表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

423/961

第16時限目 勇気のお時間 その24

「……まあ、そんなところにゃ」


 プリンをもぐもぐしてから、みゃーちゃんがそう言った。


「準はもっと2人に居て欲しかったにゃ?」


 みゃーちゃんが、何故かそんなことを尋ねた。


 うーん、と私は悩んでから、


「難しいところかな。もちろん、もっと居て欲しい気持ちはあったけど、実は性別をいつわって学校に通っていることを、まだ2人に打ち明けられないから、むしろすぐに帰ってしまって良かったかなって」


「お父さんとお母さんには話すつもりにゃ?」


「うん、いつかは話さなきゃいけない、とは思ってる。でも、まだ決心がつかなくて」


 学校の方が楽しい、と思えるようになったのは、私の中での大きな変化だと思っている。


 でも、それと同時にうそいたままで良いのか、というのも、ずっと心のしこりとして残っている。


 ある意味、ここに運び込まれたとき、スカートをいていたってことがバレた時点が、1番の切り出すタイミングだった気がするけれど、私も全然心の準備が出来ていなかった。


 だから……仕方がない。


 そう、言い訳するしか無かった。


「準は今の学校、嫌いにゃ?」


「……ううん。好きだよ」


「だったら、別に無理して言う必要ないにゃ」


「でも、ほら……着替えとか、トイレとか、実は男が混ざっていたなんて知ったら、絶対に怒られるとかじゃ済まない話だし」


 少なくとも、自分が教えられていない側であったとすれば、いい気持ちはしないと思う。


 自分が嫌なことは他人にするな、というのは至極しごく当然のことだと思うし。


「それはそうだにゃ。でも、こんな変なタイミングで転校したら、むしろ注目されすぎて、転校する前に誰かが準のことを気づいたり、バラしてしまうかもしれないにゃ」


「それは……」


 私が男だと知っている人はまだそう多くないし、今知っている範囲ではバラしそうな人は居ない……いや、星野さんはもしかすると……流石にないと思いたいけれど。


「だから、むしろ何事もなく、穏便に卒業するのも手かもしれないにゃ」


 その選択肢せんたくしは、確かになしではない、と思うけれど。


「みゃーは学校が嫌いだった、というか嫌いになって、逃げちゃったにゃ。準も同じだって言ってたけど、少なくとも今の学校で楽しいって思えるなら、きっと良いことだと思うにゃ」


 でも、と私は明確に返す言葉を探していると、みゃーちゃんがまだ続けた。


「みゃーは皆に天才だってずっと言われてきて、調子に乗ってたにゃ。だけど……ううん、だから、皆と一緒に勉強するのは出来なくなってしまったにゃ」


「……」


 私はみゃーちゃんの言葉をさえぎらないように沈黙を続ける。


「準も知ってるにゃ? みゃーが天才少女だって、テレビとかにいっぱい出てた頃のこと」


「まあ、覚えていたのはちょっと変わった名前だなって思ったことと、テレビに出ていた、ってことだけではあるんだけどね。中学のときも寮の大広間に大きなテレビが1台だけあって、そこで点けっぱなしになってたときに流れたニュースで見た覚えがある、っていう程度だけど」


「それを覚えてるだけでも十分にゃ。そんなニュースに出てるみゃーを見た準は」


 みゃーちゃんが、言葉を区切ってから、私を真摯しんしな目で見つめた。


「どう見えたにゃ?」


「……凄いと思ったよ」


 みゃーちゃんが言っていた、フラッシュ暗算がどうこう、というのは正直あまり覚えていないけれど、私よりもずっと幼い女の子が天才と呼ばれている姿は単純にすごいという以外になかった。


「……本当に、それだけにゃ?」


 私の言葉の裏を見透みすかすように、そう言った。


「……」


 いや。


「……うらやましいという思いもあった、かな」


 つまり、ねたみの感情。


 中学の頃も、やることがあまりなかったから勉強をよくしていたし、テストでも結構上位に居ることが多かった。


 でも、そんなテスト結果を持って帰っても、められることはほとんど無かった。


 別にお父さんもお母さんも、私を邪険じゃけんあつかおうとしていたわけではないと思うし、多分みゃーちゃんが言っていた通り、お仕事で引っ張りだこだったから、疲れていただけなのだろうと思う。


 ただ、それでも自分を見てもらえないことは、ただただ悲しかった。


「そうだと思うにゃ。実際、周りも最初はテレビに出られていいなー、みたいなだけだったのが、少しずつ羨ましいとか、ずるいとか、そんな言葉に変わっていったにゃ」


 みゃーちゃんは、食べ終えたプリンなんとかの容器を机に置いてから、さびしそうにそう言った。


「でも、みゃーも悪いにゃ。最初はお父さんとお母さんにも褒められてたから、みゃー自身も自慢してたにゃ。こんなこと簡単だとか、誰でも出来るとか、そういうことをいっぱい言っちゃったにゃ。だから、皆近づかなくなったにゃ」


「……うん」


 正直、気持ちは分かる。


 私だって、親に褒められていれば、同じようなことになっていたおそれは十分にある。


「みゃーと準は、多分似た者同士だと思うにゃ」


「うん、私もそれは思う」


 多分、妹分いもうとぶん的な可愛さもあるけれど、それ以上にみゃーちゃんを気に掛けるのは、きっと自分自身を重ねているからというのもあると思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ