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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第13時限目 血縁のお時間 その22

「元々人手が足りないから、岩崎さんを呼んだというのもありますが、この状況で手伝ってもらうのは難しいですからね」


 私に脇から支えられた岩崎さんを見て、苦笑を浮かべた店長さんだったけれど、


「いえ、大丈夫です。参加させてください」


 と強がる岩崎さん。


 すると、今度は店長さんが少し強い口調で言った。


「無理に働いて、倒れられる方が困ります。他の方に時間をずらしてもらうようにしますから、今日は帰って十分に休息を取ってください。ひとまず、制服はお返ししますね」


「……」


 制服を受け取った岩崎さんは、それでも納得しなかった。


「店長」


「何でしょうか」


「……15分だけ休ませてください。それで十分です」


「……」


 真摯しんしな岩崎さんの目に射抜かれて、店長さんは深い溜息をいた後、


「分かりました。そこまで言うのであれば、手伝ってください。人手が足りないのも事実ですから。ただし、絶対に無理はしないこと」


 と言ってから、ようやく笑った。


「はい!」


 ようやく、少しだけ落ち着いた岩崎さんは、


「準、悪いんだけどさ……」


 と私の方に向き直って言った。


「ちょっと膝枕ひざまくらしてくれない? そこの椅子いすで横になりたいから」


「うん」


 この状況で、私が役に立つならと、私は椅子を2つ並べ、


「どうぞ」


 と膝をすすめると、


「ん、あんがと」


 と言った岩崎さんが隣に座り、そのままぽてり、と私の膝に頭を乗せて横になった。


「私は開店準備と、2人の穴埋め人員を探しておきます。15分にこだわらず、十分に気持ちを落ち着けてから来てください」


「はいっ! すみません!」


 事務所を出ていく店長さんに、私の鼻先をかすめる距離で慌てた岩崎さんが体を起こし、頭を下げてから、再びぽてっと頭を私の膝に落とした。


「……あー、ホント疲れたなあ……」


「そうだね」


 ひとまず落ち着いたとはいえ、色々とありすぎた。


 目をおおうよう、顔に腕を乗せた岩崎さんは、


「……ごめん、準。ちょっとだけ……」


 とひかえめに言った。


「ん?」


 まだ少しだけ、躊躇ちゅうちょしているようだったけれど、岩崎さんは意を決するように、小さく息を吸ってから、再度口を開いた。


「頭、でてもらっていい?」


「ん、良いよ」


 私が、さらさらと岩崎さんの、私よりも少しだけ長く切りそろえられた髪の毛を撫でていると、小さく押し殺したような嗚咽おえつが聞こえてきた。


 だから、私は目を伏せて、出来るだけ優しく岩崎さんの髪を撫で続けた。


 何分経ったか分からないけれど、岩崎さんの嗚咽が終息し、呼吸が落ち着いた後、


「……ぃよっし!」


 と元気よく飛び起きた岩崎さんは、私に背中を向けたまま、目の辺りをぐしぐしとやった後、大きく深呼吸した。


「んじゃ、ちょっと行ってくる! 頑張ってくるから、家に戻って待ってて」


 元気一杯……というにはちょっと空元気からげんきな声で、岩崎さんがそう言うから、私もうなずいてから、


「うん、行ってらっしゃい」


 とだけ言って、見送った。


 さて、と席を立ったところで、


「岩崎さん、元気になったみたいですね」


 入れ替わりで店長さんが入ってきた。


「ええ、何とか。お店の方はいかがですか?」


「他の方が存外ぞんがい頑張って下さっていたようですので、何とかなりそうですね」


 ほっと安心の溜息を吐いた店長さんの言葉に、


「それは良かったです。それと、色々とすみませんでした」


 と頭を下げた。


「いえ……実は、さっき他の方々がこっそりとこちらを覗いているのが見えていましたので、店長という立場の手前、はっきり言っておかないと示しがつかないというのがありましたから」


「そうだったんですか。大変ですね……あれ、そういえば、今日は何か別の用事があると聞いていたような……?」


 ようやく落ち着いて話が出来たお陰で、あの2人がそんなこと言っていたことを、ふと思い出した。


「ああ、それなのですが……実は本社への出社日程が変わっていたのにも関わらず、手元の手帳のみ修正していて、店内の日程表を書き換え忘れていたのですよ。だから、皆さんに伝え忘れていまして。お陰で今回色々と解決したというのはありましたが」


 言いながら、店長さんが苦笑の苦味成分を少し強めた。


「とりあえず、今日は沢桐さんと梶宮さんの穴埋めを依頼いらい出来ましたが、今後のことを考えると人手が足りませんね……」


 ほぅ、と困り果てた溜息を吐いた店長さん。


 その様子を見て、私は1つの案が頭に浮かんだ。


「あの、店長さん」


「何でしょうか。あ、もう戻られるのであれば構いません。お疲れさまでした」


 そう言った店長さんに、私は言った。


「1つ、お願いがあるんですが」


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