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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第11時限目 写真のお時間 その5

「……で?」


 昼食中。


 女子にしては相変わらず大きな、と言ったら健啖けんたんな女性から反論を受けるかもしれないけれど、お弁当箱を持ってきて元気に箸を進める岩崎さんが、私をジト目で見ながらそう言葉を発した。


「で、と言うと?」


 私だって分かっているけれど、一応知らないフリをして言う。


「いや、どう見てもアレ、準を見てるでしょ」


 そう言って、岩崎さんが持っている箸の背中で指し示した先には、身長が結構高いから長くすらっとした足をテーブルの外に出している桝井さんと、相変わらず体の一部のようにカメラを抱えた星野さんの姿。


「そうかな?」


「そうでしょ」


「……まあ、そうだよね」


 勘違いだったらいいなー、程度に思っていたけれど、こっちをガン見してくるわ、こちらが視線を合わせてしまえば桝井さんがウインクしてくるわで、確かに星野さんが言っていた通り「監視している」様子が見て取れた。


 そして、その行動はかなり露骨なので、その2人に限らず、カフェテリアに居る知っている人、知らない人がこちらをちらちら見てくるのが非常に落ち着かない。


「にゃはー、案外早かったねー、あの2人に捕まるの」


 呆れ半分、笑い半分で言う片淵さんの言葉に、私は苦笑を隠せない。


「そうだね……」


 まあ、回避できれば回避するつもりだったんだけれど、まさか向こうから、それも物理的なやり方で捕まるとは思わなかった。


 今年に入ってから……というかたった1、2ヶ月で2回も同じパターンで気絶させられるって、そんなに私の頭って殴りやすいのかな。


 それか、実は背中に『私の頭を殴ってください』的な貼り紙がされているとか。


「変なこと聞かれたり、されたりしてない?」


「うーんと……してると言えばしてるし、してないと言えばしてないというか……」


「え、どういうこと?」


 岩崎さんの質問に、私は返答にきゅうしていい加減なことを言ったから余計に岩崎さんが混乱した。


 実際のところ、岩崎さんの質問に対して、吸血鬼問題の解決と大隅中居ペアと仲良くなった方法の調査のために監視されているというのが正答なのだけれど、前半部分の話題を出してしまうと、また岩崎さんの機嫌を損ねるまではいかずとも、微妙な雰囲気になるおそれがあるから出したくない。


 そうすると、必然的に私は後者の話題しか話せないことになる。


「いや、大隅さんとか中居さんと仲良くなった手法を知りたいとかなんとか……」


「あー、なるなる。準にゃん、ホント転校してすぐに交友関係広がったしねー」


 ふーん、で終わる内容かと思いきや、片淵さんが即座に反応した。


 そういえば、片淵さんも友達を作る秘訣がどうこう言っていた気がするし、その辺りには興味があるみたい。


「まあ確かにねえ。ってか、あの堅物かたぶつの太田とも仲が良いんでしょ?」


「仲が良いというほどではないけど……」


 まあ、あのアメとムチ事件というか、中居さんを追いかける前にぎゃんぎゃんやり合った太田さんと仲直りしてから、すれ違う際に声を掛けるとかはするようになったし、寮でも少しずつ世間話をするようになった。


 そして、こちらの方が個人的には驚きだったのだけれど、極稀に太田さんと大隅さん、中居さんが喧嘩腰ではなく、普通に会話している姿も見るようになった。


 いや、別に喧嘩しているのが普通って訳ではないよね? と思われがちだけれど、少なくとも私が今まで見た限りでは、太田さんと大隅さん、中居さんと喧嘩していない姿は無いくらいだった。


 まあ、大隅さんも中居さんがほとんど授業をサボることが無くなったからかもしれないけれど、太田さん自身も大分柔らかくなった気はする。


「アタシも準にゃんの手腕しゅわんを参考にしたいねー」


「別に、特別なことは……」


 分かる人は、分からない人が何故分からないのかが分からないという、禅問答ちっくな話と同じで、自分自身特別何かをしているわけではないと思っているのだけれど、他の人から見たら特別に見えてしまうのもあるのかもしれないと思う、なんてことは前にも考えたような。


「準にゃん見てたら、やっぱりあれだよねー。多分、真摯しんしに相手と向き合うのと、相手に合わせた行動が上手いんじゃないかなって思うねー」


「そう、なのかな」


「そうだよー」


 結果論としては、確かに大隅さんとか中居さんの場合は、喧嘩腰で注意するのではなく、一緒にサボろうとしたことで近づけた気がするし、太田さんや桜乃さんのときは声を荒らげてしまったけれど、真面目一辺倒で相手と向き合うことは出来たつもりではある。


 ただ、正直なところ、今まではラッキーが続いただけで、本質的に相手に合わせた行動が出来ているとは到底言い難い。


 人に喧嘩腰でどうこう、なんて言っているけれど、自分自身喧嘩腰で話をしたり、相手を煽ったりすることだってあるし。


 だからこそ、今後はもっと慎重な行動が必要だということは理解している。


 ……行動が伴うかはまだ分からないけれど。


「何にしても、小山さんが真面目だからみんなが集まってきている、というのは本当だと思いますよ」


 そう正木さんが笑ってくれるので、私も「そうなのかも」って自己完結してしまった。


2018/12/29~2019/1/6までは更新をお休みし、2019/1/7から再更新の予定です。

また、この期間に過去の文章に対して校正を実施予定です。

ストーリー上の変更はしない予定ですが、伏線の貼り直しや表現の追加などは実施予定です。

軽微な修正については記載しないと思いますが、ある程度大きな変更点は活動報告で連絡予定です。

(各章の後書きに追記は中々に時間が掛かりそうなので……)

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