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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第11時限目 写真のお時間 その6

 とはいえ、あのあからさまな監視しています! という視線は非常に居心地が悪い。


「うーん……」


「どうする? さっさと食事終わらせて教室戻る?」


「そうだね……」


 噂を鵜呑うのみにしない方が良いとは思うけれど、あの2人は情報収集について手段を選ばないみたいだから、下手に刺激しない方が良いというのは分かっている。


 だから、気が済むまで監視させておけばいいかなと思ってはいたのだけれど、ここまで凝視されるとは思っていなかった。


 おそらく今の状況からして、教室に戻ったとしても監視場所が教室に移行するだけだから、実質的な違いはないだろうから、早く食べて教室に戻るのは根本的な解決にはならないだろうと思う。


「あたしが止めるように言ってこようか?」


 岩崎さんが心配してそう言ってくれるけれど、私は首を横に振る。


「ううん、何かあれば私自身が言うから大丈夫」


「そう? それならいいけどさ……」


 何より、岩崎さんが言いに行くことで、岩崎さんに迷惑が掛かってもいけないし。


 私と写真部2人の視線のやりとりは、昼食が終わった後、授業中も続いた。


 写真部2人の席は星野さんも桝井さんも教師の視線が届きやすい、教室の中央辺りに配置されているのだけれど、漫画のキャラクターが早弁はやべんするように教科書で顔を隠しながら、ちらちらとこちらを見てくる。


 特に星野さんの振り返る頻度は多くて、これ絶対に先生も気づいているよねと思うのだけれど、特に注意されていない様子からして、先生たちも噂通り何かしら弱みを握られているのでは、と思わないでもない。


 というか、そんなに頻繁ひんぱんに私を見たところで、新たに情報は何も無いと思うけれど。


「…………お疲れ様」


 結局、放課後になるまでその視線は続いていて、疲弊した私の肩をポンポンと叩いて、声を掛けてきたのは岩崎さんだった。


「今後も、ずっとこんな感じなのかなー」


 机に突っ伏して、私がため息混じりに言うと、


「やっぱり、ちゃんと言った方が良いんじゃないかねー」


 と片淵さんが苦笑いする。


「やっぱり、そうかなあ」


「今のままだったら、多分向こうも諦めないと思うしねー」


「うーん……」


 私は少し唸ってから、


「対処方法というとなんだけど、向こうがもう私を追いかけ回さないように、向こうが満足するまで情報を与えてしまうっていうのはどうなんだろう」


 と意見を出してみたけれど。


「多分、それやり始めたら、準の全ての情報を聞き出した上で、交友関係のある人たち全員の情報を吐くまで帰れないと思うよ」


 と呆れ顔で言った岩崎さん。


「……まあ、やっぱりそうなるよね。とすると、やっぱりきっちり言うか、あの2人に好きなようにさせておくしかないのかな」


「と思うけどねー」


「ってか準ってさ、こういうときすごく優柔不断だよね。もっとはっきりと言っちゃって良いと思うけど」


 ばっさりと断じた岩崎さんの言葉に、私はあははと苦笑いするしかない。


 この性格、全然直らないなあとは自分でも思う。


「あ、そういえば、岩崎さんはあの2人から……」


「ん?」


 私が途中まで言い掛けた言葉を仕舞ったのを見て、岩崎さんは首を傾げた。


「え、えっと、いや……」


 言い掛けた内容は、あの岩崎さんとの軋轢あつれきを生んだ、吸血鬼情報を入手したときの話を、どうやって入手したかということだったのだけれど、またこの話をしたことで再度岩崎さんとボタンの掛け違いみたいなことになってしまったら嫌だなと思って、私は口を噤んでしまった。


「何? もし何か言って、また機嫌悪くしたらーとか思ってるんだったら心外だけど」


 頬を膨らませるようにして、岩崎さんが私を凝視する。


「う……」


「アレでしょ、吸血鬼の件でしょ」


「……うん」


 はぁ、と深く溜息を吐いた岩崎さんは、


「あのときは、あたしも1番慕したってくれてた後輩が倒れたばかりだったから、気が立ってただけ。冷静に考えたら、いくら何でもこじつけすぎだったしね」


 腕を組んで、岩崎さんが続けた。


「だから、ちゃんと聞いてくれれば話すって」


「そっか」


 私は、左右を固めた正木さんと片淵さんの柔らかい笑顔を受けつつ、


「……岩崎さんはあの2人から、どうやって吸血鬼の情報を手に入れたの?」


 と疑問を口にした。


「んーとさ、丁度その後輩が倒れたときにあたしもすぐに保健室行ったの。そしたらそれよりも先にあの2人が取材っていうか、情報を入手しに来てたんだよね。で、色々尋ねてたんだけど、後輩の子も他の子たちと同じで全く記憶が無いわけ」


「……」


 私は黙ったまま、軽く頷くだけに留めておいた。


 これは、下手に口を開いたら要らないことを言ってしまわないかという不安もあるけれど、何よりも岩崎さんの話を邪魔したくないという意識の方が強い。


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