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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第16時限目 勇気のお時間 その6

「……眠い」


 まゆちゃんオススメの魔法少女アニメを見ていたところに、花乃亜かのあちゃんや戻ってきた華夜まで集まったことにより、何でもありの動画巡りとなってしまって、結局夕食もはさみつつ、11時がもうすぐそこ、というくらいまで上映会が続いてしまった。


 流石に寮生全員集合したら、いくら何でも繭ちゃんのタブレット端末でも見るのは大変だよね……っていうか、左右のまゆちゃんと太田さんは変わらず、ひざの上に花乃亜ちゃん、私の真後ろから顔をのぞかせる形で華夜、という完全包囲かんぜんほうい状態で私がまともに動画なんか見てられないでしょう!?


 まあ、それはさておき、私がこの画面サイズで、この人数は難しいから……と上手い具合に上映会を終わらせる方向へ話を進めようと思ったら、華夜がスマホの画面をテレビに表示する方法がある、とか言い出し、自分の持っていたスマホを使って、本当に動画を再生し始めてしまったからさあ大変。


 私の監禁状態は解除されたとはいえ、椅子で近場に陣取じんどられるのは変わらないまま上映会は続き、気づいたときには……という感じ。


 そこからお風呂に、歯磨きに……となって、結局眠ったのは日が変わるか変わらないかの頃だった。


 しかし、華夜もあまりこういうの得意ではないと思っていたけれど、何故知っているのかと思ったら、


「……秘密」


 といつものトーンではぐらかされた、むう……。


「だ、大丈夫ですか……?」


 久しぶりに、あまり授業内容が頭に入ってこなかったなあ、と思いつつ机にしていた私に対して、心配そうに声を掛けてきてくれた正木まさきさん。


「あ、はい、大丈夫です……」


 あまり大丈夫ではないけれど、心配掛けさせるのも申し訳ないから、私はあわてて体を起こした。


「昨晩、何かあったんですか?」


「ああ、えっと……」


 昨日の状況について、私が大まかに話をすると、


「あ、ワンダーガールズ、私も好きでした。といっても、もう内容はよく覚えていないんですが……あ、確かあのアニメで出てくる変身バトン、昔お父さんに買ってもらった覚えがあります」


 と正木さんは笑って答えた。


 あのアニメ、そんなに有名だったのかな?


 小学校の頃、妹が何かそういうのを見ていた記憶はあるけれど、どんなアニメだったかは全く思い出せないなあ。


「小山さんはどんな番組が好きだったとか、ありますか?」


「うーん……それが、昔からあまりテレビは見ない方だったので……」


「そういえば、今の部屋にも無いんでしたよね? あ、私の部屋も無いですけど、リビングのテレビで見たりとか……」


「なかった……ですね。どちらかというと、テレビを見るよりも本を読む方が好きだったので、足繁あししげく図書館にかよっていた記憶はあります」


 というか、それと勉強していた思い出しかない……というのが正しいかもしれない。


 あれ、私って、この格好かっこうになる前から、あまりまともな学生生活送ってない……!?


 勝手に意気消沈いきしょうちんしていたら、


「どうしました?」


 と不安そうな表情で正木さんが私に尋ねたから、また慌てて首を横に振って答えた。


 心配掛けないようにするためにしゃべっていたはずなのに、むしろ心配させていては意味がない。


「いやっ、大したことでは……」


「それにしては何だかさびしそうでしたよ? 何かあるなら、ちゃんと言ってください」


 むう、としかるように正木さんが言うから、私は笑って答えた。


「いえ、本当に大したことではないです。学生生活を振り返ってみると、今まであまり学生らしいことって何もしていなかったなって」


「学生らしいこと……ですか?」


「ええ。友達と何処かに出掛けたり、友達の家に誘われたり……そんなことです」


 中学では遊びに出掛けたことが無いわけではなかったはずだけれど、周りは寮生が多かったから、家に遊びに行くことはなかったっけ。


 高校は……言わずもがな。


「そうですか……」


 私の残念さが感染うつってしまったのか、正木さんも少し残念そうな表情をしたけれど、ぐっと拳を握って、


「で、では、今年の夏は海に行きましょうっ!」


 と力強く言った。


 いつもは控えめな正木さんの、ぐいぐい来る様子に少しだけ面食めんくらってしまったけれど、私は正木さんの言葉を反芻はんすうする。


「海……ですか」


 多分、中学の頃に行ったっきりじゃないかな?


 ……いいなあ、海かあ。


「いいですね……ただ、1つ問題が」


「問題、ですか?」


 私の言葉に、きょとんとした正木さん。


「あの、私、あまり泳げなくて……」


「えっ?」


 正木さんが驚いたように言う。


「夏場、それも学校でプールの時間に泳ぐだけだったから、あまり上達しなくて……ですね。年に何度か……いえ、せめて1年に1回くらいは海に行っていたら、もう少し上手になったのかもしれないですが」


 ほおきながら私がそう言うと、急に正木さんが私の両手を取った。


「お、同じですっ!」


「え、えっ?」


 さっき正木さんが投げてきた疑問符を、全く同じように投げ返した私。


「わ、私も……その、泳げなくて……だから、海に行っても全然楽しくなくてっ」


「そう、だったんですか」


 まさか、正木さんも同じだとは思わなかった。


「なので、あの……まだプール開きももう少し先なので、今すぐには無理ですが、皆には内緒で、夏までに練習しに行きませんか?」


「はい、いいですよ……あ、でも」


 私はまた、ちょっと困った表情を、正木さんに向けた。


「先生になってくれる人が居ないと、上達しないような……」


「あ、それは大丈夫です。1人、先生になってくれる人に心当たりがあるのでっ」


 にっこりと、正木さんがそう答えた。


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