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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第2時限目 お友達のお時間 その12

 渡部さんと並んでスロープを上がる。


 そう。何故か地下室へは階段だったのに、建物をぐるりと見回しても上り階段は見当たらず、スロープがあるのみ。目の前のスロープを上ってみても更にスロープ。もしかして、これは俗にいうバリアフリーの建物なのかな?


 そして、教室の配置も不思議。一般的な学校は廊下が一直線になっていて、そこに教室が同じ方向で並んでいるけれど、ここは壁に沿うように教室が並んでいる。中央のスペースを埋めてる部屋は……カフェテリア? 何か変わった建物だなあ。


「んじゃあ、とりあえず転校生探してくるから……ありゃ」


 渡部さんに並んで最上階の3階まで上がってくると、一番手前の部屋の扉から咲野先生が部屋の中に手をひらひら振りながら出てきて、私と視線が合った。


「あれ、小山さん、こんなとこに居たの? あれか、遅刻したから教室に中々入れないやつだね? 分かる分かる。アタシもたまに遅刻して真雪ちゃんに――」


「あ、いえ、今丁度上がってきたところです」


 咲野先生の言葉を遮ってこちらの要件を話す。多分、待ってたら延々と話してそう。


「そうなの? まあいいや。探しに行く手間省けたし。小山さんが自己紹介だけしたらもう今日は終わりだし。ほら、ちゃっちゃと入りなー」


 先生に手を掴まれつつ、教室の中に入ると当然の如く全員に注目される。ああああ……今更だとは分かっていても。あまり注目とかされたくないのに!


 後ろを向くと、その後から渡部さんが徐ろに部屋に入ってきて、自分の席に座った。


「えー、さっきも話したと思うけど、このクラスに転校生が来ました。まあ、仲良くしてあげて。はい、小山さんご挨拶」


「えーっと……小山準です」


 言いながらクラスを見回すと、正木さんの安堵した顔、真ん中辺りにニヤリと笑っている岩崎さんと片淵さんの姿が見えて、私も少し落ち着いた。困ったときは知っている顔を探すのは仕方がないよね。


 お陰で少し落ち着きを取り戻せたから、自己紹介の続きをする。


「二見台高校から来ました。よろしくお願いします」


 無難な挨拶が終わると、横に立っていた咲野先生が人差し指を立てて高らかに言い放ち、


「じゃあ、質問タイム――」


 言い終わる前にチャイムが鳴る。


「――と言いたいところだけど、残念ながらタイムアップだし、聞きたい人は後で個人的に聞いてね。んじゃあ号令、太田さん」


「起立!」


 こちらも見覚えのある、寮に居た眼鏡の仕切り娘、太田さん。


「礼! ありがとうございました」


 皆が頭を下げるのに合わせて、私も壇上のまま頭を下げ、頭を上げたら既に咲野先生が教室を出ようとしていたから、慌てて私は追いかける。


「ちょっと先生!?」


「え? どったの?」


「どったの? じゃないですよ! 私の席は? 明日からどうすればいいんですか? 時間割とか色々ありますよね!?」


「あー、それね。席はほら、一番奥のあの日当たり良好のとこ。窓際最後尾、寝ててもバレにくいベストポジションだ! やったね、羨ましいぞこのやろー! で、明日からはふつーに来ればいいよふつーに。時間割その他諸々の書類は机に置いてあるからそれを見て! んじゃねー、アタシこれから職員会議その2があるから。……あー、まあ多分、また真雪ちゃんに怒られるんだけどさー……」


 私の質問に全部答えてくれたのは答えてくれたけれど、作業終わらせました感が酷い咲野先生はひらひらと手を振って行ってしまった。ああう……まあ、いっか。


「小山さん、大丈夫ですか?」


「小山さーん?」


「準ちんも大変だねえ、はっはっは」


 自分の席に行こうと思ったら、私の目の前に仲良し3人娘が立ちはだかった!


 いや、別に机に行くのを遮ろうとしたわけじゃないと思うけど。


「大丈夫でしたか?」


「あ、はい、大丈夫です。渡部さんの電池が……あ、皆さん渡部さんがロボットだってことは?」


「知ってるよー。だって、学校の七不思議の1つだしね」


 私の肩に軽く体を預けつつ、ちらりと渡部さんを見て岩崎さんが言う。ああ、確かに渡部さんみたいにかなり人間に近いロボットが存在している時点で不思議といえば不思議かも。これで七不思議3つ目かな、って別に七不思議を集めるのが学校に転校してきた目的じゃないんだけれど。


「えっと、渡部さんの電池を交換するのに時間が掛かって……」


 みゃーちゃんの話は伏せておいたけれど、


「ふーん。でも結構走るの早いんだね。中々小山さんが来ないから、皆スロープ前で待ってたんだけど、色んな子をかわしながら地下室まで走っていく小山さんの姿が見えたんだよね。ねえ、ウチに入らない? もう3年だから大会とかは出られないけど、ああいう人が居ると結構後輩の子とかやる気出るんだよね! ほら、アタシ陸上部じゃん?」


 岩崎さんにとってはどうやら興味無しの様子。まあ、下手に追求されなくて良かったのかな。


 後、じゃん? って言われても知らないです。確かにちょっと日焼けした肌だから、言われてみればそうなのかも、って思う程度ではあるけれど。


「あ、あはは……遠慮しときます」


「準にゃんも初日から大変だねえ」


 ツインテールの片淵さんは他人事のように笑う。……ていうか他人事だから仕方がないよね!


「と、とりあえず席の荷物取っていいかな?」


 先生が言ってたプリントを確認したいし。


「良いよー。んじゃま、取ったら小山さんちに押しかけましょうそうしましょう」


「え?」


「ちょ、ちょっと真帆……」


「いいじゃんいいじゃん。ほら、小山さんって寮暮らしなんでしょ? 1度くらい行ってみたかったんだよねー、うちの菖蒲園。ボロっちいけど広いって噂だし」


 思い出してみると……言うほど古くはないけれど、新しいか古いかの2択を迫られたら確かに古いと言うべきかもしれないとは思う。そして、確かに広い。


「それに結構部屋空いてるんでしょ? せっかくだし、空き部屋使わせて貰わない?」


「駄目よ」


 ぴしゃりと制する声。声の主は、ある意味寮長よりも強権を持っていそうな眼鏡っ娘だった。


「うえぇー、太田……」


 岩崎さんが心底嫌そうな声を出す。その声にむっとした表情を作る太田さんだったけれど、再びキリッとした表情に戻して言う。


「小山さんの部屋に行くこと自体は構わないけれど、空き部屋を勝手に使うことは許されないわ。まあ、そもそも鍵を掛けているから、勝手に入れないようになっているけれど」


「はいはーい。んじゃ、小山さんちへレッツゴー」


 プリントを確認していた私の肩を押しながら、さっさと教室から押し出そうとする片淵さんに、私は慌ててプリントを鞄に仕舞う。どうやら片淵さんもあまり太田さんとは仲が良くなさそう。まあ、太田さんは少し厳しいところがあるからなあ。


「小山ちーん、良いよね? 大丈夫大丈夫、あたしたちも片付けとかあるなら手伝うからさー」


「わ、分かりました」


 本当のことを言うと、引っ越ししてきたばかりだから色々買い出しに行こうかなと思っていたのだけど、後回しでも問題ないし。プリントとかは帰ってからゆっくり読もう。


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