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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第15時限目 図書のお時間 その17

 私の態度が正解だったのかはさておき、


「……そうですか。では、中へどうぞ」


 といった感じで、追い返されないということは六名むつなさんに合わせてくれる、ということみたい。


 まあ、歓迎されているかどうかはさておき。


 未だにばくばく鳴る心臓を落ち着けるために深呼吸しながら、私は少女……いや女性? の後ろを付いていく。


 多分、大隅さんか中居さん辺りが居たら、びくびくしすぎとか小心者とか言われそうだけれど。


 でもね?


 1/2とまでは言わないけど、向かい合うと顔が私のお腹の少し上辺りに顔が来るような身長の人なのに、下から見上げられたときのすごみが……こう……怖いんですよ?


 見上げたときの圧迫感あっぱくかんがとてつもないんですよ?


 今、こうやって家に招かれているものの、何か間違えたらその時点で刺されてゲームオーバーとなっても仕方がない、と心配しても仕方がないことだと思う。


 玄関の引き戸を開けて、低身長お姉さん? が入った後、


「お、お邪魔します……」


 と一言入れてから入り、すぐに自分の靴を整えた。


 内装も外装同様、きっちり和風な雰囲気が漂っていて、六名さん含めて3、4人で住むにしても結構な広さの平屋ひらやだった。


 田舎のおじいちゃん、おばあちゃんちから比べれば一回ひとまわり……いや、二回ふたまわりくらい大きい気がする。


 ふすまを開けると、ほぼ座敷童子ざしきわらし叔母おばさんとおぼしき人は、部屋の中でソファにちょこんと座っていた女の子に声を掛けた。


花乃亜かのあ、お客さん」


 このどこからどう見ても和風統一の中で、普通に洋服でテレビを見ていた少女は、名前を呼ばれてこちらを見た。


 ソファと薄型テレビはあるんだ、なんてちょっとだけ安心したのはさておき、


「……どうしたの」


 とクラスメイトがテレビから私に視線を向けてそう言った。


「あ、あの……お届け物……です。進路希望面談の事前と事後課題」


 肩から下げていたかばんたたみの上に置いて、咲野先生から受け取った進路希望面談用資料を手渡した。


「……?」


 あれ、咲野先生が話していた気がするけれど、説明しないと駄目だったかな?


「咲野先生がやっている進路希望面談なのだけれど、明日、あの、順番的には明日六名さんに回ってくるから、この紙の上に面談で聞きたい内容や自分が抱えている不安を書いておいて欲しいと」


「……」


 思い出してくれたのか、こくりとうなずいた六名さんに、私はほっと胸をで下ろした。


 よし、任務完了、これより帰投きとうします。


「じゃ、じゃあ私はこれで……」


 そう言って、私は席を立とうとした、のだけれど。


「なんですか、客人向けのお茶のほどこしも受けないというつもりですか?」


 冷ややかな声に振り返ると、いつの間にか居なくなったと思ったさっきの叔母さん? と思われる女性がお盆に湯呑ゆのみをせて持ってきたところだった。


 その瞳には苛立いらだちか怒りに似た感情の揺らぎが見えた、気がする。


 GAME OVER。


「え、あ、いえ……」


「……」


「あ、あの、い、頂きます……」


 と、とりあえず、なんとか死亡回避は出来たみたい。


 そりゃあ、へびにらまれたらかえるも立ちすくむよね、って少し蛙に同情しつつ、上げかけた腰をすすすっ、と下げて座り直し、私はローテーブル……いや、この場合はちょっと広めのちゃぶ台かな? その前に座った。


「どうぞ……それと、座布団も」


「あ、ありがとうございます……」


 とことん心がこもっている感じのない声ではあるけれど、一応気を利かせた言葉を掛けてくれている。


 でも、威圧いあつ感が半端ない女性と、無言でテレビに戻った六名さんに囲まれて飲む私のお茶は、苦い。


 ……いや、ホントに苦い。


 えっと、苦すぎませんか?


 ドジっ子が間違ってお茶っ葉を大量投入したけど、勿体もったいないからそのまま入れてしまったんじゃないかってくらい。


 で、でも、これが六名家……いや、静野家しずのけ? では当たり前なのかもしれないから、飲んで認めてもらわないと――


「叔母さん、苦い」


「おや? ちょっとお茶っ葉入れすぎましたか」


 やっぱり入れ過ぎやないかーい!


 そして、ちょっとどころじゃないやないかーい!


 ……ご、ごほん。


 思わず脳内で、実に大げさな態度でツッコミを入れるイメージをしてしまった。


 自分でもこんなキャラだっけ? と思ってしまうくらいに困惑こんわくしたから仕方がないけれど、態度に出さなかったのはよく頑張がんばった方だと思う。


「申し訳ない、入れ直そう」


 そう言って、全員の湯呑みごと引っ込めた女性。


 ふ、ふう……良かった。


 このまま、口の中がしぶみと苦味に占拠せんきょされ、しばらくご飯を食べても何の味もしない不毛な大地へ変わってしまうところだった。


「……小山さん。言いたいことがあったら、ちゃんと言わないと駄目。叔母さん、ああ見えて、テンションが上がると変なドジするから」


「……」


 えっと、これはあれかな?


 いつも無言の六名さんが言うということがギャグ、みたいなそういうツッコミを入れて欲しいということかな?


 後、もう1つ聞きたい。


 ……六名さんの叔母さん、あれでテンションが高いの?


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