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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第16時限目 勇気のお時間 その31

 おどろいていたのは私だけではなく、隣のポンコツお姉さん系クラスメイトもだった。


華夜かよ! ちょ、ちょっと、流石にここでは……」


「個室だから大丈夫」


「大丈夫じゃないよ!」


 のしかかられた私はそう反論するのだけれど、華夜は意にかいさず、


「まあまあ……」


 と言いながら手際てぎわよく、私の服のボタンを外していって、私はあっさりと上半身裸になってしまった。


「じゃあ、きますねー」


 そう言いながら、華夜は手に持っていたタオルで私の全身をくまなく確認しつつ、本当に私の体を拭いていく。


 私をからかう口実こうじつのつもりで脱がそうとしていたわけではなく、少しだけ安心? していたら、


「……」


 と何故か急に無言になった。


 その華夜の指先が触れていたのは、今回の事故で私の腕に出来た、唯一ゆいいつと言っていいくらいの目立つ傷。


 あまりにも急な変わりようだったから、


「ど、どうしたの?」


 と思わず尋ねたのだけれど、それには答えず、しばらく私の体を確認した後に、ぎゅう! と抱きついてきた。


「か、華夜……!?」


「……良かった」


 ああ、なるほど。


 服を脱がせたのは傷が無いかを確認するためだったんだ。


「ちょっとだけ良くないけど、良かった」


 抱きつかれているから顔は見えないけれど、少なくとも声は安堵あんどの色が濃く出ていたから、どうやら本気で心配してくれていたらしいということだけは良く分かった。


 そう言葉を繰り返した華夜に、私も少しだけ表情をゆるめた。


 ……変な行動を取ったりするから、掴みどころがないと感じることはあるけれど、華夜も華夜なりに私のことを心配してくれていたのだろう。


 太田さんとか、みゃーちゃんとはまた違った路線で、華夜もあまり素直じゃないから、こういうなぞの行動を取るのにも意味はあるのかもしれない。


「もう……華夜ったら」


 最初はどうやら、千華留ちかる意図いとを理解した様子で苦笑いしていた。


「でも、結構クラスでも小山さんのこと、話題になっていましたよ」


「そうなんですか?」


「ええ。最初は大事故だったから集中治療室とかに入って会えないかも、みたいなうわさも出ていましたからね……。まあ、無事が分かったら、今度は皆が小山さんのところに押しかけたって話を聞いていたので、それはそれでちょっと大変そうだなと思いました」


「あはは……」


 まあ、確かに少しは大変だったけれど、と付け加えようか考えていたら、まだ私の上に乗っかっていた華夜は、


「あ、でも上半身は大丈夫だったけど下半身が大丈夫じゃないかもしれな――」


 と言いつつ、ズボンに手を掛けたから、


「調子に乗りすぎ」


 ちょっぷ! と華夜の頭に手刀を落としたら、半泣きで私をうらめしそうに見た。


「そ、そこは大丈夫だからっ」


「……」


 これも照れ隠しの行動なのだろうとは思うけれど、いくらなんでもやりすぎ。


「でも、汗は下半身も――」


「汗かいてても自分でやるから」


「あ、背中、汗かいてますね。拭きましょー」


「ってちょっと、千華留まで!?」


 見てるだけだと思っていた千華留まで汗拭き隊に入隊したらしく、ベッドの上に上がって、私の背後に回る。


「いえいえ、汗かいてますしねー」


「いや、それは華夜が無理やり汗を拭こうとするからむしろ汗をかいて……あ、こら」


 と千華留の方に意識を向けたら、これ幸いとまた華夜が下半身に手をばそうとするから私は防戦一方ぼうせんいっぽう


 もう、しっちゃかめっちゃかになっていたところで、病室の入り口からの視線に気づき、私は硬直こうちょくした。


「……何してんの」


 妹の綸子りんずが、何かのふくろ片手にあきれ顔で立っていた。


「いや、あのっ、これは……」


 私がなんと言い訳すべきかと言葉を探している間に、


「誰?」


 と華夜が首をかしげた。


 あれ、まだ会ってなかったっけ。


 華夜の反応に、こほんと咳払せきばらいをしてから、綸子が頭を下げた。


「小山綸子、小山準の妹です。おに……お姉ちゃんがお世話になってます」


 事情を知っている綸子が頭を下げながら”姉”とわざわざ言い直してくれたのだけれど、


「あ、妹さんですか。こんにちは、園村千華留です」


 と能天気に、大きな動作で挨拶あいさつする千華留、そして、


「……工藤華夜、よろしく」


 淡々(たんたん)と返事をする華夜。


 私の介護? をしている2人をじゅんに見た後、


「で、お取り込み中、悪いんだけど」


 とジト目で私をにらむ。


「すみません……」


 いや、これ私のせい? と思わないでも無いけれど、こういうときはあやまっておいた方が丸く収まるはず。


「別にあやまらなくてもいいけど……で、これ。服と下着、足りてないだろうから持ってきた」


 綸子から受け取った不透明な袋には、服と下着が数着入っていた。


「ありがとう」


 もう太田さんに持ってきてもらったから要らない、とは流石に言えないし、手元の服も1着だけだったから予備はあった方がいい、と思う。


 ただ、中身を見て。


「あれ、でもこれ、家に置いてきた服じゃないし、綸子がお小遣いで買ったんだったら、お金――」


「そういうのはいいから」


 腕を組んで、ふんと鼻息あらく言い返した。


「それより、そのお2人との関係は?」


「嫁1号、2号です」


「違う!」


 当たり前のようにそう言い放った華夜を全力で否定する。


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