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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第16時限目 勇気のお時間 その14

「だから、今日はここでもうちょっと遊んでく」


「おう、そんなら遊ぶか! 小山と晴海はるみも来いよ」


「うん」


「りょ!」


 大隅さんにさそわれるがままに、私たちは健一郎君としばらく時間を過ごしていたのだけれど。


 ピロリンだかポロロンだかみたいな電子音がひびいたところで、健一郎君が「タンマ!」と言って、ボールを止めた。


「……あ、コミュー来た。げ、今日は1人でご飯食べろって」


 ポケットからスマホを取り出した健一郎君が、画面を見てそううめいた。


 今時いまどきは小学校くらいの子にもスマホ持たせてるんだなあ、なんて別なことに気を取られていると、


「今日はもう帰るわ。じゃ、また明日!」


 と片手を上げてから、健一郎君はサッカーボールをドリブルしながら公園を出ていく。


「おい、ケン! ドリブルしながら外に出んな! 危ないぞ!」


 メガホンみたいに両手を口元に当てて、大隅さんが大声を出すと、


「大丈夫だって!」


 と笑いながら、健一郎君が遠ざかっていく。


「ったく、あいつは……」


 ぽりぽり、と頭をいていた大隅さんだったのだけれど、


「ま、心配しすぎじゃん?」


 と中居さんに言われて、「それもそうか」と相好そうごうくずした。


「んじゃ、あたしらもそろそろ帰るかー」


「おけー」


 大隅さんの言葉を合図に、私たちは立ち上がった。


 スカートに付いたほこりを払いつつ、私は1つ気になったからたずねてみる。


「こうやって遊ぶのって、何曜日とか決めてるの?」


「ん? あー、まあ金曜日以外は大概たいがい居るな。親が金曜日だけは早く帰ってくるんだってよ。だが、何でだ?」


 同じく、スカートをはたいていた大隅さんが不思議そうな顔をする。


「ああ、曜日が決まってるなら、折角せっかくだからバイトの日程合わせようかなって」


「そういうことか。それなら心配いらねーよ。バイト終わりに来るだけでもあいつら喜ぶぜ」


 へへっ、と楽しそうに笑う大隅さんだったのだけれど。


「ふーん、こやまんって意外と子供好きじゃん?」


「ん? まあ、嫌いではないけど……そういう言われ方をすると、素直にうんと言いづらいというか」


 私が複雑な感情の目で返すと、頭の上で手を組んで、中居さんが笑う。


「あっははー、いやホラ、別に変な意味じゃなくてさ。前にうちの教室に、ちっちゃい子が泣きながらきたじゃん?」


「ちっちゃい子が泣きながら……あ」


 中居さんの話がみゃーちゃんのことだと思いいたるのにさほど時間は必要なかった。


「あのときもさー、こやまん、何だかんだ理由付けて、最初に教室出てったじゃん? よっぽど、気になる系のコだったのかなーって」


「確かにな」


 中居さんの言葉に、何か反論しようかと思っていたら、大隅さんも割り込んでくる。


「そういやあのちっこいヤツって、お前の知り合いだったのか?」


「うん、まあ、そんなところかな」


「あのコって確か、地下室在住系謎スペシャル盛り黒猫女子じゃん?」


「……え、な、なんて?」


 拾える単語だけ拾ってみた感じでは、何となく中居さんの言葉は間違ってはいない気はするけれど、装飾そうしょく付けすぎて良く分からない感じになっていた。


「あ、分かんなかったら、学校の地下に住んでる子ってことでー」


「かなり略したね……まあ、うん、そう」


「結構変わってて、マジヤバレベルの懐かなさだってってうわさだったけど、すでにこやまんに懐いてたかー。案外、良いママになるかもねー……って、どっちかというとパパっぽさの方があるけど」


 むふふ、と中居さんが鼻っつらをギリギリかすめるような危険球みたいな言葉を投げてくるから、私はジト目を送るのだけれど、


「確かにな。小山はどっちかってーと、オカン的なタイプというよりは、休日に一緒に遊んでやる親父っぽい感じあるよな」


 と大隅さんまでうなずく。


「いやいや、そんなことはないでしょ!?」


 私は必死に反論するけれど、でも反論するってことは、自分が男ではなく女だと主張するのと同じわけで……いや、それはそれでどうなの?


「ま、そう言いつつ、星っちも他人ひとのこと言えないけどねー」


 私がなやんでいる横で、中居さんの茶化ちゃかすような言葉に、


「なんだとー!?」


 と腹を立てる大隅さんが、笑い8割、怒り2割くらいの表情で中居さんにつかみかかろうとする。


「きゃー、星っちにおそわれるー」


 きゃいきゃい言いながら、中居さんがちゃっかり自分のかばんを持って逃げ出す。


「あ、おいこら、待ちやがれ!」


 それを追いかける大隅さん。


 ……は良いんだけど、鞄、鞄!


「ちょ、ちょっと大隅さん! 鞄忘れてるよ!」


 私は大隅さんの鞄を引っつかんで、2人を追いかける。


 程なくして、大きな交差点の手前で2人が立ち止まっているのが見えた。


 ようやく追いついた……と思ったら、先に出ていった2人の隙間すきまから健一郎君の姿が見えた。


「何だ、コンビニ弁当かよ。もちっと、栄養取らにゃいかんぞ」


「いーじゃんか。毎日じゃねーんだし!」


 ぐしぐしと大隅さんに頭をでられつつ、口をとがらせて反論する健一郎君。


 健一郎君の手にぶら下げてある袋は、どうやらコンビニで買ったお弁当みたい。


「でも、良くお金持ってたじゃん?」


 中居さんの言葉に、得意げに言う健一郎君。


「ま、こういうことも結構多いから、ちゃんとお金持ってきてるんだぜ!」


 そんなことを言った健一郎君に、大隅さんが、


「お、偉いじゃねーか」


 と撫でるスピードを上げたところで、ようやく大隅さんに並んだ。


「大隅さん、鞄」


「ん? ……ああ、すまねえな、小山」


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