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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第12時限目 測定のお時間 その15

「んじゃあ、ちっちゃい頃のこやまんって将来の夢とか何だった?」


「夢かあ」


 中居さんの言葉に、小さい頃の記憶を掘り起こしてみるけれど、特段何か夢があったかというと……。


「うーん、なかった……気がする」


「マジぽよ? スポーツ選手とか、校長先生とか、イケメン俳優とか、ネットでの有名人とか、そういうのもなかったん?」


 何だか後半はちょっと違う毛色のものが混じっていたような……ま、まあいいか。


「うん。スポーツは出来ないわけじゃなかったけど、小さい頃から割と勉強ばかりしてたからね」


「うえへぇ……」


 勉強、といったところで嫌そうな顔をする中居さん。


「多分、強いて言えば……有名大学とか有名企業に入ること、とかだったのかも」


「何だか、生まれたときからお硬い人間じゃん……。何、お母さんとかお父さんとか、マジコワ系だったん?」


「ううん。どちらもあまり勉強しろって言うタイプじゃなかった……というか家に居ないことが多かったから」


「そーなん?」


「うん」


 多分、研究とか色々忙しかったからなんだと思うけれど。


「そういう中居さんは?」


「んー、何だったかなー。あ、1つだけ覚えてるのは……」


 にこり、と笑ってから中居さんが言った。


 あ、分かった。


「お嫁さん」


「…………あー、うん」


「何ー、こやまん、反応薄いじゃん?」


「何となく予想はついてたから」


「えー」


 工藤さんもそうだけれど、こうやって私をからかうのが好きだし、絶対言うって分かっていた。


 うん、うん、私も成長したなあ。


 そして、こうやってからかおうとしたたちには毅然きぜんとした態度で接しないとね!


「ホンキかもしんないじゃん?」


「本気なら、そんなにニヤニヤしながら言わないでしょう」


「あはは、まあそりゃそうだよねー、分かりみー」


 何か、新しい言葉が出てきた気がするけれど、多分文脈からして分かる、ってことなんだと思う。


「そういえば、男の子はあまり旦那サマになるのが夢、っていうのは聞かないよねー」


「そういえば確かに」


「こやまんは結婚とかしたいと思ってるの?」


 結構踏み込んだ話をしてくるけれど、私は出来るだけ冷静に、


「まあ、したいとは思ってるよ」


 と答えた。


「ふーん……」


 さっきよりは悪戯いたずらっぽくというか意地悪っぽくというか、そんな笑顔で中居さんが私を見るから、折角頑張って落ち着いた感じを出していたのに、


「な、何?」


 と少し焦りの感情が漏れ出させてしまう私。


「ナイショ。そんじゃねー、こやまん。あんまり長いことサボってたら怒られるぽよー」


 ひらひらと手を振って、中居さんは小走りに去っていった。


 む……やっぱり、最終的にはもてあそばれた感が。


 でも、目的を済ませたというのに、あまり長いこと教室に戻らなかったら、また太田さんが怒りそうな気もするし――


「ありゃ? 小山さん、まだ戻ってなかったの?」


「あ、咲野先生」


 長椅子から立ち上がったところで、咲野先生に見つかった。


 もちろん、既に体操服からスーツに着替えているけれど。


「あれ、中居と一緒に出ていかなかったっけ?」


「中居さんは先に戻りました。私も今から戻ります」


「そう? んじゃ、一緒に戻ろっか。そろそろ戻らないと、萌にお説教されそうだし」


 咲野先生はそう言って、歩幅を少し短くして歩を進めたから、私はその横に並んで歩く。


「あ、小山さん」


「はい?」


 突然掛けられた言葉に、私は多分きょとん顔をしていたと思うけれど、隣で歩いている咲野先生に疑問符を返した。


「学校は大分慣れた?」


「そうですね。慣れたといえば慣れましたが……前の学校と違うところについては、まだ慣れないところもあります」


 いや、もっと慣れていないのは、女子トイレに入ることとか、女の子とお風呂に入ることとか……慣れたら駄目なところだとは思うけれど。


「そっかー。前に居たのは二見台だったっけ? あそこ、ガチガチの進学校だもんねえ。なんでこの学校に来たのかびっくりするくらい」


 他の子にも前にもそんなこと言われたような。


 というか、そこまで二見台が有名だとは知らなかった。


「西条学園もそんなに学力的に低い気はしないですが」


「んー、まあそりゃあ、皆……あ、先生たちも生徒たちも含めた皆だけど、頑張ってるからね。でも、流石に二見台には勝てないしねー」


「勝つ?」


「あー、あれあれ、全国統一模試とかの平均値」


「あれって、やっぱり先生たちには気になるものですか?」


 私の問いに、咲野先生は少しだけ考えてから頷いた。


「まあ、気になるといえばやっぱり気になるよね。だって、アタシたちがどれだけ皆にちゃんと勉強を教えられているか、っていうことの証左しょうさってあれくらいしかないしさ」


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