表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

359/959

第14時限目 契約のお時間 その16

 口篭くちごもる私を見るに見かねたのか、


「……準は何であんなことしたの」


 と助け舟を出してくれる工藤さん。


 な、情けないけれど助かった……。


「え、ええっと……」


 ただ、言い訳はしないと言ったばかりだから、どう答えようか。


 脳内をフル回転させながら、


「……あの」


 と思考中であることを伝える言葉がまろび出たけれど。


「教えて」


 真面目な工藤さんの目。


「……うん」


 誤魔化したって仕方がない。


 私は全て吐き出した。


 あ、もちろん正座で。


 途中でテオが私の頭をせがんできたから、乗せてあげたのと「足はくずしても良い」と言った工藤さんの言葉に対し、首を横に振った以外は、ほとんどずっと流れるように思いを全て出した。


 それはもう、私自身を逆さまにしてひっくり返しても、これ以上言葉が出て来ないようなくらい。


「……」


「ということ、です」


 締めの言葉まで言い切った。


 大分、言い訳じみたことを言った気がするけれど、少なくともそのときは本心だったから、嘘偽うそいつわりなく全部喋った……はず。


「勝手な思い込みばっかりで、最低」


「うん」


 だから、工藤さんの言葉に、私も頷く。


 今冷静になって思えば、随分酷いことを言ったし、したと思う。


 だから、言い訳しない。


「……でも、分かった」


 私の態度を見て、納得してくれたのか、納得せざるを得なかったのかは分からないけれど、工藤さんは、


「じゃあ、私も言う」


 と足をそろえてから言った。


「……え、何を?」


「別に、準を千華留に近づけたくないわけじゃないし、準が私たちのことを知ってて近づいたとは思ってなかった」


 自分のもふもふ髪を、人差し指でくるりくるり回しながら、工藤さんがそう言う。


「え? でも……」


「逆。千華留から準を遠ざけるため」


 どういうこと? と頭の中でハテナ妖精が飛んでいた。


「吸血したくなる衝動しょうどうを抑えるためってことであれば、元々そのために工藤さんが見ててくれたんじゃなかったっけ?」


「そういう問題じゃ済まない。確かに準の性別が一生バレなければ大丈夫かもしれないけど、もし千華留のお母さんに、準が男だってバレたとき、いつも準の血を吸っていることまで知られてしまったら、間違いなく結婚させられる」


「う……確かにそれはそうかも」


 あの雰囲気からして、問答無用で捕まりそう。


「……あ、で、でも、ほら……園村さんというか、園村家に相応ふさわしいかチェックするとかどうとか……」


「相応しくなくても離す訳ない。徹底的にしつけされるだけ」


「そ、そっか……」


 血の誘惑ゆうわくからはのがれられない。


 ならば、既に血を吸ってしまった男を自分の家の仕来しきたりに合わせるように教育する、というのは当然かもしれない。


 ……とすると、何かやらかしたら私もお尻叩き百回!?


「でも、もう吸ってしまったから……」


「吸わない時間が伸びれば、少しは抑えられるかもしれない」


「それは……そうかもだけど」


 私が微妙な態度を取っていたら、


「じゃあ、準は」


 比較的声の小さい方な工藤さんが、はっきりとした調子で続けた。


「千華留と結婚したいの?」


「え゛っ」


 思わず、表現し難い声を上げてしまった。


「いや、その……」


 正直なところ、見た目は悪くないというか、むしろとても良いと思うし、ちょっと……どころじゃないかもしれないけれど、ポンコツなところも嫌いではないし……いやいや、そういう話ではなくて、いやそういう話なのだけれど!


「どうなの」


 座っていた私に近づいてくるから、私はその分だけ後ろに下がり、ベッドに背中をぶつけた。


 その表紙に頭の上に居たテオがころりんと転がった、気がするけれどそちらに視線は向けている余裕がなかった。


「え、えええええええっと……」


「即答出来ないなら、千華留は渡さない」


 そう言って、つーんとそっぽを向いた工藤さん。


 そんな工藤さんを見て、私はまた素直に言った。


「え、っと……したいかしたくないかというよりも、まだ私も良く分かってない、というか」


「……」


「園村さんのお母さんが言ってたみたいに、もっと後で考えればいいかなって……正直思ってた」


「そう」


「血を吸うことについてはあまり深く考えてなかったから……」


 吸血鬼が血を吸うことで眷属けんぞくを増やすっていうのは、もしかすると単純な感染的な意味もあるけれど、知られた人を野放しに出来ないから仲間に引き込むって意味もあったのかもしれないなあ、なんて。


「だから、これから真面目に考えなきゃいけないとは思うし、まだ結婚はしない……と思う」


「そう」


「でもね!」


 ずいっと、今度は逆に私が工藤さんに近づく。


「で、でも?」


 反撃というか反論が来るとは思わなかったのか、工藤さんが少しだけたじろぐ。


「工藤さんだけが苦労するのも、良くないと思ってる」


 今日は本心発表デーだから、全部本心でそう言ってしまうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ