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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第10時限目 融解のお時間 その25

「な、何だか凄いね……」


 みゃーちゃんの部屋、というか入り口側の監視室は足の踏み場もないくらいに良く分からない機械が山積さんせきしていたけれど、今回持ってきた機械も見ただけでは用途がさっぱり分からない。


「何コレ」


 そう言って、岩崎さんが手近にあった丸いボールみたいな機械を持ち上げると、


「あ、勝手に触ると危ないにゃ」


 と慌ててみゃーちゃんが言ったときには、時既に遅し。


 多分、日本語表記にすると「み゛ー!」みたいな音のサイレンが鳴り出して、驚いて手を離した岩崎さんの周りをぐるぐる回り始めた。


「ガードメカ、ボールタイプにゃ」


「ちょ、ちょっと、これ止めらんないの!?」


 ガードメカとやらにあおられているような構図の岩崎さんがあたふたしながら言った言葉に対しみゃーちゃんはむすっとした表情で答えた。


「一応、電源オフスイッチがあるにはあるにゃ。一応」


「一応って何さ!」


 裏のある言い方をするみゃーちゃんの言葉に、岩崎さんが不満の声を上げると、


「捕まえてみれば分かるにゃ」


 とみゃーちゃん。


「言われなくても、捕まえて……ってあれ?」


 岩崎さんが、自分の周りを回っているボール型メカを鷲掴みしようとしたところで、そのメカはひょいっと横に転がって難を逃れた。


 ……避けた?


「ちょ、ちょっと何、今の! こら、待ちな……ああもう!」


 岩崎さんが掴もうとしても、ギリギリのところでアラームメカがその手をかわす。


「ありゃ、あれどうなってるんかねー?」


 ボールメカと岩崎さんの、特段微笑ましいとは言えない追いかけっこを見ながら片淵さんが苦笑する。


「監視メカに付いてるカメラで様子を見ながら、捕まえようとしてきた相手の行動予測をして、回避するように動く仕組みになってるにゃ」


「え、ええっ!? それじゃあ……」


「捕まえるのは至難の業にゃ」


 呆れた雰囲気をかもし出していたみゃーちゃんだったけれど、ポケットから何やら小さな金属の棒……いや、リモコンみたいなものを取り出して、ピッとボールにかざすと動きが止まった。


「まあ、リモコン式で止められるんだけどにゃ」


「ちょ、最初から止められるんだったら止めてよね!」


 非難する岩崎さんを無視して、


「とにかく、色々持ってきてるから、勝手に触らない方がいいにゃ」


 といつもの感じのジト目でみゃーちゃんがそう言ってから、


「あ、そうだ」


 と何かを思い出したような言葉の後、私を見上げた。


「準の猫、見てみたいにゃ」


「ん? ……あ、そっか。みゃーちゃん、まだ見たことなかったんだね」


 ノワールちゃんは学校で何度も目撃されているけれど、テオは私の部屋の中で飼っているから、外には出ていかない。


 となると、私の部屋に来たことがないみゃーちゃんがテオを見たことがないのは当然のこと。


「じゃあ、連れてこようか。隣の部屋だし」


「ん」


 みゃーちゃんが小さく頷いたのを確認して、私が一旦部屋に戻ると「何か用?」と言いたげに大あくびで私を迎えたテオの首根っこを掴む。


「相変わらずテオは呑気のんきでいいよねえ」


 苦笑しながら、私はテオを定位置である頭の上に乗せ、テオを落とさないように隣の部屋へ移動した。


「早かっ……何してるにゃ」


 私の頭の上に載っている、たまに大あくびする夏の新作ふわふわ帽子を見て、口を半開きにしたみゃーちゃんが言う。


「この子がうちの子、テオドールだよ。小さい頃から私の頭の上に、妹が載せていたら定位置がここになっちゃってて」


 私が屈んで、みゃーちゃんの目線のところまでテオを下げてやると、みゃーちゃんが手を伸ばして抱き――


「あっ」


 飛び降りたテオは一直線にノワールちゃんのところへ。


 一瞬「ああ、そうか。夫婦ってそういうものだよね」と変なところで合点がいきかけていたけれど、その妄想はノワールちゃんの威嚇する声で即座に吹き飛んだ。


「ちょ、ちょっとちょっと!」


 ダンボールの中で全力猫パンチ、いや全力猫百裂拳ぜんりょくねこひゃくれつけんを放っているノワールちゃんに対し、何度かダメージを貰いながらもちょっかいを掛けようとするテオを、1番近かった岩崎さんがつまみ上げる。


「ありゃー、随分と嫌われてるねー」


 また苦笑する片淵さんだったけれど、私は慌てて岩崎さんが差し出したテオを受け取った。


「ありがとう、岩崎さん……ごめんね、みゃーちゃん。テオが迷惑掛けて」


 もっと遊びたいとばかりに暴れるテオを両手でがっちりと掴んで、私はみゃーちゃんに謝罪する。


 確かに、良く考えれば気が立っているノワールちゃんにテオを近づけるというのは愚策ぐさくだったと、今更ながら思う。


「みゃーも悪かったにゃ。ノワールの状態を考えたら、今はあまり近づけない方が良かったにゃ」


 ダンボール内のノワールちゃんの頭を撫でながら、みゃーちゃんが言った。


「うーん……でもそうすると、あまり同じ建屋にこの2匹を一緒にしない方が良いかもしれないねー。今みたいなのがまた起こるかもしんないしねー」


 片淵さんの言葉に頷きたいところだったけれど、そうするとみゃーちゃんが……と考えて、私は考えながら小さく唸るしか出来なかった。


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