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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第3時限目 日常のお時間 その2

 そしてようやく食事の時間を告げるチャイムが鳴る。それと同時にガタガタッと椅子の音を立てていつものコンビが私と正木さんの机の前に立つ。


「さー、飯だ飯ー。小山さんはお弁当?」


「いえ、何も持ってきてないです」


 そういえば昼食はお弁当とか作ってもらえたりするのかな?


 転入時にはそんな話は聞いた覚えがないから、もしお弁当が欲しければ自分で作るのかもしれない。


「んじゃあ、アタシと同じだねーい。カフェテリアにする?」


「カフェテリアですか」


 そういえば確かに階の中央にあった気がする。


「そーそー。まあ、購買で何か買っても良いんだけど、せっかくだしカフェろうよ」


「んだったら早く行かないと、席無くなっちゃうし急がないといかんね!」


 言うやいなや、岩崎片淵ペアは二人三脚のプロみたいにほぼ同時に部屋を飛び出した。


「正木さんはどうされるんですか?」


「私はお弁当持ってきているので、それを持って行きます」


 そう言って鞄から取り出した桃色の包みに入った控えめサイズのお弁当箱。


「もしかして、自分でお弁当を?」


「い、いえ……母が作ってくれたものです。申し訳ないです」


「あ、そういう意味ではなく……あはは」


 何故か謝られた。でも、正木さんなら料理とか上手そうだし、作ってもらいたい気はする、って何言っているんだろう私。


 お弁当を持った正木さんと2人で部屋を出ると、カフェテリアの4人掛けテーブルから手を振っている岩崎さんの姿。


「あれ、片淵さんは?」


「都紀子はもう並んでるよー。あたしはお弁当だから、並ぶ必要無いしね」


 見ると、確かに岩崎さんの手元には結構大きな箱型弁当が置いてあった。それも2段。


「真帆、良くそんなに食べられるよね……私には無理」


 そう言う正木さんの弁当箱は確かに岩崎さんの半分サイズくらいしかない。


「紀子はずるいよねー。こんだけしか食べないのにこの体格だし」


 "この体格"の時に上半身の一部を指す。何処なんてことは言わなくても分かるでしょう?


「え、ええ? そんなことないよ」


 少し赤面しながらぎゅっと上半身を抱く。


「ずるすぎだって! ほら、小山さんも思うでしょ?」


「んーっと……あはは、そうですね」


 正直なところ、正木さんの体を直視出来ない。理由は言うまでもないけれど。


「おまたへー。いやぁ、やっぱ早く来ないとヤバイね。もう結構並んでるし」


 片淵さんの言葉を確かめるべくカフェテリアのカウンターを見ると、確かに6、7人が並んでいる。これは結構時間掛かるかなあ。


「小山さんも買ってきたら?」


「ええ、そうですね。時間が掛かるかもしれないので先に食べててください」


「んにゃー、待ってるから買ってきなー」


「準ちゃんだーっしゅ!」


「行ってらっしゃい」


「……あはは、じゃあ行ってきます」


 結局待ってくれている3人を出来るだけ待たせないようにと、私は財布を持って足早に列に並ぶと、列の前に並んでいる人物2人は今朝挨拶した2人。この2人は正木さん、岩崎さん、片淵さんのトリオと同じく、必ずコンビで行動しているのかも。


「園村さん、工藤さんもカフェで食事ですか?」


「小山さん、こんにちは。そうですよ、小山さんも?」


「はい」


 園村さんの隣でまだ眠そうにしている工藤さんは、


「……準、こんにちは」


 それでも朝から比べれば大分調子が良さそうで、喋り方もはっきりしている。やっぱり低血圧だから朝が特別弱いだけなのかな。


「良ければ一緒に食べますか?」


 4人掛けの机だから、別の机をくっつければ良いかな、と思って笑いかけると園村さんの表情がやや固くなる。


「いえ、私と華夜は屋上で食べるので……それに小山さんはあちらの3人とご予約があるのでは?」


 指差す先には正木さんたち3人。3人もこちらをじっと見ている。


「ええ、でも皆で一緒にというのも……」


「私は遠慮しておきます」


 何故か、少し厳しささえ感じる言葉に私は二の句が継げなくなり、その様子を見て少し園村さんの表情が緩やかになった。


「ああ、別に小山さんと一緒に食事を摂るのが嫌、というわけではありませんよ。ただ、小山さんほど色んな人間と仲良くするつもりがない、ということです」


「……」


 これも男女の感覚の違いなのか、それともただ個人個人の考えなのかは分からないけれど、山椒よりもぴりりとした声に私は少しだけ戸惑いを覚えた。


「準」


 工藤さんがいつものジト目で、少し上目遣いにこちらを見る。


「気にしないで良い。千華留は変わってるから」


「ちょっと華夜。私は貴女には言われたくないのだけれど」


「だから大丈夫」


 完全に園村さんの言うことをスルーして、工藤さんは静かに言葉を紡ぐ。


「……ふふっ、そうね、ありがとう」


「小山さんまで!」


 さっきまでの頑として拒絶を示す表情を私に向けていた園村さんは、今までのクールなイメージとは裏腹に少しふくれっ面になった。本当に腹を立てている訳ではなく、からかわれて少し拗ねた子供のような表情だったから、私の心の少しだけささくれだった部分が緩やかに元に戻った。


 うん、誰もが仲良くするなんていうのは難しいってことだけは良く分かった。少なくとも、今は。


2019/5/20 誤字修正

「工藤さんの隣でまだ眠そうにしている工藤さんは、」

「園村さんの隣でまだ眠そうにしている工藤さんは、」


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