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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第17時限目 水際のお時間 その6

「え……?」


 大隅おおすみさんの反応に、先生ズが困惑し始めたから、この状況を作り出した責任者が、


「あー、えっと、ちょっと先生、こっちに!」


 と声を上げた。


「ん、なになに……あれ?」


 先生と言ったから、当然自分が呼ばれると思っていた咲野先生は、目の前で坂本先生がさらわれて……いや、連れられてプールの端まで行ってしまったのを見て、頭の上にハテナを生やしていた。


「先生って……え、何、アタシやっぱ嫌われた?」


 しょんぼり、という雰囲気ふんいきかもし出した咲野先生。


 いやまあ、事情は既に知っているから、別にこっそり話をしなくても……と思わないでもないけれど、かといってあまり堂々と話す内容でも、とは思う。


「いえ、そういう意味ではないと思いますよ。単純に相談事がたまたま坂本先生に合っていたというか……」


「つまり、やっぱりアタシじゃ解決できないから駄目ってことじゃん!」


 途端に咲野先生がうるうるし始めるから、しまったと私は思いつつ、他の言葉を探すと、


「まーまー、先生。もし、身体的な不調の相談とかだったら、やっぱり専門の先生に聞いた方が安心出来るからっていうのもあるかもしれないですしねー」


「む、むう……まあ、確かにそういう話だったらアタシよりも公香きみかの方がいいか……」


 都紀子ときこの言葉で、一定の理解はできたらしい……けれど。


「やっぱり、公香みたいな保健の先生的なポジションの方が、生徒から相談受けやすいのかなあ」


 納得は出来なかったみたい。


「いや、でも先生って結構、色んな子が来たりしてません?」


 たまに職員室に行くと、咲野先生がうちのクラスや他のクラスの生徒と話をしている様子をしばしば見ける。


 もちろん、相談事なのかかどうかは知らないけれど、少なくとも生徒たちから信用されていないというわけではないと思う。


「んー、まあもちろん無いわけじゃないんだけどさ」


 そうやって、軽く笑ってから、


「……ほら、なんていうか……大隅じゃん? 特に色々あったからさ」


 と続けた咲野先生の表情が、少しだけ寂しそうにも見えた。


 そっか、咲野先生としても、ずっと気にかけてきた2人だから頼ってきて欲しいと思っていたのに、その立ち位置が坂本先生に取られてしまうというのは、担任という立場を除いても思うところがあるのかもしれない。


「まあ、それほど心配しなくても――」


 私がそう言い掛けたところで、坂本先生がこちらを向いて手招きをする。


「おやー? もしかして、私の出ば――」


正木まさきさん、ちょっと」


 ……正木さんの名前を呼びながら。


「え、正木ちゃんと大隅? どういうこと……?」


 事情が分からない咲野先生的には、水と油みたいな組み合わせにしか見えないだろうと思う。


 いや、事情を知らなかったら、私だって咲野先生と同じ反応をしていたんじゃないかなと思うけれど、事情が事情だからなあ。


 そして、私以外にも事情を知っている人物が2名。


「せんせー、もう泳いじゃっていい?」


 咲野先生が状況把握をしようとしているところで、真帆まほが間の抜けたような声で尋ねる。


「え? あ、別にいいけど」


「よーし、んじゃ準! 1往復だけ準備運動がてらに泳いだら、後は50mクロールで勝負しようよ」


「おー、面白そうだねー。アタシも参加しようかなー」


 真帆の提案に都紀子が乗る。


「え、2人とも正木ちゃんは友達じゃないの? 心配にならない!?」


 薄情な態度にしか見えない真帆と都紀子に対して、咲野先生は更に疑問符を生やしていた。


 そんな先生に、あははと笑いながらつかつかと近寄って、その肩を叩いた真帆は、


「先生、この件に関しては、紀子は敵です」


 と至極しごく真剣な表情で言い放った。


 ……あ、うん、そうだね。


 真帆はこの件については1番真面目だったね。


「ど、どゆこと……?」


 おそらく、咲野先生の脳内では私たちの交友関係図がものすごい勢いで書き換えられていそうな表情だった。


 まあそんなわけで、私と真帆、都紀子がクロール勝負をしている間に、どうやらあの2人の状況の方もかたが付いたようで、プールに入ってきた。


「学校でストックがあるから、それを今から貸してくれるそうです」


「そうなんですか、それは良かった。でも、そういうのって学校で保管してるんですね」


 大分昔に、学校では下着を貸し出せるように準備している、っていうのは聞いたことがあるけれど、それって小学校とかの頃だったような?


「元々学校で準備していたのではなく、卒業生がもう使わないからって置いていってくれているらしいです」


「そういうことですか」


 体操着やジャージなら部屋で使うことはあっても、学校指定の水着はあまり海水浴とかに持っていくこともないし、家で使うこともないはず。


 そうすると、1番使用する可能性がある学校に寄贈きぞうするというのも1つの手ではあるかもしれない。


「聞くところによると、私たちの学年でも何人か利用している人が居るらしいです」


 正木さんの言葉で、ふと1人思い浮かぶ人物は居た。


「あー、工藤か」


 ……どうやら、真っ先にこのネタに食いつく真帆と同じ人物を思い浮かべたらしい。


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