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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第17時限目 水際のお時間 その1

「うおりゃーっ!」


 びしゃーっ、とホースから水を勢いよく吹き出す真帆まほ


「ちょ、ちょっと、真帆!」


「いいじゃん、いいじゃん。どうせ、れてもいいように水着に着替えてるんだしさ。そりゃーっ!」


 テンション爆上がり中の真帆は、非難の声を上げた正木まさきさんに追加で水を浴びせかける。


「いやー、元気……うわっぷ……、あはは、元気だねー」


 私としゃべっている間に、正木さんを襲った攻撃の巻き添えをった都紀子ときこは笑っていた。


「おーい、ちゃんと仕事しろー」


 プールサイドで日陰に入りつつ、団扇うちわで扇いでいた咲野先生が言う。


「いや、そう言いつつ、自分は日陰でくつろいでるじゃん!」


 真帆のジト目で放たれた言葉に、


「自主性がなんたらかんたらだから、生徒たちが使うプールを生徒たちで綺麗きれいにするって話だし、あたしはいいのー」


 そう言いながら、プールサイドにあった椅子いすに横になる。


 ……それは監督かんとくする人間として、正しい態度かと言いたくなる気持ちもあるけれど、そこを突っ込んだところで咲野先生が真面目にやるようになるとは思えない。


 もし真面目にやり始めるなら……理事長さんが来るくらいしないと駄目かな、うん。


 まあ、流石に理事長さんが休日まで出てくるとは思わないから、咲野先生もこんな態度になるのだろうけれど。


 ちなみに、咲野先生も水着ではあるけれど、学校指定の水着ではなく、海水浴に遊びに行くときのようなビキニタイプの水着を着ていた。


「何で先生はあんな水着なんだろうね」


「いやー、あれじゃないかねー? 体育教師なら学校指定の水着もあるだろうけど、そうじゃなければ水着必要ないし、持ってないんじゃないかねー」


「あ、そっか」


 私の何気ない疑問に都紀子が答えてくれて、納得した。


 言われてみれば、確かにクラス担任が水泳の授業をするわけではないしね。


「とにかく、プール清掃早く終わらせなー。じゃないと、今日中にプールに水張れないから、1番プール出来んよー」


 だらけモードの咲野先生を相変わらずだなあと見やりつつ、私は真面目にプール清掃せいそうを再開する。


 前々から話をしていたプール清掃は、私の体の状態が落ち着いたこともあり、宣言通り参加することになった。


 ちなみに、参加者は私を含めたいつもの4人と、


「っしゃーらっ!」


 コケそうで心配だけれど、元気よく駆け出す大隅おおすみさん、


「ダッシュダーッシュ!」


 その隣を一緒に駆ける中居さん。


 そして。


「……」


 黙々(もくもく)と作業を続けるのはみゃーちゃんが作ったロボットの、えっと……渡部わたべさん、だっけ?


 確かに罰ゲームみたいな扱いを受けているからか、他には誰も来ていないようだったから、私が居なければ更に人数が足りていなかっただろうと思う。


 まあ、そのせいもあっての渡部さん、なんだろうけれど流石ロボット、こんな暑い中も文句言わずに作業して真面目――


 ぶしゅぅぅぅん……。


「警告、オーバーヒートが発生しました。緊急排熱きんきゅうはいねつを開始します」


 渡部さんの淡々とした声が聞こえたと思ったら、少しうつむくような姿勢になって、渡部さんの肩辺りががばっと開き、大きな音と共に空気が吹き出した。


 夏だからか、それとも水気が無いからか、蒸気のようなものは見えないけれど、吹き出す空気の付近だけ陽炎かげろうのように揺らめいて見える。


「うわっ、相変わらずすっごい暑そう」


「これで3回目かー。やっぱり、ロボ子ちゃんでもこの暑さはキツイんだねー」


 打ち上げ花火でも見るみたいに、真帆と都紀子が言う。


 まあ、人と同じ形をしているけれど、みゃーちゃんが言うには渡部さんに人間の発汗はっかんと同じような体温調節機能は持ち合わせていないらしいので、基本は犬などと同じように呼吸での体温調節がメインとなっているみたい。


 ただ、それだけでは冷却が間に合わずに温度が上がってしまう場合は、こうやって強制的に換気をするとのことだったけれど、夏場の暑い環境では十分な冷却効果が得られず、頻繁ひんぱんに緊急排熱を繰り返している様子だった。


「使えないとは言わないけどさ、何であの子連れてきたんだろうね。この暑い中に連れてきても可哀想かわいそうだと思うけど」


 真帆の疑問に、今度は事情を知っている私が答える。


「夏場の稼働試験やりたいとかなんとか、みゃーちゃんが言ってたよ」


「みゃー……ああ、あのちっこい子か。ふーん、暑い時期でもちゃんと動くかってこと?」


「うん。後は、比較的摩擦まさつの少ないプールの上でのバランスとか」


「そういうロボットの試験があるってことかねー?」


 デッキブラシをつえ代わりにして、あごを乗せていた都紀子の言葉に、私は「多分」と答える。


 まあ、みゃーちゃんのロボットがそこまでする意味があるのか、とかは私も知らないけれど、こうやって色々試しておくことで、今後に活かせるのだろうと思う。


「おい、小山! まだそっち全然掃除進んでねーじゃねーか。ちゃんとやれよ!」


「そうじゃん! こやまんたち、真面目にやるじゃん!」


 不真面目の一丁目在住の大隅さんに真面目にやれと言われたのは、非常に不服なので真面目にやろう。


 ……いや、もちろん不服というのは冗談じょうだんだけれど。


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