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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第10時限目 融解のお時間 その22

「ねえ、みゃーちゃん」


「ん、何にゃ?」


 私の言葉に、首をかしげるみゃーちゃん。


「お詫び、ということであれば、今後みゃーちゃんと連絡を取る手段が欲しいの」


「……?」


 ああ、あまり意図が伝わってないかな。


「ええっとね。ノワールちゃんのことについては、前に見かけたときにもしかして、とは思ったの。だけど、みゃーちゃんの部屋には入れないし、月乃ちゃんに伝言をお願いしようとしたら、何かパスワードを入れないと録音出来ないと言われたから、結局みゃーちゃんに連絡が取れなかったの」


「あー、月乃はみゃーの言うことしか聞かせないようにしているにゃ。セキュリティの問題で、あまり誰のお願いでも聞いていたら危険だからって、みゃーの尊敬する先生が言ってたにゃ」


 ふふん、と何故か満足そうな顔で胸を張る。


「ま、まあ、月乃ちゃんの身の安全を考えると、確かにその考えは正しいのかもしれないね」


 ただし、それが原因で今回みゃーちゃんと連絡が取れなくて、こんな状況になった訳なのだけれど。


「それで良く考えたら、みゃーちゃんと連絡を取る手段が全く無いなって。前に地図のアプリを入れたときに、みゃーちゃん側からは私のスマホにアクセス出来るようにしているかもしれないけれど、私の方からみゃーちゃんに連絡を取る方法が無いんだよね。だから、何かしら連絡する手段が欲しいなと」


「むー……」


 私のお願いに、みゃーちゃんが悩む様子を見せた。


 そんなに難しい話なのかな? と私が疑問を抱いていると。


「みゃーは携帯電話は基本、持たない主義にゃ」


 その後、次のように小さく言葉を続けた。


「べ、別に電話掛ける人が全然居ないからじゃないけどにゃ……」


 みゃーちゃんは、こほんと咳払いして、仕切り直してから、


「基本、連絡は全てパソコンで取るようにしてるから、アドレスを教えることは出来るけどにゃ。でも、それよりみゃーは部屋にいつも居るから、話がしたければノックして入ったらいいにゃ」


「……ん? え、ええっと、部屋にはセキュリティの都合で、入れないと思うのだけれど」


「……んん?」


 私が確かめるような言葉に、大きな目をぱちぱちさせて、私を見上げたみゃーちゃん。


 疑問と疑問のキャッチボール。


「あれ? でも、前にノワールと一緒に入ってきたにゃ。だから、勝手に桜乃のお母さんに登録してもらってたと思ってたんだけどにゃ……?」


「ああ、あれはノワールちゃんが開けてくれただけで……」


 そう、あのときはまるで私をみゃーちゃんのところに導くかのように、ノワールちゃんがドアを開けてくれたんだよね。


 テオを見ていてもたまに思うのだけれど、猫って人の言っていることを理解しているどころか、表情から考えまで読み取っているんじゃないかなっていう行動がたまにあるよね。


 もしかすると、犬とか他の動物もそうなのかもしれないけれど。


「そもそも、みゃーちゃんの奥の部屋のセキュリティはみゃーちゃんが設定してて、桜乃さんのお母さんでは設定出来ないって言ってたけど……」


「違うにゃ。設定出来ないんじゃなくて、単純に桜乃のお母さんが奥の設定をし忘れてただけにゃ。結構、抜けてるところがあるからにゃ」


「あー……」


 何となく分かる、って言ったら失礼かな。


「ってそれはそれとして、みゃーちゃんの部屋に入れるようにして欲しいなって。奥の部屋までは入れなくてもいいけど」


「まあ……準なら別に奥まで入ってきても良いにゃ。だから、指紋登録してやるにゃ」


 いつもみたいな、少し高飛車というか傲慢というか、そんなみゃーちゃんが戻ってきた。


「あたしらはー?」


 ようやく元通り、もしかするとそれ以上かも、と思ったみゃーちゃんの上機嫌を、一瞬で崩す岩崎さん。


 ……今回の件については岩崎さんが功労賞だと思ったけれど、自分から次々と評価を落としていくスタイルがなんとも……いや、猪突猛進ちょとつもうしんタイプの岩崎さんらしいと言えばらしいのかもしれないけれど。


「……開けてやっても、そもそも来るにゃ?」


 ふんす、と鼻息を吐くみゃーちゃんに対し、


「さあ、どうだろうね」


 にししと快活に笑う岩崎さん。


「ま、でも扉が開くなら、たまには行くかもしれないよ」


 あ、これ多分、たまにとか言いつつ、結構頻繁にみゃーちゃんのところに会いに行ったりして、面倒くさがられて追い出されるパターンだな、って素直に思った。


 なにか企んでいるんだろうということは分かっていても、みゃーちゃんもこの状況で岩崎さんを完全拒否するわけにはいかなかったんだろうと思う。


「……はあ、仕方がないにゃ」


 最後にはそう折れた。


「ってことは、紀子と都紀子も良いんだよね?」


「おりょ? アタシも良いのー?」


 大分、空気化か背景化が進んでいた片淵さんが声を出す。


「好きにするにゃ」


 むう、若干投げやりになってきているし、これでまた機嫌を損ねてしまったら困るなあ、と思いつつもどうやって声を掛けようか悩んでいると、


「あ、えっと、美夜子ちゃん、だっけ?」


 私にさきんじて、正木さんが口を開く。


「何だにゃ?」


「私たちは別に、無理にしなくても……」


 相変わらず控えめな態度の正木さんだったけれど、


「別にお姉ちゃんたちは嫌じゃないにゃ。むしろ、そっちのうるさい方が嫌なだけにゃ」


 とみゃーちゃんが岩崎さんをバッサリ。


「うるさい方って何さ! ちびっこのくせに!」


「ちびっこ言うんじゃないにゃ!」


 うがー、とか、わきゃー、とかちびっこレベルの喧嘩を始める岩崎さんとみゃーちゃん。


 あー、もー。


 岩崎さんの首根っこを押さえて、私が笑顔で言う。


「とにかく、みゃーちゃんの部屋には4人とも入れるようにしてくれるんだね。ありがとう」


「……ん、まあ、どういたしまして、にゃ」


 みゃーちゃんは、少し恥ずかしくなったのか、明後日の方を向いてそう言った。


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