表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

461/958

第17時限目 水際のお時間 その19

 服に着替えてから、坂本先生がプールを出ていき、程なくして戻ってきた。


 その間、正木まさきさんはこの時期とは言え流石に寒いからと、外していたブラはまた付けていたけれど、それでも下着姿というのはちょっと意識してしまうから、視線は顔だけに向けていた。


 ……み、見てないよ?


 正木さんが水着を受け取って着替えを再開したところで、視線を外して自分も水着に着替えてからプールサイドへ。


 もちろん、坂本先生の号令のもと、きっちり準備体操はしてから。


「それでは小山先生、よろしくお願いします」


「小山さ……いえ、小山先生、よろしく、お願いします」


「えっ……」


 先生?


 私は呆気あっけにとられていたけれど、2人ともが真面目に言うから、


「あ、はい、よろしくお願いします」


 と私も頭を下げた。


「じゃあ、まずは平泳ぎにしましょうか。どれだけ泳げるかを確認したいので、平泳ぎで泳げるところまで泳いでみてください」


 とりあえず、現状確認が最初だと思ったのでそう言ったのだけれど、


「よーい、スタート」


 と言った私の言葉の直後、2人ともぱちゃぱちゃと泳ぎ始めた。


 しばらくして立ち上がった2人が、


「……ぷはっ。ど、どれくらい行きましたか?」


「はぁ……はぁ……どうでしょう、か」


 と私に距離を確認する言葉を投げかけてきたから、私はプールにある目印と目測で、素直に距離について答えた。


「えっと、どちらも10メートル届かないくらいですかね……」


 結果としては予想通りといえば予想通りだけれど、2人とも自身が感じている通り、に必死に泳いでいるのに全然進んでいない。


 えっと、こういうときはどうだったかな……。


 動画やホームページの情報を統合しつつ、ビート板を使ったりして、手足の使い方の練習を繰り返していると、どうやら正木さんも坂本先生も正しい泳ぎ方が分からなかっただけのようで、教えれば教えるほどぐんぐんと上手になっていった。


 ただ、2人とも体力と筋力がないため、25メートルを泳ぎ切るまでには至らず、再チャレンジでも15メートル辺りで失速して立ち上がった。


 それでも大進歩だと思う。


「今日はこれくらいにしましょうか」


「疲れました……」


 プールから上がってそうそう、くたっとプールサイドに横になる正木さんと坂本先生。


「お疲れさまでした」


 そう言って、私は2人に近くの自動販売機で買ってきたスポーツドリンクを手渡す。


「25メートル泳ぐにはまだ時間掛かりそうですね……」


 スポーツドリンクをくぴくぴと飲んでから、正木さんがさっき自分がプール内で立ち上がってしまった辺りを見て言う。


「確かに25メートルまではまだですが、まだ1日目でここまで泳げるようになっただけすごいと思いますよ。どちらかというと、正木さんも坂本先生も技術的な問題よりは体力的な問題が大きいようですし」


「体力……ですか?」


 まだ、少し息が荒い坂本先生が疑問符を投げる。


「はい。私が見る限りではそうです。繰り返し練習すれば体力もついてくると思いますので、繰り返し練習が大事かなと思います」


 何かちょっと偉そうな感じになってしまったけれど、坂本先生も正木さんも真面目にうなずいてくれた。


 その後、私たち3人はシャワー室に。


 大丈夫、ここのシャワー室は……というか普通そうなのかもしれないけれど、ちゃんと仕切りがあって、胸元から太もも辺りまでは見えないようになっているから! ……と先に予防線を張っておく。


「でも、久しぶりに泳いでみると楽しいですね」


 左隣でシャワーを浴びていた坂本先生が、そう笑顔で私に声を掛けてきた。


「ありがとうございます、正木さん、小山さん。ここのところ、色々あってちょっと疲れてたんですが……良い機会でした」


 坂本先生の言葉に、


「いえ、私こそ巻き込んでしまって申し訳ないです」


 と私の右隣から、正木さんがそう言った。


「でも、本当に小山さんって教えるの上手なんですね」


 坂本先生がシャワーの仕切り板の上に身を乗り出しながら言った。


「そ、そうですか?」


「ええ。最初と比べて、だいぶ泳ぐのが楽になりました。無駄に力が入りすぎてたんですね。正木さんがおすすめするのも良く分かります」


 そう言って、坂本先生が見ている正木さんの方を向くと、ちょっと……いや、かなり嬉しそうな表情をしていた。


「最近、あまり体を動かしていなかったのもあるので、良ければしばらく泳ぎを教えてもらえませんか? もちろん、監視という名目で私が付くという形ですが」


「はい、私は構わないですよ」


 そう言って、正木さんの方をちらりと確認すると、


「ぜひ」


 と正木さんも短く答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ