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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第15時限目 図書のお時間 その9

「小山さん」


「…………あ、はい?」


 テオが「もう触れてくれるな」とばかりに拒絶きょぜつの態度を示したから、この後どうしようかと考えていたら、先に六名さんのひそやかな声が私を呼んだ。


 ただ、完全に油断していたというか、よくある意識が別なところに出張中だったところで声を掛けられてしまった上、声が小さいから、しばらく六名さんの声とは気づかず、数拍くらいスルーした後に反応することとなってしまった。


「小山さんは、何故……か?」


「え、え? ごめんなさい、聞き取れなくて……」


 隣に居るのだけれど、ほとんど声が聞き取れず、ずいっと顔を近づけて声を聞き漏らさないようにする。


「小山さんは、何故太田さんに怒られないのですか?」


「え、太田さんに?」


 まあ、悪いとは言わないけれど、良いとまで言えるかは分からない。


「太田さん、大きな音させたり、大きな声で喋ると怒られます。でも、小山さんは怒られてないです」


「え、ええと……?」


 六名さんが今日1番の長文を喋った気がするけれど、それより何より、私今さり気なく「貴方うるさいです」って怒られたような……?


 ま、まあ、確かに太田さんには複数回しかられた経験があるし、言いたいことは分からないでもないのだけれど、まだお互いのことを良く知らないこのタイミングで結構抉えぐるような言葉を放ってきた六名さんに、私は苦笑と、


「あの、はい、ごめんなさい……」


 という謝罪の言葉しか返しようがなかった。


「咲野先生もいつも叱られてます」


 あ、やっぱり……と思ってしまった。


「何故、怒られないのですか?」


「いや、あの……既に何度も怒られてますよ?」


 六名さんの言葉に、私はさっきから浮かべたままの苦笑に少しだけ呆れを混ぜて続けると、今度は六名さんがきょとんとした表情で私を見た。


「怒られてるけど、なんというか、もう太田さんには呆れられてるというか……」


 そういうキャラだしね、みたいな感じで言われているし。


 まあ、だからといって「うふふ、六名さんも同じように呆れられようよ!」なんて悪の道に引きずり込むようなことはしないけれど。


「私は見てない、です」


「寮に入ってすぐ……4月とか5月頃は怒られてて……」


「その頃は、叔母の家に泊まっていたから見てないです」


「……あ、なるほど」


 この「なるほど」は座敷童子の目撃情報的な意味での話。


 入寮直後は六名さんを見た覚えが無かったけれど、そういうことだったのね。


「太田さんと色々あった後はあまり怒られなくなったかなと……」


 本当に、入ってまだ半年も経っていないのに、寮内で限っても色々あったなあなんて思いつつ、私は頭を下げた。


「でも、ごめんなさい。バタバタ足音とかさせて、六名さんに迷惑掛けて」


「別に……大丈夫、です」


 そう言ってから、六名さんは視線をさっと明後日の方に飛ばしてしまった。


 もう話したくない、という態度なのかもしれないし、これはストレートに聞くべきかどうか少し悩んだけれど、私は折角のタイミングだから聞くことにする。


「あ、あの……もしかして……間違っていたら申し訳ないのだけれど、六名さんって太田さんに怒られるのが嫌で、その、あまり喋らないというか、声を出さないようにしているというか……そういう感じなの、かな?」


 気を悪くさせないように言葉を選ぼうとして、むしろ良く分からない感じになっているのが私らしすぎる気はするけれど、六名さんは私を見て、


「……ちょっとだけそう、かもしれないです」


 と答えた。


 太田さん怖がられすぎじゃない……? と脳内に浮かんだ眼鏡のクラスメイトに憐憫れんびんじょういだいたけれど、


「でも、違います」


 と綺麗な短めの髪を、左右に大きくぷるぷると振って強めの否定をする六名さん。


 まあ、そうだよね。


 太田さんだって、私語を全て許さないみたいなタイプではないし、そもそも私みたいに寮の階段を走り下りたり、階上かいじょうに先走った岩崎さんとか片淵さんに声を掛けたりしなければ、とやかく言わないはずだし。


 ……ん、んんん?


 やっぱり、さっき六名さんが言ってたこと、私ほとんどしてない?


 ……こ、今度から気をつけます、はい。


「また、来ます」


 反省の思いを胸に秘めた私にそう言った六名さんは、てててと軽やかな足取りで部屋を出ていく直前、扉の前で振り返ってから、


「ありがとう、ございました」


 とまた小さく笑顔を見せてから、出ていった。


 ぱたん、と閉じた後、私は謎の脱力感を覚えて、ベッドに寄りかかった。


 ……う、うーん、良く分からない子だったなあ。


 悪い子ではないのは確かなのだけれど、物静かなのは太田さんが原因説はおおむね否定されたのだけれど、じゃあ何故? という疑問には答えてくれなかった。


 まあ、でもこういう場合は大抵あまり喋るのが得意ではないから、とか頭の中で言うことがまとまらないから、とかそういう話なだけだと思うし、追及する権利も意味もないから忘れてしまおう。


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