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あー・ゆー・れでぃ?!  作者: 文化 右


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第2時限目 お友達のお時間 その7

「へー、この子が小山さん? 結構背、たっかいんだねー!」


「何かこう、ぶら下がれるんじゃない? というかぶら下がらせてくれる? にゃっはっは」


 少し褐色な肌でショートカットの、男の子とは間違えないと思うけれど全体的に体の引き締まった女の子と、工藤さんよりも少し背が低く、八重歯の見える女の子が並んで私を見上げていた。


「え、えっと……?」


「ご、ごめんなさい。ほら、真帆、片淵さん、小山さん困ってるからっ」


「ん? あー、ごめんねー。ええっと……」


 ボーイッシュな女の子の方が先に手を軽く上げて言った。


「あたしは岩崎真帆いわさきまほ。漢字は真実の真に、帆……帆ってほら、あの……船のあれね!」


「あ、ああ、はい」


 近年稀に見るゴリ押し説明に思わず苦笑いしたけれど、何だか一緒に居ると元気になれそうな子だと思う。正木さんが言っていた、コピーキーとか作ってくれた行動力のある方の子がこっちだったかな?


 続いて、やや背の低い八重歯の小さいツインテールの子が笑う。


「そしてアタシは片淵かたぶち 都紀子ときこだよ。漢字では東京都の『と』にそこの紀子ちんと同じジュラ紀の『き』、最後に子供の『こ』で書くんだけど、良く『つきこ』って間違えられるんだねー、違うんだよ、うんうん。あ、で、片淵って名前も珍しいよねー。淵って字を最初からまともに書けた人居ないんだよね! あ、それアタシのことか、たはー」


 この子も中々マシンガントークな子だけど、それよりも――


「じゅ、ジュラ紀?」


 説明にジュラ紀なんて言葉が出てきたのは人生初で、しばらくジュラ紀の紀がどういう字を書くか数瞬悩んでから、ようやく世紀と同じ字を書くということに気づく。というより片淵さん、正木さんと同じ漢字だと言っていたし、さっさと気づきなさいよ! と自分に脳内ツッコミ。


 ああ、この子も結構パワフルだし、正木さんには荷が重い……いや、こういうキャラだからこそ正木さんを引っ張っていけるのかな?


 そして同時に、坂本先生の言っていた言葉が理解出来かけていた。正木さんみたいなタイプの方が珍しいということかもしれないと考えると、これは確かにわたくしの手に余るかもしれませんわね……! とやや決意を新たにした。


 ……あれ、脳内言語、おかしくなってない?


「私は小山準です。宜しくお願いします」


「それにしてもさ、えーっと……小山田ちん?」


「小山です」


 全体的に小さい方の子が、悪びれもなく頭の上で手を組んで、私を見る。


「にはは、そうだったそうだった。で、児玉じだまちんは何でこんなところでうろうろ不審者ごっこしてるの?」


 既に"ま"しか合っていない!


 でも、なーるほど。分かっててわざと言っているわけね。それなら――


「担任の先生が来ないから困って職員室前をうろうろしてたんですよ、澤淵さわぶちさん」


「にゃっはっは、中々準ちんって良いね。うんうん、気に入った、気に入ったよ! 紀子ちんも真帆ちんもこういうときにノッてくれないからさ」


 バンバン、と私の背中を叩こうとしたのかもしれないけれど、身長が低いからかほとんど腰かお尻辺りを叩く。


 後、さり気なく私の呼び方が小山さんから準ちんに変更されていた。気を許してくれたということなのかな?


「へーん、あたしはそんな幼稚なことしないだけだしー」


「あ、あはは……」


 岩崎さんと正木さんが片淵さんの言葉にそれぞれの反応を見せていると、


「あら、小山さん」


 声かけ事案本日三回目はどなたですか、と声のした方を向くと、昨日と同じばっちりスーツ姿の理事長さんが坂本先生と並んで立っていた。


「太田理事長と坂本先生」


「小山さん、こんなところでどうされたのですか?」


 少し髪を掻き上げる仕草と共に声を発する理事長さん。


「あ、えっと……咲野先生が……」


「ああ、そういうことですか」


 咲野先生の名前を出した瞬間、委細承知といった顔の理事長さんと苦笑いの坂本先生。ああ、そうか。職員会議にも来ていなかったからかな。


「坂本先生もそうでしたが、初日から遅刻する人が多すぎます。全く、気が緩めず、時間通りに始めるということの大切さを良く理解して――」


「あ、あの太田理事長。そろそろ時間が……」


 お説教モードっぽくなりそうだった理事長さんの言葉を、控えめに坂本先生が制する。


あれ、坂本先生も……ってもしかしてと思って視線を坂本先生の方に向けると、理事長さんの後ろで人差し指を口元に当てて、しーっというポーズ。ああ、さっき保健室で話をしてたせいで職員会議に遅れてしまっていたみたい。申し訳ないことをしてしまった。


「咲野先生が来ないのは仕方がありません。もうすぐ始業式が始まりますから付いてきてください。そちらの3人も遅れないように体育館に集まるように」


「は、はいっ。失礼します」


「分かりましたー」


「じゃあ、準にゃん後でねー」


 頭を下げる正木さん、手をひらひらさせる岩崎さん、ウインクする片淵さんを見送っていると、


「行きますよ」


 情け容赦なく、クールな理事長さんとそれに付き従うように坂本先生もさっさと歩き出していた。ああ、ちょっと待ってください。


 慌てて先生たちの後ろを歩き、校舎から中央の中庭を突っ切るような形で、他の先生や生徒たちが体育館に向かう中に混じっていると。


「ご、ごめんなさーいっ!」


 と、バッファローが突進してくるみたいな足音が聞こえて、切羽詰まった声が背後から飛び込み前転を決めてきた。振り向くと、ポニーテールというには雑過ぎる縛り方の咲野先生が息を切らせて立っていた。



2016/7/4 誤字修正

「で、児玉こだまちんは何でこんなところでうろうろ不審者ごっこしてるの?」

「で、児玉じだまちんは何でこんなところでうろうろ不審者ごっこしてるの?」


「既に"こ"しか合っていない!」

「既に"ま"しか合っていない!」


続きを書きながら読み直した際に「こやま→こだま」で「こ」も「ま」も合ってるじゃん! とセルフツッコミしてました。

なので、ツッコミ自体は方針を変えずに、わざと間違えた呼び名を変更させていただきました。すみません。


それではまた。


2017/10/25 誤字修正

2016/7/4の誤字修正分が直っていないとご指摘いただきましたので修正しました。

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