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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第13時限目 血縁のお時間 その14

「ほら、先にお風呂入ってきなさい」


 掛けられたタオルで手を拭いて、岩崎さんがゲームに夢中の総一くんに言うと、


「えー」


 と不満げな声をらす。


「えー、じゃないの」


 たしなめる岩崎さんに、ぶーぶー言う総一くんだったけれど、


「……はーい」


 渋々といった感じで、総一くんはお風呂に行った。


「光一も、総一が出てきたら続けて入りなさいよ」


「うん」


 光一くんは素直にうなずく。


「準たちはどうする? うちの弟の後で申し訳ないけど入る?」


「あ、うん。入らせてもらおうかな?」


 私がそう言いながら、他の2人に意見を確認しようとすると、


「だねー」


「そうですね、ちょっと入っておきたいです」


 片淵かたぶちさんと正木さんも頷く。


「ん、じゃああたしは最後でいいや。2人が入ったら、3人も入って……ありゃ? 電話だ」


 今日2度目の聞き覚えがある携帯着信音。


 岩崎さんが携帯を持ってリビングの外に出て、しばらくすると戻ってきた。


 部屋を出てから話をするということは、家の事情だったり、色々聞かれたくない話かもしれないから、事情は聞かない方が……と思っていたら、


「ごめん、明日のバイト、午前中から入っちゃった。申し訳ないんだけど、明日は朝から2人の面倒、見といてくれない?」


 と手を合わせながら岩崎さんが私たちに言う。


「構わないけど……忙しいね」


 私の言葉に、あははと少し疲れたように笑う岩崎さん。


「まあ、そうだねえ。うちって一応ファミレスなんだけどさ、結構コーヒーとかデザートに力入れてて、特に昼休みとかおやつの時間とかのタイミングで特に人が増えるんだよね。だから、大体お昼以降の人手が足りなくなるってことで、あたしも午後のシフトが多いんだけど、なんか明日は近くで何かイベントがあるとかで、午前中も人手が必要だからどうしてもって」


「そっか」


 まあ、色んな事情があるだろうから仕方がないとは思うし、私たちは最初からここで泊めてもらうつもりだったから構わないけれど。


「真帆は大丈夫なの?」


 私が思っていたことと同じ内容を、正木さんが尋ねる。


「ん、あたし? あたしの方は全然。何にも問題ないよ」


 そう言って、力こぶ……はほとんど出来ないのだけれど、細腕ほそうでに力を入れて見せて笑う。


 そんな岩崎さんに対して、今日の私の行動を振り返ると、ほとんど総一くんとゲームばかりして終わったなあ、なんてことを思い、明日はせめて総一くんに勉強を教えるくらいは役に立たないといけないな、なんて思いながら入浴し、すぐに就寝。


私は寝る部屋が無いからと私はリビングのソファで寝ていたのだけれど、ふと何か音がして目を覚ます。


「あ、ごめん。起きちゃった?」


 体を起こした私に気づいて、岩崎さんが申し訳無さ成分を半分くらい含んだ笑顔で私に言う。


 既に岩崎さんはエプロン姿だった。


「ん……どうしたの?」


 寝ぼけ眼で壁掛け時計の時間を見ると、平日でもまだまだ夢の中を彷徨さまよっているだろうし、ましてや休日に目覚めたら「もったいない!」と二度寝確実な時間だった。


「今日の夕飯の仕込みだけしておこうと思って。まあ、また最終的には準たちに頑張ってもらうことになるんだけどさ」


 包丁を動かす手を休めず、岩崎さんがそう言う。


「こんな朝早くから?」


「午前出になっちゃったからね。ちなみに、後2時間くらいで出るよ」


「え?」


 あのファミレス、そんなに開くの早かったかな? と首をひねると、


「今あたしがやってるみたいにさ、午前中に仕込みっていうか、色々準備しとかなきゃいけないんだよね。ケーキとかも手作りだから、時間掛かるし」


「あ、手作りだったんだ」


 私が驚いた声を上げると、


「そうそう。まあ、だから結構売れ行きが良くて、午前中になくなっちゃうケーキとかもあったりすると、お昼中にケーキ作り直すこともあるんだよね」


 と少し照れくさそうに言う岩崎さん。


「結構大変そうだね」


「まあね。忙しいときにケーキ作らなきゃいけないとかなるとかなり困るから、ある程度お客さんが多いときは多めにケーキとか作っておくんだけど、かといって作りすぎて捨てちゃうのももったいないし。まあ、準もその内食べに来なよ」


「そうする」


 ……そういえば、工藤さんにパフェを強請ねだられたのって、あのお店だったっけ。


 そろそろ、連れて行かないと何か言われそうだなあ。


「何か手伝おうか?」


「いいよ、まだ寝てて。また、総一とかと遊んでもらわないといけないし」


「あはは……でも、遊んでるだけでいいのかな?」


「いいのいいの。ほら、だんだん姉がうざく感じてきたりする時期じゃん? だから、逆に他人の方が気軽に話せるかもしれないしさ」


 そういうものかな? と首を傾げてみるけれど、私自身あまり反抗期的なものは無かった気がするし、むしろ本来だったら今頃あるものなのかもしれないし、まあいつも忙しかった両親に思うところがないわけでもないけれど、良く分からないから、考えるのはやめておいた。


「ま、準たちのお仕事は夕方の料理があるからさ、よろしくね」


 ぱちん、とウインクした岩崎さんに私は笑顔を返した。


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