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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第10時限目 融解のお時間 その30

「……」


 みゃーちゃんは私の言葉を黙って聞いている。


「だからね、みゃーちゃんのこと、色々知りたいなって」


「……分かったにゃ」


 ふわりふわりと、みゃーちゃんの髪を撫でつけながら、私は尋ねる。


「頭を撫でられるのは嫌?」


「別に嫌なわけじゃないにゃ。頭を撫でられることが無くなって随分経っちゃったから、どうすればいいか分からないだけにゃ」


 足をぷらぷらとさせながら、そう呟くみゃーちゃん。


「そうなの? みゃーちゃんくらい賢い子なら、幾らでもそういう機会、あったと思うけど」


 忙しくて、あまり両親は家に居ないことも多かったけれど、小さい頃はテストの点が良かったときは褒められて、頭を撫でてもらった記憶がある。


 私の言葉に、一瞬言葉を詰まらせたけれど、みゃーちゃんはぽつりぽつりと話し始めた。


「みゃーは準が知ってる通り、真白美夜子ましろみやことしてテレビにたくさん出たことがあったにゃ。最初は確か、暗算が得意だったのがきっかけで、フラッシュ暗算でテレビに出てたはずにゃ」


「フラッシュ暗算って、数字が次々に出てくるのを全部脳内で足していく、あれのこと?」


 私の言葉に「そうだにゃ」と頷いたみゃーちゃん。


「みゃーのこと、皆が凄いって褒めてくれるのは嬉しかったにゃ」


 私に撫でられるがままのみゃーちゃんはじっと虚空を見つめて、言葉を紡ぐ。


「でも、1番嬉しかったのはお父さんとお母さんが喜んでくれたことだったんだにゃ」


「うん」


 私はみゃーちゃんの話を邪魔しないよう、相槌だけを打つ。


「最初、テレビに出るようになって、お父さんとお母さんもいっぱい喜んでくれたにゃ。だから、みゃーはもっと勉強して、もっともっと褒められようと思ってたにゃ。どんどん賢くなって、同じ学年の子どころか、難関大学の入試でも受かるくらいには学力が付いたし、ロボットの作り方を覚えたのもこの頃にゃ」


「凄いね」


 素直に、私の口からはそんな言葉がいて出た。


「でも、その内にお父さんとお母さんは褒めてくれなくなったにゃ」


「え、なんで……?」


 むしろ、どんどん頭が良くなっていくのだから、良いことだと思うけれど。


「みゃーが褒められていたのは、みゃーの頭が良くなったからじゃなくて、テレビに出ることでお金が貰えたからだにゃ。だから、お父さんもお母さんも幸せだったんだにゃ。でも、徐々にみんなが飽きてきて、みゃーがどれだけ頭が良くなっても、テレビに出ることも無くなったにゃ。そしたら、お父さんとお母さんもあまり笑ってくれなくなったにゃ」


「……」


 酷い、という言葉しか出てこなかった。


 自分の娘をお金儲けの道具としか見ていない。


「みゃーは考えたんだにゃ。どうしたら、お父さんとお母さんがみゃーを褒めてくれるかって。それで、幼稚園のときにやったお遊戯で、黒猫の役をしたときに可愛いって褒めてくれたのを思い出したにゃ」


「……もしかして」


 こくりと再び、小さく首を縦に振ったみゃーちゃん。


「みゃーがこんな格好をしているのは、お父さんとお母さんに褒めて欲しかったんだにゃ。でも、もう2人共、みゃーには興味は無いんだにゃ」


「そんな……」


 私が二の句を継げなくなったけれど、


「そんなときに、色々あったみゃーをこの学校に理事長が住まわせてくれたにゃ」


「理事長さんが?」


「そうにゃ。まあ本当は、学園長が理事長に掛け合ってくれたんだにゃ」


「学園長さん?」


 そういえば、たまに話題に上がるけれど、実際どんな人物なのかは会ったことがない。


「……みゃーちゃんは学園長さんって会ったことあるの?」


「会ったことはあるにゃ。でも、最近はほとんど学校には来てないみたいにゃ」


「そうなんだ」


 未だに謎の存在である学園長さん。


「どんな人なのかな」


「優しいけど、厳しい人にゃ。良いことには良い、悪いことには悪いってはっきり言ってくれるにゃ。みゃーにとっては、育ての母みたいなものだったにゃ」


 まあ、みゃーちゃんの話を聞く限りでは、両親はどちらもかなり酷い人のようだから、実質その人がお母さん代わりなのかもしれない。


「テレビにも出てないみゃーは、別に家に居ても居なくても、どっちでも良かったみたいだにゃ。だからすぐにみゃーはこの学校の地下室に住み始めたんだにゃ」


「そっか…」


「それ以来、みゃーは地下室にずっと閉じこもってたにゃ。たまに坂本先生とか桜乃が来るから、別に地下室に1人で居ても平気だったにゃ」


 なんて気丈に言うけれど、みゃーちゃんはやっぱり寂しそうだった。


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