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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第17時限目 水際のお時間 その20

 まあ、そんなこんなで新米先生が生徒を2人抱えることが確定してしまった。


 あ、ちなみに元々は「私もあまり泳げないから一緒に練習しましょうね」という話だったはずなのだけれど、正木さんに教えるために色々調べて、実践じっせんしてみたら、持ち前の体力により平泳ぎであれば100メートルくらいは泳げることが分かった。


 つまり、他人に言っておきながらアレだけれど、私自身ちゃんとした泳ぎ方を知らなかっただけだったらしいという話。


 本来だったらこういうパターンって「泳げないとか言ってたのに! 嘘吐うそつき!」とか言われそうなところだけれど、正木さんはむしろ私が先生をする時間が伸びたからか、喜んでくれた。


 ……あれ、そういえば。


「正木さん」


 休憩きゅうけいでプールサイドに座っていた正木さんに声を掛けた。


「はい?」


「今は完全に私が先生になってますが、そういえば海に行こうって話になった際、先生になってくれる人に心当たりがあるって言ってましたが……あれ、もしかして私だったんですか?」


「はい、そうですよ?」


「……」


 いや、まあ最初の様子からしてそうだろうとは思ったけれど、私あまり泳げないって言いましたよね!?


 確かに理論は知っているし、教えるのは上手だけれど自分は出来ないというパターンの人も居ないわけではないけれど、そこはそういうタイプなのかちゃんと確認しましょうね!


「……というのは冗談じょうだんです」


「えっ」


「流石に、最初からあまり得意ではないって言う人を先生にしようとは思ってなかったです」


 ……本当に?


 正木さん、本当にそう思ってる? とはちょっと言えなかったけれど、少しだけのどの奥から出掛かった。


「本当は私の母に頼もうと思ったんです」


「正木さんのお母さん、ですか」


 そういえば、テオをりょうで飼うようになる際に色々お世話になったっけ。


「ええ。昔……高校の頃は水泳部だったらしいので、教えて欲しいってお願いしていたんです」


「え、それなら確かに、その方がよっぽど良かったのでは……?」


 むしろ、知ったかぶりの私が教えるよりも正確だったと思うのだけれど。


「それが……その、昔着てた水着が入らなくなってたらしくて……」


「……」


 な、なるほど。


 ちょっと微妙びみょうな空気になってしまったせいで、隣で聞いていた坂本先生も気まずそう。


 責任を感じたのか、正木さんがそう明るい声で空気を吹き飛ばすように言った。


「で、でも、何だかんだで小山さんが先生として色々教えてくれたお陰で、少しずつ泳げるようになってきているから大丈夫です! な、なので、これからもよろしくお願いします!」


「あ、は、はい。よろしくお願いします」


 吹き飛ばすというか、押し切られた?


 というわけで、当初予定していた組み合わせとか立ち位置とか、色々変わってしまったけれど、私たち3人は都合を合わせ、学校のプールで水泳の練習を密かに続けていた。


 もちろん、休日だけだと夏の終わりまでに間に合わないけれど、学校のプールは授業後、大抵水泳部が使用しているし、放課後にすぐ練習していると折角せっかくの秘密特訓が秘密じゃなくなってしまう。


 だから、坂本先生経由で理事長さんにお願いして、部活動終了後の最終下校時刻後に30分だけ練習するというのを許可してもらって、私たちは泳ぎの練習を続けていた。


 数回の秘密特訓だけで、正木さんも坂本先生も体力が少しずつ付いてきたのか、それとも技術が見について無駄な力が入らなくなったのか、平泳ぎは25メートル泳ぎ切ることが出来るようになっていた。


 ただ、まだクロールは手と足のタイミングを合わせることが難しいみたいで、25メートル泳ぎ切る前に力尽きてしまうみたい。


 まあ、海水浴を楽しむだけなら平泳ぎだけでもいいんじゃないかな。


 ……すみません、海水浴素人の私が、勝手に知ったような口をきいてすみません。


 ということで、私たち放課後水泳部は実践じっせんを積み重ねることで、徐々にではあるけれど、成長が見られ始めていた。


 そんなある日のこと。


「怪しい」


「えっ」


 ホームルーム前、咲野さきの先生が来るまでの時間はいわゆる自由時間なのだけれど、かばんを置いてつかつかと歩み寄ってきた真帆まほ開口一番かいこういちばんにそう言った。


 ただ、このときの「えっ」は真帆の言葉があまりに唐突すぎて、一体何に疑問をいだいているのか分からなかったという意味での「えっ」だった。


 その「えっ」はすぐに声色こわいろが変わることになる。


「準、それと紀子のりこ。何か隠してるでしょ」


「え゛っ。そ、ソンナコトハナイデスヨ」


 自分で言うのも何だけれど、つくづく隠すのが下手な人間だなあって思う。


 まあ、確かにここ最近は水泳の疲れからか、真面目に授業を受けていた正木さんが授業中にうとうとしてしまうこととか、バイトのシフトを少し後にずらさせてもらったりと、かんの鋭い人なら異変に気づくかもしれなかったけれど、それが真帆というのがちょっと意外。


 いや、むしろ真帆に気づかれるくらいにバレバレな行動をしていたのかな?


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