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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第2時限目 お友達のお時間 その14

 私が階段を上がると、2人は既に私の部屋の前に立っていた。


「にゃっはっは、準せんせーは中々やるね。アタシたちが太田さんのこと苦手なの、良く分かってるぅ」


 片淵さんが私と肩を組もうとしたのかもしれないけれど、身長差がありすぎて肩にぶら下がるような形になった。


「さっきの太田さんへの反応を見てたら分かる……というのもありますが、私自身今日の朝、叱られたばかりなので」


「マジで? 朝から小山さんも大変だね。まあ、あの太田ならありそう」


 岩崎さんの言葉に苦笑しながら私が鍵を開け、ノブを回すと、


「おおー……何にもない」


 岩崎さんが歓喜の声を上げようとして広げた口をへの字に曲げて残念そうな声。


「昨日引っ越してきたばかりですから……」


「えー、引っ越してくる時に漫画とか持ってくるじゃない、ふつー」


「でも、ベッドはふわふわじゃないかー!」


 片淵さんがいつの間にかベッドを占拠して横になっていた。早い。


「お、お邪魔します……」


 2人とは対照的に、正木さんは借りてきた猫のような様相で、何だか落ち着かない。


「正木さん、そんなに畏まらないで良いですよ」


「え、ええ。あの、私、真帆の家以外、行ったことがなかったので、少し緊張して……」


 気を使いすぎる正木さんにとっては他人の部屋というのは緊張してしまうものなのだろうか。まあ、私も昨日会ったばかりの、友達ともまだ呼んでいいか分からない人の家にお呼ばれしたら気後れするかもしれない。というより、岩崎さんと片淵さんが元気過ぎるだけで、正木さんの反応が普通なのかも。


 とりあえず、私が座る場所が無いのでベッドを背にして床に座ると、隣に正木さんも座る。床に座らなくても……と言おうと思ったけれど、椅子は岩崎さんが使っているし、ベッドはツインテールも含めてベッドを占領している片淵さんが居るから、座りにくいのかも。ううん、それ以上に私が床に座っているのを見て、気を使っているのかもしれない。


「そういや準ちんってお兄ちゃんとか居るの?」


「いえ、妹が1人だけです」


「そうかー。いや、何か面倒見のいーから駄目兄の世話を焼く妹とかなのかなーと思ったけど、面倒見のいーおねーちゃんでしたか、はっはっは」


 片淵さんが天井を仰ぎながら笑う。


「そんなことよりも小山さーん。思っていたよりはボロくないけど、この寮って遊ぶところとか無いの? つまんなーい」


 岩崎さんは勉強机の椅子に陣取り、椅子の背を跨いで座りながらぶーぶー文句を言い始めた。


「向かいの部屋に娯楽室がありますよ。何も置いてないですが」


「むぅ、つまり何も無いってことじゃん! よし、これは小山さんの歓迎会兼ねて、遊びに連れて行かなきゃいかんね!」


 岩崎さんの言葉に、ベッドに寝転がっていた片淵さんがひょいっと起き上がる。


「おー、何処行く? ボーリング?」


「良いね! 最近部活もあまり参加できないし、体動かせないからうずうずしてたんだよね! よし、んじゃあこれから遊びに行こー!」


「あ、えっと……」


「良いよね? あ、もしかしてボーリングとか行ったこと無い?」


「いえ、1回は行ったことがありますが……」


「い、1回!? マジで?」


 椅子からひっくり返るんじゃないかってくらいに大仰に驚く岩崎さん。え、そんなに驚くことなのかな?


「んっふっふ……そうかいそうかい。んじゃあ、ちょっち遠いけどボーリング行きましょうかね!」


「えっと……」


 正木さんの方を見ると、苦笑いで返してくれた。ああ、なるほど。こういう場合はもう手が付けられないのね。


「あ、そうだ。小山さん、メアド教えて」


 椅子から立ち上がって、またすとんっと同じポーズで座り直した岩崎さんがポケットからスマホを取り出していじりながら言う。


「え? あ、良いですよ。赤外線でいいですか?」


「おっけい」


 私も床に座っていたところを立ち上がり、岩崎さんの傍で再び座り直して、赤外線で送信しているとベッドの方から声がする。


「しかし準にゃんって座り方、男らしいねえ」


「え?」


 ごろ寝ポーズに切り替わっていた片淵さんが私を見ながらにははと笑う。


「ほら、スカートで胡座かくし」


「……っ」


 しまった。忘れてた。


 慌てて正座するけれど、片淵さんは笑顔を崩さない。まさかバレたかな……?


 ごろ寝からベッドに胡座をかいて座った片淵さんが笑顔を崩さずに言う。


「まあ、アタシもそうだかんねー。良く全校集会とかで胡座かいてると太田さんとかに怒られるんだけど、別にいいじゃんねー」


「そ、そうですよね」


「でも準ちん、真面目っ子だから足崩して座るかと思ったら、胡座かいたからちょっとびっくりしたよ、うんうん。絶対紀子ちんと同じで正座するか、お姉さん座りすると思ってた」


「え、ええっと……あはは、私もあまり正座とか得意じゃなくて」


 はぁぁぁぁぁぁぁ……びっくりした。とりあえずバレなかったみたいだけれど、座り方にも気を付けないといけないなあ。


「小山さーん。メール送ったからリンク先見て」


「あ、は、はい」


「今から行くボーリング場はネットで会員登録しておけば安くなるんだよねー。あたしたちは既に登録済みだから、小山さんもよろしくねっ」


「分かりました」


「あ、あのっ、私も……」


 正木さんがおずおずと携帯を出してきたので、再び携帯を出すと、


「おおぅ、んじゃあアタシもアタシもー」


 片淵さんもベッドから降りて携帯を取り出す。ちょ、ちょっと待ってね!


 アドレスを3人と交換し終わったら、岩崎さんがぴっと立ち上がった。


「よーし。じゃあ制服のままじゃまずいだろうから、一旦家に戻って着替えないとね。駅の北口待ち合わせにしよう。30分後くらい!」


「いーよー」


「んで、ついでに小山さんの部屋に色々持ち込もう」


「……えっ」


 ニヤリ、と笑う岩崎さんと片淵さん。


 ……あ、これは頻繁に部屋に来るつもりですね、分かります。


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