持ちによるものでないことは間違いない。


 ……ぶっちゃけて言うと、私も他人ひとのことは言えない。


 月にはやや雲が掛かっていて、道標みちしるべとしては心許こころもとないし、昼間はかなり温度が上がったのにも関わらず、この時間、この辺りは少しひんやりする風が吹き抜けていて、それが余計に恐怖心をあおる。


「そうだと思って、道のところどころに提灯ちょうちんをぶら下げてるよー。ちゃんと提灯のある道を通れば、ちゃんと神社まで辿たどり着くっていうことだねー」


 そして、今都紀子が言ったこの提灯が、更に何かが起こりそうな空気をかもし出しているのがなおのこと怖い。


「提灯とはまたやけに風流なものを準備したね」


 若干の皮肉を含んだ言い回しをしてみたけれど、おそらく理解しながらも都紀子がさらりと流して言った。


「まあ、ここでのお決まりさねー。雰囲気ふんいきが出ていいしねー」


 雰囲気が出るというのには同意だし、普通にお祭りでぶら下げてあるのであれば、その風流さも楽しめただろうけれど、風に揺れるそれが、今日はむしろ恐怖の対象にしかならない。


 というか、そこまで普通やる?


「あ、あの、片淵さん」


「はい、紀子ちん。発言どうぞー」


 おずおずと手を上げた正木まさきさんを、都紀子が指名する。


「この浴衣ゆかたは……?」


 正木さんが言う通り、私たちは浴衣に着替えさせられていた。


 もちろん、これは私たちが持ってきたわけではなく、片淵家かたぶちけにあったものを借りている。


 ちなみに、私は身長的に女性陣の誰のものも合わなかったから、都紀子のお父さんのものを借りている。


 正確に言うと「お父さんだった人」のもの、らしい。


 そういえば、確かにおばあさんから「そんなんだから夫に逃げられるんだ」みたいなこと言われてたっけ。


 少しだけすそが短い以外はぴったりだったのだけれど、そんな私を見て、


「んー、懐かしいねー」


 と言った都紀子の表情は何とも言えないものだった。


 まあ、それはそれとして、この浴衣を着る意味とは。


「それも同じで、雰囲気作りだねー」


 ああ、うん、なんというか……やるならとことん、ということね。


 そうすると、気になることが1つ。


「都紀子が着てないのは何で?」


 私よりも先に投げられた真帆の質問に、いっひっひ、とまるで悪役の魔女みたいな笑い方をしつつ、


「アタシは……というかアタシたち片淵家一同はおどろかす役だかんねー。存分に驚いてくれたまえー」


 と都紀子が答えた。


 そう、都紀子だけではなく、都紀子のおばあさんや伯母おばさんまで参加している。


 もちろん、おどかす側で。


 そのため、伯母さんも今日は強制的に禁酒させられているとかで、ぶつぶつ文句言ってたっけ。


 まあ、確かに都紀子自身はこの神社の道とかは知っているだろうし、脅かしスポットも分かっているだろうとは思うから、脅かす側の方が適任のような気はするけれど。


「えー、それはずるくない?」


 真帆がらす不平も良く分かる。


「まーまー、驚く側も脅かす側も、どっちも大事だからねー」


「むう……」


 何を言っても都紀子はこの決定をくつがえすつもりはなさそうだということを理解してか、私たち3人は黙った。


 それを了承りょうしょうとらえた都紀子は解説を再開した。


「ルートは紙で渡した通り、ちょっとだけ遠回りの山登りルートだねー。といっても、あまり急じゃないから子供でも十分登れる程度の距離だよー」


「そうは言うけど、結構長くないかな」


 私がもらった地図を見ながら言う。


 スマホの地図機能で距離計算をしてみると、歩く距離は1キロメートルちょっと。


 人の歩く速度は1分間で80メートルとかで計算されていたはず……不動産の駅までの所要時間とかだったかな?


 単純計算なら15分も掛からないけれど、おっかなびっくり歩いたら15分を軽く超えそうな感じで、肝試しにはちょっと長い距離かもしれない。


 まあ、今まで学校とかで肝試しやった記憶はないけれど。


「どうしても進めなくなっちゃったりしたら、アタシの携帯に電話を掛けたら迎えにいくよー」


「……はーい」


 参加者側、総勢3名はちょっと気乗りしないまま、肝試しは開催される運びとなった。


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