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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第16時限目 勇気のお時間 その20

「ありがとう……というのも変だけれど、心配してくれたのはうれしいです」


「あ、う……はい」


 正木さんが少し混乱した表情を見せたけれど、しばらくして表情を明るいものに変えてくれたから、私もほっとした。


「うーん、でもこんだけ元気そうなら、遊ぶ道具とか持ってくれば良かった。聞いた話からしたら、そもそも会えるかどうか怪しいって話だったから、なんにも持ってこなかったんだよね」


「あー、そだねー。学校からそのまま直行だったしねー」


 まあ病院に遊び道具を持ち込むというのはちょっと……と思ったけれど、トランプとかくらいなら大丈夫なのかな?


 ……いや、ここでトランプなんて始めたら、今以上に騒がしくなって病室から追い出されそう。


「何にも無かったなら良かった。それなら間に合う……いや、でも流石に病み上がりは……」


「ん? 間に合うって?」


 間に合う、と言われて私が最初に思い浮かんだのは、文化祭での劇までには学校に戻れる、という意味かと思ったのだけれど、良く考えたら真帆はその事情を知らないはず。


 じゃあ一体……と思ったのだけれど、それはちょっと想像していなかったものだった。


「プールびらきが来月からでしょ? それで、プールが始まる前に清掃が当然あるんだけど、それの参加者を募集してるんだって」


「清掃……」


 真帆の言葉に、私よりも先に反応したのは大隅さんと中居さん。


「そんな話、してたか?」


「覚えてないじゃん?」


 そう言って、大隅さんと中居さんが顔を見合わせて首を傾げた。


 ……参加すると言い出すのかと思えば、そもそも聞いていなかったというね。


「あんたらねえ……」


「にゃはは。まあ、絶対に行かなきゃいけないわけじゃないし、本来なら聞き流してもいい話なんだけどねー」


 身もふたもない言い方の都紀子に、ちょっとだけ呆れ混じりで言う真帆。


「まあ、そうなんだけどさ。で、それで、土曜日に出なきゃいけないけど、清掃が終わったら水張りして、最初にプールで泳げるし、誰か参加しないかって先生がさ」


「先生……って咲野先生?」


「うん。今年のプール清掃の担当が咲野先生らしくて、クラスから誰か出さなきゃいけないらしいんだけど、ほとんどばつゲームみたいなもんだからさ。全然参加者集まんなくて困ってるんだって」


 真帆が溜息ためいきとともにそう言うけれど、


「真帆、やっぱり小山さんには悪いよ。病み上がりなんだし」


 正木さんが真帆に言う。


「うーん、まあ……そうだよねえ」


「あ、いや、多分体の方は大丈夫だと思うんだけど。退院はしてると思うし」


「でも、再来週末くらいなので……」


「再来週かあ」


 確かに、本当にすぐだなあ。


「あ、だったら、今の段階では断定できないから、先生に体動かしたりしても問題ないって言われたら正式に参加するよ。私としても、これで実はやっぱり入院伸ばさなきゃいけませんってなったら申し訳ないし」


「オッケー。じゃあ――」


「おい、それならあたしが参加する」


 私と真帆のやり取りを見て、大隅さんがそう割り込んだ。


「大隅が?」


「元はと言えば、小山が怪我したのはあたしとチビをかばったからだ。だから、小山が無理に参加するくらいなら、あたしが参加する」


「あ、じゃあアタシも参加するじゃん」


 大隅さんに呼応こおうするように、中居さんが手を挙げた。


「あ、いや、別にそこまでしてもらわなくても……」


「あたしらがやるって言ってんだから、小山は黙ってろ」


「……はい」


 怒られた。


 それだけ責任を感じているのだろうと思うけれど、私としては結局取り返しのつかない被害は無かったと言って良いのだから、そこまで気にむことではないと思うのだけれど、大隅さんと中居さんがそこまで言ってくれるのに拒否きょひするのもそれはそれでどうかと思うし。


「んじゃ、大隅と中居が参加ね」


「ああ」


「おけまるー」


 ……微妙な空気が流れた。


 こ、これ本当に大丈夫かな……?


「あ、そうだ。あの、退院出来たら、行くだけ行っていいかな?」


「ん?」


 真帆が理解できないという反応を示したから、ちゃんと説明する。


「掃除に参加出来るかは分からないけど、ほら……家に居ても暇だから、見に行くっていうか」


「そう言いながら、結局手伝っちゃうんじゃない?」


 真帆がいぶかしむような目をこちらに向けて言うけれど、


「手伝うかどうかはさておき……ほら、寮の部屋に居ても勉強以外にやることないから、ちょっと遊びに行きたいなって」


 と私が言うと、少し考えた真帆が、


「まあ、良いけど」


 とオーケーを出してくれた。


 よし、これで一安心かな。


「……準にゃん、あの2人と真帆ちんの間を取り持とうとしてるねー?」


 すすっと、ベッド横に近づいてきた都紀子が、私にそっと耳打ちする。


「え、あ、まあ……」


 あれ、そんなに分かりやすかったかな?


「んふふー、まあお見通しだねー」


 花丸をもらったみたいな満面の笑みで、都紀子はそう答えた。


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