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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第15時限目 図書のお時間 その13

 みゃーちゃんはさておき、六名むつなさんがみゃーちゃんに張り合う意味が分からないし。


 ……というか今更だけれど、こういうプライベートな話を他の子に教えるというのは駄目じゃないだろうか、一般常識として。


 ただ、私の心配をよそに、3人にとっては六名さんのキャラクターイメージがどうこうというよりも、もっと別の部分に興味がいたらしい。


「……」


「膝枕は聞いたことあるけど、膝の上に座るって初めて聞いた」


「なるほど、そうかー」


 思い思いの反応……そしてその中で、うんうんと頷きながら、自然に私の膝へ座る都紀子ときこ


「こんな感じというわけかー」


「いや、まあそうなんだけど……何故、今座ったの?」


「ありゃ? 六名さんには良くて、アタシには駄目だったー?」


 にひひ、と満面の笑みで尋ねる都紀子。


「別に駄目というわけではないんだけれど……」


 単純にこっ恥ずかしいというか、なんというか。


「にゃっはっは。ほらまあ、実際に座ってみたら何か分かるかもしんないなーと思ったからねー」


 悪びれもせず、そう言った都紀子が私にもたれかかって、髪をさらりと動かす。


 ふと、シャンプーのいい香りがして、ちょっとドキッとしてしまった。


「で、何か分かった?」


 女子高生同士の膝乗りを初めて目撃して呆れ顔だった真帆の言葉に、都紀子が返した言葉はこれだった。


「んー、準にゃんの膝は広いから、結構座りやすい!」


「いや、座り心地が良いとかじゃないんかいっ」


 大袈裟おおげさな突っ込みを入れる真帆にまた笑顔を返し、都紀子は、


「……ので、これは皆が座っても仕方がないねー」


 という迷推理まで残す。


「マジで? んじゃあたしも――」


 私の机の前にしゃがみこんでいた真帆が立ち上がったところで、さえぎるようなチャイムの音。


「ぐぬぬ……、まあいいか」


「にゃっはっは、残念だったねー」


 そう言って……何故か私を見た。


 いや、見るのはこっちじゃなくて……何となく言いたいことは予測出来るけれど。


 あはは、と乾いた笑いを返した私が、ふうと溜息を吐くともう1つ、別の視線に気づいた。


「ん……?」


 隣に居るのは正木さんだけのはず、と思って顔を向けると、隣の席のクラスメイトは慌てたように教科書を開いて視線を逸した。


 あの、正木さん、教科書反対ですよ? というあまりにもベタなネタをやっていたことについては突っ込みを入れなかったけれど、何故私を見ていたのか。


 ……いや、まさかね?


 次の休み時間には、真帆がもう六名さんの件は忘れてしまっていたようで、そうすると流れ的に椅子取りゲームも発生しなかった。


 うん、心の安寧あんねいが保たれて良かった。


 ……ちょっと期待したなんて、ない。


 それはそれとして、私にとって六名さんの話題はまだ終わっていない。


 とりあえず、皆から聞く限り、六名さんは華夜かそれ以上に謎キャラだということしか分からなかったけれど、少なくともテオ……というか猫が好きだということだけは良く分かる。


 とすると、やっぱり猫系の話題……そういえば、バイト先の近くで猫カフェがもうすぐオープンするとかしないとか、そんな話を聞いたっけ。


 そういう話題で地道に攻めたら、少しくらいは話をしてくれるかもしれない。


 いや、攻めるって言い方もおかしいけれど。


 あの可愛がり方……そういえば、他の動物はどうなんだろう。


 猫以外だと、犬とか、うさぎとか。


 いや、実はこっそりハムスターとかを飼っていたり。


 ……ああ、何だ。


 冷静に考えてみれば、意外と話題はあるじゃない。


 どうせ返事してくれないだろう、って思っていたから、自分自身でブレーキを掛けていたのかもしれない。


 よし、リベンジだ!


 ……と思っていたら。


「そっか。そういえば、今日は金曜日か……」


 六名さんは、毎回土日になるとぱたりと来なくなる。


 正確には金曜日の夜から日曜日の夕方くらいまで。


 六名さんが毎日来るようになった最初の土曜日、あれだけ来ていた六名さんが何故か来なくなって、何かあったんじゃないかとそわそわしてしまった。


 もう飽きたから来なくなったのかなとか、何か悪いことしたかな、とか色々思いが巡って、寂しいやら安心したやらだったけれど、続いて土曜日の夜にも来なかったから、ああやっぱり飽きたのかなと自己完結していた……のだけれど。


 更に翌日、日曜日の夜になると六名さんは再び現れ、来れなかった分だけ積もった愛情を取り戻すがごとく、テオをわしゃくり回していた。


 あ、ちなみにテオはそれだけ愛情を注がれても、ちゃんとお客様に猫キックしてはいけないと理解しているのか、落ち着いた様子で撫でられてた、偉い。


 ただ、六名さんからの歓待かんたいを十二分に受け終わった後、しばらくほっといてくれとでも言いたげに離れて寝転がっていたけれど。


 まあそれはさておき、六名さんは金曜日の夜からどこかに行って、日曜日に帰ってきているのかもしれないけれど、どこに行っているのか、そもそも本当にどこかに行っているのかも分からない。


 お酒で言う休肝日きゅうかんびならぬ休猫日きゅうびょうび……いや休にゃん日でも作っているという可能性だって否定出来ない。


 ただ、今まで断片的に聞いた情報を繋ぎ合わせた感じからすると、詮索せんさくしてもあまり良い方向のお話には辿たどり着かない気がして、私はあまり首を突っ込まないようにしておこうと思っている。


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