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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第12時限目 測定のお時間 その10

「今、1センチなんて誤差だろうって顔をしたね?」


「うえぇ!?」


 突然心を読まれたような発言が聞こえて、私は変な声を出した。


 あれ、私いつの間にか心の声が漏れ出るような特殊能力に目覚めたっけ? と思ったけれど、もちろんそんな訳はない。


 桜乃さんが言うには表情から読み取られてしまったらしいから、よっぽど分かりやすい顔をしていたみたいだし、もうちょっとしゃきっとしないとね、しゃきっと。


「確かに、この1センチが有意差ゆういさであるかどうかは不明だが、少なくとも数字としては増加が見られるのだ。それは間違いないのだから、それを信じるのは私次第だ」


 私の内なる言葉にへそを曲げるのかと思いきや、むしろふふんと胸を張って言い、


「それに、そういう小山さんも仲間だろう?」


 ギランッ、と私を見る桜乃さん。


 ……文脈から想像するに、今の仲間というのはつまり胸部装甲的な意味でなんだろうけれど。


 一般的にそういうものなのか、それともやっぱりこの学校独特なのかは分からないけれど、こうやって大きさについて仲間意識を持ったりするのって普通なんだろうか。


 私にはちょっと分からない世界だけれど、やっぱり気になることなのかな、大きさって。


 とまあ、色々考えはしたのだけれど。


「ま、まあそうだね。確かに、大きくなりたいといえばそうかも、しれない」


 返事を求められたみたいなので、私は出来るだけ苦笑成分を見せないようにしつつ、笑顔で答えた。


 もちろん、私のお山は偽物だから大きくなるわけがないのだけれど、ここで別に気にしてないというと男と勘ぐられる……ことはないだろうと最近自分でも思うようになってきたものの、やっぱりこう、仲間意識的なものがありそうだったから、私は同意した。


 その言葉を聞いた桜乃さんは、


「まあ、とにかく小山さんもちゃんと測ってもらうといい」


 と頷いてから、満足そうな表情で坂本先生の前に座った。


 ま、まあ本人が満足そうなら良いよね、って思っていたら、


「それでは、胸囲の測定をしますので、上を脱いでください」


 と現実に引き戻される声が隣から飛び出してきたので、


「あ、はい」


 とややお間抜けな声の後に、上を脱いだ。


 しばらく、私が巻尺まきじゃくのひんやりした感触に若干の気持ちよさを感じていると、


「……はい、終わりました。このサイズだと、ブラのサイズはAの75が最適かなと思います」


 測定後に柿崎先生が、メジャーを片付けながらそう言った。


「そうですか」


 胸囲測定終了後の女性として正しい反応を答えなさい、という設問があったとしたら、今の回答は多分バツ印が付くだろうと自分でも思う。


 でもほら、前に岩崎さん、片淵さん、中居さんと下着を買いに行ったときに中居さんに渡されたのがそんなサイズだったような気がするし、確かにフィットしていた気はするから、今更驚くほどでもないし……。


「小山さんの場合、全体的に無駄な脂肪がほとんど付いていないので、脇辺りから持ってくることもあまり出来ませんし、残念ながらこれ以上のボリュームアップは難しいかもしれませんね……」


 柿崎先生の言うことに、私は小さく首を傾げたけれど、そういえば大隅さんのお姉さんに試着室に連れ込まれたとき……いや、私が入っていたところに侵入されて、サイズアップブラの着け方を教えてもらった際、確かにそんなことをしていたような。


 あのときは寄せてあげてがとても痛かった記憶しかなかったし、ただただ世の女性は大変なんだなあと尊敬する。


「ええ、本当に無駄な脂肪が付いていなくて非常に良い体をしていると思います」


 そう言いつつ、柿崎先生はぺたぺたと私の体を触ってくる。


 ……あれ、やけにボディタッチ多くないですかね……?


 益田さんも、初めて会ったときにやけにボディタッチしてきたけれど、これもこの学校特有のもの……?


 考えすぎると深みにはまりそうな気がしたので、あまり考えないようにして、私は本日使用回数の多い愛想笑いとありがとうございましたという感謝の言葉で切り抜け、校舎の外に停めてあると柿崎先生に教えてもらったレントゲン車へ。


 私が踵をトントンとしながらレントゲン車に近づいたところで、丁度レントゲン担当の先生らしき人が出てきて、左右を見てから、


「次の方……あ、どうぞー」


 と中へうながされたから、


「あ、はい」


 と私も促されるがまま、履きかけの靴を再び脱いで入った。


「……あ」


 中では丁度、上下下着姿で、スカートを手に持った工藤さんと目が合った。


 レントゲンを撮ってくれる先生が居たから声には出さなかったのだと思うけれど、工藤さんの口がこう動いたのははっきり見えた。


『えっち』


 む、無実……じゃないけどこれは仕方がないでしょう!?


 というか、工藤さんは名簿順的に私の前だって分かってるはずだし、教室で皆着替えているんだから、戻ってから着替えれば良かったのに!


「小山さん?」


 怪訝けげんそうな顔でレントゲン担当の先生が私を見るので、


「あ、いえ、すみません」


 着替え中の工藤さんから視線をがした私は頭を下げてから、レントゲン室に入った。


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