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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第3時限目 日常のお時間 その12

「ええっと……」


 私自身もどう説明すれば良いか分からないけれど、片淵さんと共にさっきの状況を見たまま正木さんたちに話すと、


「そんなことあるんですね」


「はー、そんなことあるんだねえ」


 とほぼ同じ反応が返ってきた。


「というか、勝手に猫ちゃんこっちに来ちゃって実家の人困ってない?」


「確かに……今頃、この子が居ないって騒いでいるかもですね」


 この子、と言うところで頭上に視線を送ると、猫型帽子に擬態しているうちの甘えん坊は大あくびをした。全く本人は……いや、本猫は呑気なんだから。


 でも、本当に実家は大騒ぎしているかもしれない。特に母は私と同じくらいこの子を可愛がっていたはずだし、ついつい甘やかしてばかりだった私には出来なかった躾もしてくれていたし。


 兎にも角にも、正木さんに三毛猫ちゃん(さっきの正木さんの言葉からすると三毛猫のミケちゃん?)を引き渡し、私は妹と母にテオを捕まえたというメールを送って様子を見ることにした。


 ほっとした表情の正木さんはミケちゃんに頬ずりしてから、


「じゃあ、私はミケちゃんを家に戻してきます。小山さんのその子はどうしますか?」


 と私に尋ねる。


「えーっと、私は……どうしようかな」


 買い物に行くのにテオを連れてはいけないし、かと言って寮でテオを飼うわけにもいかないだろうし。


 うーん、とテオを落とさない程度に首を捻っていると、私の携帯電話が鳴り出した。慌てて出ると、


『準、テオが居たって?』


 母からだった。


「うん」


『へー……ああ、そういえば確かにここのところ、行方不明になっていたわね。なるほど、準のところに行っていたのか、うんうん良かった、見つかって』


「ん?」


 何か思ったより淡白な反応。もうちょっと取り乱しているかと思っていたのだけど。


「それでテオなんだけど……」


『んー、ああ、えっと……寮で飼ってみるとか出来ない?』


「……へ?」


『ほら、寮の部屋で……あ、ちょっとごめん、お父さん今日は年休取って休んでて、これから出掛けるの。どうしても重要な用があったら、夜に電話してね。それか綸子に連絡して連れ戻すとか。とにかくよろしく』


「ちょ、ちょっと!」


 ブツッ、という音と共に電話が切れた。


 ……おかしい。


 テオのことについてあまりに反応が雑過ぎるし、さっきの電話を切るのもやけに早かった。まるで話をそれ以上続けたくないと言っているみたいな。


 かと言って今すぐ電話を掛け直しても電話を切られるだろうし、少し日を改めた方が良いかな。夜には電話しても良いって言っていたけれど、何か隠しているようなあの様子からすると、聞きたいことは聞けないだろうから。


「あの、どうでした?」


 私の反応を見ながら、おずおずと尋ねる正木さんに私は苦笑いしながら答えた。


「あ、ああ……えっと、話が終わる前に電話切られちゃいました」


「え?」


「忙しいみたいで、何かあれば妹にって」


「あれ? 準にゃんって妹居るの?」


「はい、居ますよ。1個下の妹が」


 一時期から比べると、かなり疎遠になってしまっていて、稀にメールのやり取りをするくらいだけれど。


「へー、小山さんと似てる?」


 岩崎さんが興味深々といった表情で私を見る。


「んー……どうですかね。目元は似ていると言われたことがありますが、それ以外は……」


「そーなんだ? ふーん、小山さんの妹かあ。あ、身長は高いの?」


「ああ、身長は結構高い方ですね。そういう意味では似ているかも?」


 お父さんは身長がかなり高く、私と同じかそれよりも更に数センチくらい高い。母は工藤さんと同じかそれくらいで小さい方だったから、その辺りは2人とも父親の遺伝子を貰ったみたい。そんなに高くなくて良かったのになあ。


「にゃるほどねー。っとそれはさておき、頭の子はどうするんだい? 放置しておく訳にはいかないよねー」


 片淵さんの言葉に私はうーんと首を捻って、ひとまずの答えを出す。


「妹からメールがまだ返ってきていないんで、メールが返ってくるまでは寮の部屋に置いておこうかなと」


 いつメールが返ってくるか分からないけれど。

 

「寮で……ですか?」


「飼っていいの?」


「いえ、飼うんじゃなくて、妹と連絡が取れるまで一時的に置いておくというだけです」


 というか、流石に寮で長時間飼うことは難しいと思うし。


「うーん……でもまあ何にしても、一旦寮に戻るしかないかもねー」


「そうですね」


「あ、ミケちゃんを家に連れて帰ったら、猫用のトイレとか持ってきましょうか? ペットシーツとかあると便利だと思いますし」


 正木さんが抱っこしていた三毛猫ちゃんの肉球を触りながら言う。


「そうして頂けると助かります」


「とすると、今日の買い物は小物じゃなくてペット用品だね!」


「いえ、ですので寮で飼う訳ではなくてですね……」


「えー? でも爪とぎとか出来る場所無いと、部屋の中バリバリするって聞いたことあるけど」


「……あー」


 確かにテオも実家では良く爪とぎしていた覚えがあるし、ちゃんと用意しておかないと、柱を駄目にしそう。猫がOKのマンションが犬OKのマンションより少ないのは、柱や壁に爪とぎされてしまうおそれがあるからだとか聞いたことはあるけれど、確かに言われてみればそうかもと思った覚えがある。


「でも準にゃんはこの子置いたまま、買い物行くのは厳しいよね。とすると何を買えば良いか分かりそうな紀子ちんとアタシ辺りがひとっ走りして買ってきて、真帆ちんと準ちんはテオちゃんの面倒見ておくのが良さげかな?」


「ううむ、そうですね……」


 確かに片淵さんの言う案が1番かもしれない。

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