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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第14時限目 契約のお時間 その12

 階段を下りた後で良かった。


 下りている途中だったら間違いなく転げ落ちてたよね……とか思いながらもまずは現状把握。


 本来ならまだそれなりに視界が確保されている時間のはずだけれど、分厚い雲のせいで真っ暗と言っていい状態の寮内は明かりをけなければ歩くことも困難だった。


 単純にブレーカーが落ちたとかそういうわけじゃないよね……っていうかそもそもブレーカーってどこに……あれ?


「テオ?」


 落ち着きを取り戻すため、テオのもふもふに触ろうとして頭に手を乗せると、さっきまでそこに居たはずのテオが居ない。


 今の雷で何処かに飛んでいった!?


 ま、まあ飛んでいったというのは比喩ひゆであって、驚いて逃げ出したという意味ではあるのだけれど、何にせよ早くテオを探し出さないといけない。


 とりあえずスカートのポケットからスマホを取り出し、ライトで足元を照らしながら、


「テオ? 何処行ったー?」


 と声を掛けながら一旦食堂まで行こうとしていたのだけれど。


「きゃあぁぁっ」


 ぎぎぃ……!


 ばたばた……がっしぃっ!


「おわぁっ!」


 何処かの部屋が開いたと思われる音と、ばたばたと何かが走るような音の後に、私は再び謎の弾丸に下半身辺りをおそわれた。


 それも今度は、クッション性自体はそれなりに備えながらも、衝撃しょうげきがさっきの10倍以上はあったから、私は押し倒されるような形でひっくり返った。


 ちょ、ちょっとテオ!?


 この停電の間に随分ときたえ直したね!?


 ……いや、流石にそれは冗談だけれど。


「痛た……、だ、誰?」


こわい……」


「え?」


 暗くて良く見えない。


 ただ、そのくっつき虫さんがやけに震えているのだけは良く分かる。


 本当に、テオがそのまま大きくなったみたいに。


 ……はっ、まさかさっきの雷で、テオが人間化したのかも! なんてファンタジーを信じるつもりはないのだけれど、何にせよ私を押し倒しているこの人がどいてくれないと私は立ち上がれない。


 私も突然の停電で恐怖を感じたけれど、ここまでびくびくするほどではない。


 むしろ、正体不明の存在が飛び掛かってきたことの方がよっぽど恐怖だったけれど、しばらくじっとしていて分かった。


 少なくとも、私をホールドして離さない謎の存在は、私に危害を加える気はないみたい。


「あ、あの……どなたですか?」


 一応、丁寧に言い直してみたけれど、帰ってきたのは沈黙と振動だけ。


 むむ……。


 1階に住んでいたのは、確か太田さんと工藤さんくらいだった気がする。


 ただ、益田ましたさんの話では、確かこの寮に住んでいるのは私と太田さん、工藤さん、繭ちゃんの他に確かもう1人か2人は居たはずだから……うーん?


 もしかするとその正体不明の1人が、闇に乗じて寝首を掻きに飛びかかって……いや、だから危害を加えるような様子があるわけではなくてね?


「あ、あのー……」


「……」


「もしもーし」


「…………」


 反応がない。


 ただ、冷静になってきた私には、1つ気づいたことがあった。


 ……それなりに、いや、人によってはとても、その、変態的な感じでとらえられかねないけれど、意図せずに抱きしめる形になってしまったことで、鼻腔びこうに入り込んでくるにおいで、誰かが分かってしまった。


 それは、困ったことになったとも言えるし、丁度良かったとも言えた。


「えっと、工藤さん……?」


「……」


 さっきから、目には映らないけれど、私の頬辺りを撫で付ける謎のもふもふの正体は、どうやらテオが成長した姿ではなく、工藤さんのチャームポイントである髪の毛だったみたいで、比較的小柄だから私の胸の中にほとんどすっぽり収まっている工藤さんの頭が震えるたびに私の頬と鼻に、工藤さんがそこに居るらしいという事実を教えてくれる。


 まあ、事実と言いつつも、まだ返事をしてくれていないから、答え合わせはできていないのだけれど。


「もしもーし、工藤さん」


「やだ」


「え?」


「……」


 発された声は間違いなく工藤さん。


 ……だけれど。


「あの、何が嫌なのかが分からないんだけど……」


「……」


「どいてくれない、ですか」


「やだ」


「……」


 ああ、そういえば。


 前にお風呂の中で、建物のブレーカーが落ちて、照明が消えたときもこうやって震えていたっけ。


 暗いのが怖いのかな?


 もしかして、工藤さんが眠そうにしているのは、ただ園村さんの吸血行為だけが原因ではなく、夜なかなか寝付けないからとか、そういう理由もあるのかもしれない。


 何にしても、暗闇の中で、このままではほとんど抱き合うような形でじっとしているのは……まあ、私は嫌ではないのだけれど、正直まだちゃんと謝ってもいない状況では居心地の悪さはかなり感じるわけで。


 でも、工藤さんが嫌だというのを無理やり引きがすのもなんだし。


 結局のところ、私が取ることが出来た行動は、硬い床で寝転がりながら、震える工藤さんの頭と思われるふわふわをゆっくり撫でるくらいだった。

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