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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第11時限目 写真のお時間 その18

「あ、しまった」


 そういえば、正木さんたちを待たせていたんだった。


 流石に最近使い方を覚えてきたコミュチャで正木さんに連絡しようとすると、


「あれ?」


 桜乃さんのお母さんから何やら連絡が来ているようだった。


 コミュチャの中身を見ると、


『すみません! あの肌色の接着剤と女の子用パーツのことですが……』


 と始まっていて、一体何があったんだろうと慌てて読み進める私。


 ……ただ、読んでも読んでも何だか専門的な文字の羅列られつばかりで結局何が言いたいのかが分からず、とりあえず何か問題があったらしい? ということ以外は理解が出来なかった。


 うん、あまり時間が無いし、後で読み直そうと心に決めた私は、元々の予定通り正木さんに連絡をして、岩崎さんたちにも連絡しておいてもらうように言葉を添えてから、机にスマホを置いて部屋を出た。


 階段を降りると、階下には玄関から洗面所に向かって点々と続く濡れた点線が見えて、何だか懐かしいな、なんて苦笑しながら洗面所を覗くと。


「……」


 彼女……星野さんは、ずぶ濡れのまま洗面所に立っていた。


 これも出会ったときの……いや、最近もそうだけれど、工藤さんと同じ。


「そのままじゃ、風邪を引いちゃうから、先にお風呂に入ってていいよ」


 廊下の小さな雫で作られた線を消すために、雑巾片手に廊下へ出てから、玄関から続いている水の線を雑巾で消していると、


「……何してるの」


 私の後頭部辺りに熱量のない声が降ってきた。


「ん? ああ、えっと……工藤さんみたいに、廊下をびしょびしょにした子が居たから、濡れた後を拭いてただけだよ」


「……そう」


 興味なさそうにそう返してきた工藤さんの後ろから、


「華夜、何をして……あら、小山さん?」


 と最近寮での遭遇率が高い気がする制服姿の園村さんが、工藤さんの後ろから現れたと思ったら、私を見つけるなり、そう声を発した。


 私はさっき工藤さんにした話をそのまま園村さんにもしてから、ふと思い出した懸案事項を口にした。


「そういえば、制服って洗濯機に掛けても良いんでしょうか?」


「え?」


「?」


 ああ、質問が唐突すぎたかな。


「ええっと、制服が汚れたときってやっぱりクリーニングに出さなければならないのか、それとも家で洗濯出来るかをちょっと知りたくて」


 星野さんの名前を出さずにそう尋ねると、園村さんはおもむろに自分の制服をまくり上げて、脇辺りにある服のタグを見せてきた。


「この洗濯表示のタグを見れば分かりますが、洗濯機不可、手洗い可となっています。なので、家で洗うことは出来ますが、洗濯機は無理ですね」


「ああ、そうなんですね。ありがとうございます」


 私がお礼を言って、頭を下げると、


「あ、小山さんの制服が汚れてしまったんですか? 良ければ、洗いましょうか?」


 とたおやかな声で園村さんが申し出てくれる。


 有り難い申し出ではあるけれど、今回はちょっと事情が事情なので、


「あ、いえ、大丈夫です大丈夫です」


 と私は両手を左右に振って辞退した。


「千華留、違う」


 その様子を見て、そうですか? と少し残念そうな園村さんに対して、工藤さんは横に首を振ってから、人差し指を洗面所の方へ向けた。


「あっち」


「あっち?」


「準がずぶ濡れの誰かを囲ってる」


「囲ってる訳ではないんだけど……」


 やっぱり、工藤さんは変なところで鋭いというか。


 ……いや、さっき私が自分で言ったからか。


 事情が飲み込めたのか、まだ分かっていないのかは分からないけれど、


「小山さんがまた何かされているのは分かりました。あまり無理されないようにしてくださいね」


 と微妙な笑顔を向けて、工藤さんと去っていった園村さんに手を振ってから洗面所に戻ると、さっき全く同じ格好のまま、立ち尽くしている星野さんの姿がそこにあった。


 私は両手を腰に当ててから、


「……はぁ、全く」


 言うことの聞かない悪い子供に、さてどうやって注意しようかというみたいな格好をしてから、私は自分の服を手早く脱いで、


「はい、ばんざーいして」


 と子供に向けるような声を掛けた。


 ちらり、と星野さんはなにか言いたげな目で私を見たけれど、言われた通り、両手を上げた。


 濡れた制服から下着まで全部私が脱がせてから、一糸まとわぬ姿になった星野さんは、私が渡したタオルでがっちりと体を隠して、


「はい、じゃあ入ろうか」


 と言った私の後をそろりそろりと付いてきて、浴室に入ってきた。


 少し居心地が悪い私は、シャワーでさっさと頭と体を洗いつつ、隣に座った星野さんに、


「あ、シャンプーとかは私のを使っていいから」


 と使い終わったものから次から次へ渡していく。


 受け取った側の星野さんは無言のまま恐る恐るそれを手に取り、頭や体を洗い始めたから、私は一安心して入浴剤で黄色っぽくなっていた浴槽に入る。


「んはぁー……こほん」


 思わずだらしない声が出てしまい、それを誤魔化すように咳払いしてから、私は星野さんに視線を向けると、私の視線に気づいたのか、こそこそと体を隠しながら頭と体を洗っていた。


 あの行動、どう見ても私が男だって分かってるよね……?


 なのに、ホイホイとお風呂に付いてきたってことは、もしかして強制的に脱がされた! お風呂に入って素肌を見られた! とかいう状況を作り出そうとしているとか?


 まあ、その辺りは後で聞いてみて……ってそれじゃあ遅すぎない!? 


2019/2/19 誤字含め修正

投稿直後ですが、全体的に推敲のレベルが低すぎたため修正しました

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