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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第17時限目 水際のお時間 その29

 そう言った都紀子ときこはあまり水しぶきを立てずに、でも結構な勢いで泳いでいった。


 ……あまり気づいていなかったけれど、最初も真帆まほに付いていくくらいのスピードで泳いでいたし、都紀子って案外運動神経良い?


「都紀子ってあんなに泳ぐの早かったっけ?」


 少なくとも私よりは都紀子を見ているはずの真帆が、頭をきながらそんなことを言うから、実はこっそり練習していたとか、かなり頑張がんばって泳いでくれてるのかも?


「あー、じゅん


「ん、何?」


 真帆の言葉に私がハテナを返すと、私に背を向けたまま真帆が言う。


「いや、準もホントにアレだったら……紀子のりこの後に、あたしが背負って泳いでもいいけど?」


 ……ああ、そっか。


 何だかんだ言いながらも、やっぱりちょっと気にしてくれてるんだ。


「ふふっ」


 同じことを思ったのか、正木さんも隣で笑っている。


 だから、私は心配掛けないように笑って答える。


「ううん、大丈夫。……で、心配掛けないためにも、泳ぐ前にストレッチをしっかりしとかないと」


「ん、じゃあ手伝う」


 そう言って、笑顔の真帆がストレッチの相手をしてくれた。


 少なくとも今度はつらないように、アキレスけん含めて足を十分にばす方向で。


 おかげで、都紀子がもどってきた頃には、結構体がほぐれた。


「ほい、500ミリリットルので良かったよね?」


 そう言って、都紀子がスポーツドリンク入りのペットボトルを私に手渡す。


「うん、十分」


 本当に浮力が十分なのかは分からないけれど、あるだけで大分助かるのは間違いない。


「あ、ちょっとだけアタシももらったよ」


「別に構わないよ。後で戻ったらお金返すね」


「いやいやー、それくらい大丈夫。それより、伯母おばさんには紀子ちん用のタオルを準備しておいてもらえるように言っといたよー」


「あ、ありがとうございます」


 正木さんが丁寧に、腰を折って都紀子に謝意を告げる。


「いやいやー、全然構わないさねー」


 正木さんと都紀子のやり取りを横目に、ぐびっとスポーツドリンクを飲むと。


「準、そのスポーツドリンク、あたしたちにもちょっとくれない? 紀子ものど乾いたでしょ」


「え、あ、うん、ちょっとだけ……」


「確かに、ごめん気づかなくて」


 私はスポーツドリンクを真帆に渡し、それから正木さんに渡ってから、手元に空……ではなく正木さんが多分遠慮したらしい、一口分のスポーツドリンクが入ったペットボトルが戻ったから、私は最後を飲み干す。


「よし、じゃあ準備出来ただろうし……ほら」


 そう言って腰辺りまで海に入った真帆の背中に、正木さんが抱きつくような形で乗る。


「……むう」


「ど、どうしたの真帆? 重い?」


 真帆の上に乗った正木さんがあわてて立ち上がろうとするけれど、真帆は「いや、そういうのじゃなくて」と否定してから続けた。


「めっちゃ大きいのが、めっちゃ当たって、ちょっと腹立つ」


 言っている真帆の目は、ジト目というか、無心になろうとしているものの怒りがれているように見えた。


「にゃはは、それは仕方がないねー」


「う、ご、ごめん」


 正木さんもどう反応すべきか迷っている様子だったけれど、


「まあ、ちゃんと掴まっといてよ。むしろ途中で暴れたりして落ちる方が困るし」


 と話題を作った真帆が強制的に話を進めた。


「う、うん」


「んじゃ、行くよ」


 ゆっくり泳ぎだした真帆から落ちないよう、正木さんがぎゅっと真帆にしがみついているのを確認してから、


「よし、準にゃん! アタシたちも一緒に付いていこう」


 と都紀子が私に声を掛けるから、


「そうだね」


 と答えて、私もゆっくり水の中に入って、真帆にぶつからない程度の距離を取りつつ泳ぐ。


 泳ぎ出して間もないけれど、やっぱりちょっと心配で、私は真帆に声を掛けた。


「大丈夫?」


「平気平気。まだ泳ぎだしたばっかじゃん。大丈夫だって。あたし、体力はあるからさ」


 そう言う真帆だけれど、単純に正木さんを気遣ってなのか、体格差があるからか、最初の泳ぐペースから大分スピードが落ちている。


 ……いや、泳いでいる真帆の体は結構沈んでいるし、少しだけ呼吸も荒いから、後者のような気がする。


「疲れたら代わるよー?」


「いや、体格的に考えて、あたしが無理なら都紀子はもっと無理でしょ」


 そう笑って言って返すだけの余裕はまだあるみたいではあるけれど、全体の半分くらいまで来たところで更に速度が落ちる。


「ま、真帆。私、自分で泳ぐよ」


 上に乗っている正木さんにも異変が伝わったか、そう正木さんが言い出すけれど、


「いや、別に大丈夫だって。紀子はじっとしてて」


 と真帆が返す。


 ……さっきよりも呼吸が更に荒くなり、あまり大丈夫そうには見えない。


「ほら、もうちょっとだし」


「いや、まだ半分くらいだよ」


「あ、ペットボトル使う?」


「いや、あたしにとってはむしろ泳ぐのに邪魔じゃまになる」


「……そっか」


 よく考えたら、都紀子もそうだけれど、真帆もこれが2往復目。


 結構体力を消耗しょうもうした上で、更に人を乗せて泳ぐのだから、体力の消耗しょうもうが激しくてもおかしくない。


「……真帆」


「何?」


「私が代わろうか?」


 ……いや、賢明けんめいな方はここの発言がよこしまな意味で言っているわけではないと分かってくれると思うけれど!


 本当に、真帆が大変そうだから正木さんを背負おうかと言っているだけで、その、さっき真帆が背中に大きいのがどうこうって、そう言っていたのがどうとかこうとかではなくって!


 ……うん、毎回の話だけれど、一体誰に私は申し開きをしているんだろうね。


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