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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第11時限目 写真のお時間 その24

 完全に危険人物と認識されてしまった私は、お風呂の角にざざざあっっとお湯をかき分けて離れていった星野さんからの拒絶きょぜつ嫌悪けんお憤怒ふんぬなどなど、私に対するネガティブというか負の感情を全て混ぜ込んだ視線を受けて、居たたまれない気持ちになった。


 ……いや、自分のせいなんだから、居たたまれないというのはおかしな話なのかもしれないけれど、でもこの人生氷河期状態について、他に適切な表現方法が見当たらない。


 何にしても、状況が最悪であることは明白で。


「…………」


 口を開こうとしても、何も言葉が出てこない辺り、空気が無くなって声が届かなくなったんじゃないかって錯覚をするけれど、ただただ単純に掛ける言葉が見つからないだけ。


「もう1度、尋ねますわ」


 ぱくぱくと金魚みたいに口を開けていた私を、星野さんは一切の感情を捨てたような表情で睨んでから言う。


「貴方は、男ですのね?」


「…………はい」


 迷いのない星野さんの言葉に、私は頷いた。


 流石に『それ』を見られて、女だと言い訳するのには無理がある。


「何故、この学校に?」


「え、ええっと……」


「やはり、女子生徒のから――」


「ち、違います!」


 少し口籠くちごもっただけで全く違う、それも最悪な方向に解釈されそうだったから、私はとにかく素直に事情を説明した。


 一切、包み隠さず。


 黙って聞いていた星野さんは、私が説明を終えると、そう尋ねた。


「間違い……でも、学園長や理事長も知っているということですの?」


「学園長さん……はどうなのか分からないけれど、少なくとも理事長さんと寮長さんは知っています。後は……みゃーちゃん、地下室の猫耳付けたあの子も知っていました。その他には――」


「知っている人物についてはどうでもいいですわ。何にせよ、特定の人物は既に知っていた、ってことですわね?」


「そういうことに、なります、ね」


「何故、黙っていたのかしら?」


「すぐに転校する予定だったから……ただ、実際は学校側が転校するためにも手続きがまだ終わらないみたいなので」


 そういえば、未だ転校の話って理事長さんに聞きに行ってない。


 片淵さんとの約束もあるし、本気で転校するかどうか、という問題もあるのだけれど、こうなった以上はすぐに転校しないといけない気はしている。


「ああ、そう」


 吐き捨てるような声で、星野さんが再び私を睨み、体を隠しながら言葉を放つ。


 ……分かってはいたけれど、結構辛い。


 いや、分かっていたつもりで、結局分かってはいなかったんだ。


 自分が引き起こした結果なんだから、いつかはこうなって当然だったのに。


「理事長のところに行きますわ。この状況、説明して頂く必要がありますから」


「……はい」


「今すぐ」


「い、今すぐ?」


 流石に、理事長さんももう帰ってるんじゃ……?


「先に出て着替えなさい」


「……はい」


 殺傷能力すら持っていそうな、星野さんの視線に私は了承の意を唱える以外に何も出来ず、湯船から立ち上がった瞬間、浴室の扉が開いた。


「…………」


 現れたのは、今朝もぺったり髪の毛だったのを、ドライヤーとくしでもふもふ状態に仕上げてあげた工藤さん。


 というか、工藤さんは朝も入ってた気がするけど、夜も入る派なんだ……ってそんなことはどうでも良くて。


工藤華夜くどうかよ! 貴女もすぐに体を隠しなさい! この小山準は男ですわ!」


 工藤さんが浴室の扉を閉めたタイミングで星野さんがそう叫ぶと、


「……知ってる」


 と工藤さんが淡々と答えて、バスチェアに座る。


「知って……る? 何故!? いえ、知っている理由はさておき、貴女……ここに男が居ることに不思議を感じないのかしら!?」


 おもむろにこちらを向いた工藤さんは、


「別に」


 とだけぼそりと言葉を投げて、頭を洗い始めた。


「別に……って、お、お、男ですのよ!? 何故、そんなに冷静を保っていられますのぉ!?」


 確かに星野さんの言うことの方が一般的に考えれば正しい気がする。


 というより、工藤さんは私が男だって初めて知ったときもあまり驚いている様子は無かった。


 この辺りは性格的なものと、園村さんの秘密を共有している仲だからということもあると思うけれど、そもそも工藤さんが黄色い声で叫ぶ様子はあまり想像出来ない。


 唯一、感情らしい感情を見せたのは、お風呂で停電になったときに震えていたときくらい?


「準、今失礼なこと考えてなかった?」


 髪を洗う手を止めて、私をいつもの薄い感情しか読み取れない瞳でこちらを見る工藤さんに、私は苦笑しながら首を横に振った。


「いやいや、そんなことはないよ」


「あ、貴女たち……!」


 普通に振る舞っている私たちに腹立たしさを覚えたのか、星野さんががばっと立ち上がって言い放つ。


「絶対に、おかしいですわ!」

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