第15時限目 図書のお時間 その12
私の言葉に、目を丸くした真帆。
「うーん、でもまあ、準ならその内に教えてくれるでしょ」
太田さんも言っていたけれど、皆して何故そんな謎の納得をしているのかが理解できない。
「え、何故?」
「いやー、まあ準にゃんならイケるんじゃないかねー」
「都紀子まで!?」
言葉の意図が掴めない内容に、真帆がちょっと呆れ顔で答えた。
「準って色んなことに首突っ込んで、引っ掻き回すでしょ?」
「う……」
ま、まあ、そこについて、確かに自覚はある。
「でも、最後にはこう、何だかんだで上手くいってるパターン多いじゃん?」
「それはそうかもしれないけど、それは運が良かっただけで……」
特に太田さんのときなんか、もう絶交されててもおかしくないレベルのことをやらかしていたから、よく許してくれたなと思うくらいだよね。
むしろ、私が言われる側だったら許していたか怪しいくらい。
「準にゃんは真っ直ぐすぎるからねー。面倒くさいと思われることもあるかもしんないけど、そんなお節介が心底助かってる人もいるんじゃないかなー」
「むう……」
都紀子の言葉、褒められているはずなのに、褒められている気がしない。
いや、実際褒めてない可能性も……?
「でも、テオちゃんに触りに来るにしても、毎日来るということは、小山さんのことが嫌いではないと思いますよ」
正木さんがそう笑った。
「そう……でしょうか」
私もそう思いたい気持ちはあるけれど、それは都合よく考えすぎという気がする。
ただ。
「はい、そういうものです」
普段おっとりとした正木さんの肯定の言葉がやけに力強かったから、
「……なるほど、そうかもしれません」
と私は頷くしか無かった。
まあ、最初から仲良くなることを諦めるよりも、それが良い方向に転ぶか、悪い方向に転ぶかはさておき、こう近づく努力はする方が良い、はず。
「でもさ、せめて共通の話題とかあればねえ」
真帆が首を捻って、一緒に六名さん攻略? の糸口を考えてくれる。
「うーん、共通の話題……テオのこととか?」
「そこまで限定するとすぐに話題が尽きそうだし、せめて猫系の話題くらいに拡大した方が良いかも」
「猫系の話題……」
一瞬、ノワールちゃんの子猫の話題が脳裏をよぎったけれど、みゃーちゃんと六名さんの、あの関係を思い出すと合わせるのは非常に危険だと思うから、選択肢から除外した方が良いよね。
後は……。
正木さんも混ざって、うーんという声のハーモニーを奏でていると、ぱんぱかぱーん! とファンファーレがなりそうな表情で提案する都紀子。
「むふふ、そういうときはほら、スキンシップじゃないかねー?」
……そんなに胸を張っていうネタではないような。
「スキンシップって言ったって、ああいう大人しいタイプは下手に抱きつくとかしたらむしろ悪化しない?」
「いやいやー、そういうときこそ攻めてみるとかいいんじゃないかねー?」
ニヤリと笑う都紀子だけれど、私は知っている。
それ、前に太田さんにやって失敗したよね?
というか――
「あまり、スキンシップも意味無かったんだけどね……」
と思わず、脳内からぽろりと溢れるように言ってしまった。
「……んん? ちょっと待って。今、準が聞き捨てならないことを言った!」
うん、まあ、スルーしてくれないよね。
というか、華夜と千華留のときもそうだったけれど、こうやって思ったことを思わず口走るような、自分でも思いも寄らない行動をする辺り、都紀子に真っ直ぐすぎると言われても仕方がないのかもしれないと思う。
自分が自分で制御出来ていないとも言うけれど。
「あ、いや、スキンシップというかなんというか……」
私が慌てて弁明しようとするのだけれど、
「何やったの? いや、何やらかしたの!?」
なんて言いつつ身を乗り出す真帆とその隣で「そうですよ!」と何故か乗っかる正木さん。
むしろ、話題提供した都紀子本人の方があまり迫ってこない。
……と思ったら、高みの見物というか、むしろこの状況を楽しんでいる感じ。
ぐぬぬ……と思いつつ、2人の勢いに少したじろぎつつ、私が事実を答えた。
「あの、正確には私からスキンシップを取ろうとしたわけではなくて、勝手に膝の上に乗ってきたというか……」
「……いや、どういう展開?」
まあ、さっきまで全く喋ってくれないとか、仲良くなるにはどうすれば、とか言っていたのに、勝手に膝に乗ってくるとか言われたらそういう反応になるよね。
首を自分で捻り切りそうな勢いで首を傾げた真帆含む3人に、私がその前後も含めて事情を説明すると、
「あー……、んー……?」
分かったような、分からないような、みたいな反応を全員が示す。
うん、それもそういう反応になるよねパート2。




